今日から2月。旧暦では如月。
如月といえば、私はよく枕草子の「如月つごもりごろに」という文章を思い出します。
和歌の名手、藤原公任が清少納言の歌の腕前を試そうとして、ある日
少し春ある心地こそすれ
(少しだけ春めいた気分がしますね)
という七・七の言葉を投げかけてきます。
これに五・七・五の上句を返して五・七・五・七・七の連歌を完成させるもので、いかに当意即妙に気の利いた上句を付けるかで実力が試されるわけです。
公任は「何に春めいた気分がしますか?」と尋ねてきたわけです。
折しもその日は二月末日、風が激しく吹き、空が暗く曇って雪のぱらつく日でした。
そこで、清少納言は考えた末に
空寒み花にまがへて散る雪に
という句を返します。
句の意味は「空が寒いので、桜の花と見まがうばかりに散る雪に」という意味で、その日の雪模様の天気を詠みこみ、しかも王朝の伝統的な感性である「花=雪」という見立ての妙もあって、「雪が降っているようですが、まるで桜の花みたいですわ。(あなたのおっしゃるとおり)少し春っぽく思えますわね」と、公任の句に応じたわけです。
公任のようなやんごとない身分の人々の中に、一女房階級にすぎない清少納言が返歌をするのはたいへん勇気の要ることでした。
どうしたらよいのか、主人の中宮定子に相談しようとしますが留守で出来ません。使いの者に催促されるがままに清少納言ひとりで考えて詠んだ句でした。
しかし、結局これが公任をはじめ人々に高く評価されます。冬の真っただ中にあって、春の兆しを感じたいという繊細な感覚があらわれた句だったからでしょうか。公任の謎かけに見事に応えた清少納言の才覚を思わせます。
今日から如月。一年間で一番寒い季節です。
季節を感じる中で次の季節の予兆を読む、というのが日本人の伝統的な季節感覚ではないでしょうか。
如月の冷たい空気の中で震えるようにして待つ春の息吹を感じられたら、いいですね。
今日もウィノローグに来ていただき、ありがとうございました。
きさらぎ、というひびき。
すてきですね。