前々から欲しいと思っていたカラヤンのアルプス交響曲のDVDを購入。
さっそく視聴する。
かつて、NHK-BSで放送された映像をビデオに録画して何度も聴いた曲。
アルプスが大好きだったリヒャルト・シュトラウスが、山に登って降りるまでの登山を
イメージして作曲したもので、大編成オーケストラの壮麗な響きが楽しめる大曲だ。
夜→日の出→登り道→森に分け入る→渓流のほとりを歩く→滝→幻影→花咲き乱れる草原→
山の牧場→潅木の林を通って道に迷う→氷河→危険な瞬間→頂上→光景→霧の発生→
太陽は次第にかげってくる→エレジー→嵐の前の静けさ→雷雨と嵐・下山→日没→終結→夜
以上の22曲が連綿と演奏され続ける。
壮大な山の情景や登山の楽しさ、苦しみがよくわかる標題曲ばかりで、わかりやすい。
中でも私が好きなのは、日没→終結の部分。
うねるような曲からやがてオルガンの序奏に導かれてホルンと木管がユニゾンで哀愁のこもった
旋律を奏でる。
ホルン、フルート、オーボエ、ファゴット、イングリッシュ・ホルンのゆったりと満ち足りた調べに
まるで夕映えの光のように弦が射しこんで来るときの美しさは、絶品である。
スタジオ録音のCDもあるが、CDのものではどうしてもこの部分の演奏に満足できなかった。
ホルンと木管の音の溶け方に柔らかさが足りないのである。
しかし、このDVDのライブは会場の音響効果もあってか、実に柔らかな響きなのだ。
1983年11月20日の万霊節記念演奏会の録音(録画)である。
25年前の、カラヤンとベルリン・フィルの関係がぎくしゃくする直前だろうか。
クラリネットにその確執の発端となったサビーネ・マイヤーが座っているのが興味深い。
カラヤンもまだ元気で、さっそうとした立ち姿がいい。
この最終部分での木管を聴きながら、実に満ち足りた表情で指揮をしている。
曲が終わって退場するときの足元はおぼつかないものの、指揮の間の意思の強い視線や
オケを柔軟にドライブする両手の動き、時にはナルシスティックに自分の引き出した音に
酔う姿を見ていると、単純に美しいと思ってしまう。
やはり、カラヤンはすごい、と思わずにはいられない。
このアルプス交響曲は、全体が音の宝石箱のようにオーケストラの様々な音色を楽しめる。