キスマーク Myself

 ・昨夜は遅くまで、久しぶりに会った親族たちが酒を飲み交わしていた。

 ・今朝はまた一汁一菜の朝食を少し。

 ・9時ぐらいから別れの膳。

 ・11時から告別式。


 ・昨夜の通夜に引き続き、母の仕事関係の方々、地元の方々、親戚などが参列。

 ・式の中での弔辞は兄が読む。

 ・私は最後の喪主の挨拶を述べる。

 ・母の思い出やお世話になった方々への挨拶など、涙にむせぶことのないように言えるかどうか心配だったが、なんとか務めを果たせたと思う。


 ・親族の最後の別れ。

 ・別れの杯に口をつけ、杯の酒を棺の中に空ける。

 ・祭壇を飾っていた花を敷き詰め、母の愛用の高等女学校時代の教科書、親父の手帳、めがね、唱歌集、位牌などを棺に納める。

 ・最後に、もう一度母の額を撫でる。

 ・「ありがとう。ごめんね」という言葉しか浮かばない。


 ・出棺。

 ・多くの方々のお見送りを受け、霊柩車は静かにホールを出発。

 ・霊柩車には私と兄が乗る。

 ・「いい葬式だった。母もたくさんの人に送ってもらって、よかったんではないかね。」

 ・「50周忌を過ぎた父が、もういいが、ようがんばったって言って迎えに来たというお前(=私)の話はよかったよ。」

 ・「あっという間に死んだから、かえって苦しまなくてよかったのかも。」

 ・などと話をしているうちに葬祭センター(火葬場)に到着。


 ・最後のお祈りをした後に、釜のなかに棺を見送り、点火スイッチを押す。

 ・「ありがとうな!」


 ・いったんホールに戻り、直会(なおらい)の膳。

 ・母の位牌を安置した食事会場で近親者だけの会食。

 ・しばらく経って、お骨を拾いにみな出かける。

 ・私はホールに残る。喪主は骨を拾ってはいけないらしい。


 ・「骨壷にびっしり詰めてきた」とは兄。

 ・「股関節に入れていた金属の骨は、重かったはずと言われた」とかみさん。

 ・「本当に白くて、さらさらとしていた」と兄。

 ・「俺も骨を拾いたかったな」と私。


 ・葬儀の一切が終わり、ホールを片付けて、自宅に帰る。

 ・祭壇の花を花束にしたらすごく沢山あるので、いろんな方に持って帰ってもらったけど、とても家に置ききれないので、母のお世話になっていた施設に持っていく。

 ・母のいた居室には、主をなくした遺品がそのまま残っている。

 ・こういうのを見ると涙が出そうになる。

 ・一つ一つの遺品に思い出がまとわりついているので。


 ・その後、高岡の墓に花を生けにいく。

 ・自分のための墓を自分で立てていた母。

 ・葬儀のための積み立てをしていた母。

 ・死後に子どもに迷惑がかからないよう、自分で片付けていた。

 ・その母の心遣いが、今になってわかる。


 ・入院から20日目で逝った母。

 ・痰を吸入する時の痛み、満足に話せない辛さ、両手で栄養補給のチューブを引き抜いたこと、かみさんに微笑んでくれた顔、長男に見せた笑顔、苦しそうな呼吸、汗をぬぐってあげると気持ち良さそうにしていたこと、そしてきっと兄にあと一度会いたかっただろう母。

 ・そんな思い出が次々に駆け巡る。

 

 ・ばあちゃん、本当にありがとう。