で、その問題集は、表向きはPDF画面で問題を解くことを可能としているわけだが、

あなた、実際、高校生がパソコンに映されたPDF画面に向かって問題を解くだろうか、ということだ。


ご存知のように、PDFはあたかも一枚のA4の書式の「紙」を、パソコンの画面上に再生するツールだけど、

一方、それを利用する側が印刷することを想定してもソフトが作られている。

つまり、あちらで作ったA4紙上の原稿を、こちらのパソコンを通じて同じレイアウトでプリントアウトできる

という便宜性が、このソフトの魅力である。

要するに、A4にプリントアウトした原稿を郵便や宅急便で送るというタイムロスをなくしてくれたのである。


これがビジネスの世界で活用されないわけがない。

瞬く間に広がったことは、それはそれでいい。


だが、この機能を「悪用」して、本来はメーカーが製品につけるべき取扱説明書を、ユーザー側が「自前」で

印刷しなくてはならないように仕向けてきたのが最近の傾向である。

思ってみれば、以前のパソコンソフトユーザーならあの「取り説」の分厚さには閉口したと思う。

分厚いマニュアルのどこをどう読めばソフトが理解できるのか、頭を悩ませたものだ。

しかし、あの分厚い「取り説」がよかったのは、いつでも気が向くときに読めた点やパラパラとめくることができた点など、いずれも物理的存在としての「書物」の形を取ってくれていたからこそのよさであった。

いわば、「書物」を読んでパソコンに向かうという、きわめて人間的なアプローチができたのである。


ところが、今はどうであろうか。

入門者向けのデジカメさえ、その取り説は貧弱で、詳しいことは付録のCDの内容をパソコンで確認するしかないときている。

つまり、パソコンが稼動していて、それに習熟していなくては満足に手元のデジカメの機能を理解できないということになっている。

パソコンが稼動しておればなにも問題なかろうが、パソコンはそれを使う人の能力に著しい差があること、電源がなかったら使えないこと、という2つの大きな問題がある。

それを理解しないで(または、そんなことは無視して)、およその製品がパソコン上でしか、その使用法、活用法、故障への対処法を列記していないのは、おかしいのではないか。

パソコンとは無縁の環境で、デジカメや携帯を使用していたりする人もいるはずである。

それらの人々へのサポートを、メーカーはパソコン上のサービスだけでカバーしようとしているのだろうか。

製造者としての態度が問われないだろうか。。・・・・


(つづく)