キリル・コンドラシン【Kirill Kondrashin:1914~1981】という指揮者をご存知だろうか?1967年に
マーラーの交響曲第9番を日本初演した指揮者である。もう少し付け加えると、ショスタコーヴィチ
交響曲第4番の初演指揮者、世界初のショスタコーヴィチ交響曲全集録音を完成した指揮者でもある。
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1967年来日当時、日本はまだマーラーやショスタコーヴィチの評価自体が高まっておらず、残念ながら
評判にはならなかった様だ。私が最初に、「ショスタコーヴィチ交響曲第5番」のレコードを買ったのは、
何を隠そう(無論、隠さないが・・・)コンドラシン指揮モスクワ・フィルの演奏であった。私は、当時、
中学生の時であったが、楽曲の壮大さと陰鬱な曲想、時に使われる「間違いかと思われるスレスレの
不協和音」のインパクトが斬新的でかつ強烈だった。なぜこのLP(懐かしいな・・・この用語)を買った
のかは、正確に覚えていないが、当時の新盤であり、レコ芸での評価が高かったような記憶がする。
ジャケットは黄色い絵画だったと思うが、WEBで調べても判らなかった。まだ実家の押入れの中に眠っ
ている。コンドラシンの指揮する演奏は総じてテンポが遅い。もう少し早い方が良いんじゃないの?と
思わなくもない。リスナーの評価の高い「チャイコフスキーピアノ協奏曲第1番 ピアノ:クライバーン」も、
やはり基本的にゆったりと遅い。コンドラシンは1978年にオランダに亡命し、名門であるコンセルト
ヘボウ管弦楽団の首席客演指揮者となるが、惜しくも1981年に67歳という若さで音楽家としての生涯
を終えてしまった。実に惜しい。今、2000年の再発売されたCDを聴きなおしているが、この印象が私の
ベースになっている事が改めて良く判った。実は、コンドラシンが来日し、NHK交響楽団を指揮し演奏
した「チャイコフスキー交響曲第1番「冬の日の幻想」」のCD(1980年1月25日のライブ録音である)が
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有るのだが、入手できず残念に思っている(中古で21,000円なら買えそうだが・・・)。是非、一度聴いて
みたい1枚である。世間の評判が格段良い訳でもないが、彼が最も輝いていた頃で、亡くなる直前の
指揮でもあり、強く引きつけられるものがあるからだ。
最後に、この一連のシリーズ(“芸術作品を理解する上での歴史的背景の考慮は必要なのか“)の
総括をしなくてはいけない。「芸術家の意図は兎も角、そもそも芸術の受け入れや評価はそれを見る
(聴く)ものの自由な思想に委ねられる」と言うのが私なりの結論なので、歴史的背景を考えて感動する
も良し、純粋に先入観無く音楽を堪能するも良しなのである。確かに、通になればなる程、関連図書を
精読、事実関係を吟味するなどして、その背景を考えて聴くことになるだろうが、以前に楽曲を聴いて
感動していたが、書籍を読んで予想外の背景を聞いて失望してしまったり、専門家の講評が悪いので
落胆するというのも勿体無い気がする(私にはこの経験がままあるが・・・)。リスナーは自由であって
いい。要は、感性の問題、音楽が好きならそれでOKということだ。但し、音楽家からすれば、商魂を抜き
にすれば、自分の意図を伝えたいという強い希望があるのは事実だろう。