今日、扇風機を買った。

リビングの先代扇風機がわずか4代でみまかったからである。

たった4年の短い老中生活であった。

将軍たるエアコンの風をリビングの隈なく提供していた頃は、さすがあっぱれ老中さま!と

称えられてもいたが、晩年は「涼風」も「強風」もおかまいなしに、ただただ目一杯にモーターを

回すだけという日々が続いて、いっきにみまかったのであった。


働きすぎである。


みまかるのもしかたあるまい。


合掌。



しきゃーし、最近の扇風機家に対して、モーターの回り具合に疑問を呈する今宵である。

やれ「マイナスイオン」だの、やれ「おやすみ快適」だの、あまりに電子回路技術を誇ってはいないか。

扇風機は、単に羽が回って風を起こしてくれるなら、それでいいのだ。

マイナスイオンなど欲してはいないよ、消費者は。


むしろ、おやすみモードになったときの「リズム扇」の動きに注目すべきだ。

「リズム扇」って、一定の間隔で風が強くなったり弱くなったりするモードのことなんだけど、これがクセ者である。


昼日中の熱い暑い部屋の中で、まさか「リズム扇」を選択する者はいなかろう。
暑いときは、ただひたすらに扇風機の風にあたっていたいのが人情だろう。

「リズム扇」が活躍するなら、就寝時か、さほど暑くない時(窓から涼風が吹き込む初夏か晩秋)しか

ないだろうに。

で、この「リズム扇」に命を賭けている技術者もいるみたいで、これを「おやすみモード」と掛け合わせた

扇風機があるのだ。


つまり、「おやすみモード」と「リズム扇」を掛け合わせると、

①始めの30分は強風モードと、それが収ま強風モードのリズム扇、

②次の30分は標準モードと、それが収まる標準モードと一定間隔で強風モードの交互にやってくるリズム扇、

③最後の30分は弱モードと、それが収まる弱モードのリズム扇と、一定間隔で標準モードと強風モードが交互にやってくるリズム扇、

という3パターンが扇風機の回路に内臓されることとなる。


そこには一定感覚をおいて風が強くなったり弱くなったりするリズム扇モードの方が寝やすかろうという、

製作者側の絶対的信頼があるはずだ。

しかし、そのリズムの拍数や何やは、いったいどうして計算したのだろうか。

ちなみに、私はリスム扇モードで寝付いたためしはない。


つまり、リズム扇モードなんてどうでもいいのだ。

今の扇風機に求められるのは、通常モードの「弱」「中」「強」の3強体制の見直しである。

ちなみに、量販店で「弱」モードで扇風機を回されてみるとわかると思うが、かなり強い風が出てくるはずである。

「強」にすると台風並みであろう。

つまり、今の扇風機は「風をたくさん送る」という固定観念にとらわれているのである。

しかもそれは昼日中の西日に炙られるアパートの一室で使われるのを想定しているのではないかと

思われるぐらい、どのメーカーの扇風機も風力重視の設計である。


しかし、私は自分の経験から言うが、扇風機の「弱」モードはもっと今よりも弱くていいように思う。

エアコンがなかった40年前の、夕暮れの一室で、

そよそよと吹いてくる扇風機の風に惰眠をむさぼった幼い日々の記憶が体に刻されているからだろうか。

しかもその「そよそよ」モードの方が、熱帯夜をこれから乗り越えるためにはいいように思えるのだが。

「リズム扇」の強くなったり弱くなったりするモーター音を気にするよりも、

やや風量はすくないが、「そよそよ」モードを備えた扇風機の方がよいと思える。


でも、なかなかないんだよね、この「そよそよ」モードつき扇風機が。

「弱」「中」「強」の3段階を解消して4段階にでもすれば、解決しそうに思えるが、どうなんだろう?