すごく一般的に言えば、20歳になったワインは大方が飲み頃を迎えていると思います。
長期熟成のボルドーの赤でも20年も経てば、早いものではピークを過ぎてしまっているし、ビンテージによってはかなりへたっている場合もあろうかと思います。
熟成の早いブルゴーニュのワインならなおさらです。
もっとも素晴らしい収穫年の一流生産者のものであれば20年でもまだ若くて、さらに20年ぐらい経ってちょうどいい飲み頃になるのも、あるにはあります。
さて、このワイン。
ボルドーの2級格付け、シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド1988。
2年前にこのワインを開けたときは、その若さにびっくりしたものでした。
つい最近のものかとまごうばかりのフレッシュな果実の香り、甘み。
シルキーでふくよかなタンニン。
モカ、チョコレート、ブラックカラント、ドライハーブ、甘草、エンピツの芯などの複雑に絡み合った若々しい香りがあたりに強烈に香ったのでした。
同じ1988年もののシャトー・カノン・ラ・ガフリエールがすでにピークを超えてしまったかなと思われたのに比べ、このラランドは本当に若すぎた。
ある方のお言葉で言えば、「若いねえちゃんの化粧がぷんぷんでたまらん。私はカノンの方がいい」と言わしめるほど、香りの宝石箱というのがぴったりするぐらいの輝きでした。
今まで飲んだワインの中で、これほど強く若々しく迫ってきた、20年物のワインは他にありませんね。
かつてラランドの垂直試飲会に参加させていただいたことがありましたが、その時は70年代のものが中心でしたから古酒の枯れた趣も十分あって、熟成の妙というものを感じ取ることができました。
しかし、この88年ものは、圧倒的存在感で他のワインをやっつけてしまうほどすごかった。
あれから2年経ちました。
たぶん22歳になった今も、まだその妖艶たる若々しさを保っているのではないかと思います。
残念ながら88年ものは今は手元にありませんが、また機会のある時に探して25年目、30年目の姿がどうなっているか確かめたいと思わせます。
25年目、30年目。
もっと妖艶な美女になっていそうな気がします。
ラランド1988。
今日もウィノローグに来ていただきありがとうございました。
ワインの熟成してゆく姿をどうしても女性にたとえたくなるのは、男のワイン飲みの性でしょうか。