信じられないくらい感動する。読んだ翌朝に思い出し泣きをしたのは初めてだ。
『臆病者』そう呼ばれた男が太平洋戦争時の海軍にいた。現代を生きる孫が祖父の残した足跡を辿って行く。臆病者、腕の立つパイロット、気さくで上品、彼に命を救われた、戦争という非日常の中でどこか日常的な雰囲気を持っていたその男をあまり良く思わない人も少なくなかったようだ。しかし、身近にいて彼と多くの時間を過ごした人は彼の人柄や考え方に影響を受け今も感謝の気持ちを持っている。「死にたくない」戦時には禁句と言われる言葉を口にした男は特攻隊として命を投げ出し最期を遂げた。
普段は重いテーマの本はなるべく避けている。読んでいると否が応にも考えさせられるし胸が締め付けられるような気持ちになるからだ。何故かこの本は読んでみようと思った。それは唯の巡り合わせのようなもので、特別に何かを知っていたわけではない。
特攻隊について何を知っていただろうか。小学校で最初に知った時はそれは出来ない、遠い世界の話だと思った。しかし今回、本を読み進めるうちに彼らの心情や背景を少なからず感じられたと思う。そして何より気持ちの強さを感じた。特別な環境であることは間違いない。現代からは考えられない。それでも当時20代だった彼らを考えると今の自分の気持ちの弱さが身に染みる。
「死にたくない」、「特攻隊に選ばれたらどこかの島に不時着して生き延びろ」、そう同僚に言っていた男は終戦の数日前に特攻隊に選ばれた。そして彼は敵艦に猛然と向かうのであった。
暗いテーマであるのは間違いない。作中の孫ではないが途中で辛い気持ちにもなった。それでも引き込まれる、そして最後は嗚咽にも似た感情が内から溢れてくる。この本は読んでよかった。まだずっと余韻が残っている。