内田百けん(けんは門がまえの中に月)氏の『御馳走帳』を読んでいたら、「三鞭酒」というのが出てきました。

「三鞭酒」とはなんのことかというと、実は「シャムパンしゅ」とルビがふってありました。

そう、シャンパンなのです。

シャンパンに「三鞭」という当て字を用いているのは、当時はそう書き表していたのか、内田百けんの創作なのかはわかりません。

ま、検索にかけると、香港・上海の旧式の当て字ともかいてあるから、戦前はこの表記が一般的に使われていたのでしょう。


さて、件の内田氏の文章では、この三鞭酒が座を盛り上げる酒として描かれてはいるのだけど、同時にたらふく飲んだがために「げろ」を吐くという記述が二度ほど出てきます。

あまりいいイメージではないですが、一方で飛行機の、進水式ならぬ進空式では三鞭酒を翼にふりかけるという習慣もあったようですから、縁起のいい酒ということでは今とおなじですね。


彼が教官をしていた法政大学の航空研究会の軽飛行機がローマまで飛んだという成功話が届いたので三鞭酒を開けたとか、満州からやってきた教え子と三鞭酒を開けたとか、やはりハレの酒として内田百けんも飲んでいたことがわかりました。


シャンパンのコルクの開け方がわからなかったようで、何かの席でコルクが勢いよ「鉄砲玉のようにく天井に飛んだ」などとも書いています。

まったく今の私たちの生活感覚と共通しているわけで、戦前から今に至るまでシャンパンの受容の姿は変わらないのですね。

こういうのもおもしろいと思いました。


今日もウィノローグに来ていただきありがとうございました。

さて、来週はワイン会。

今日ぐらいからのむワインを考えなくては。