『優しいおとな』
桐野夏生
中公文庫
680円
★★☆☆☆
主人公イオンは15歳のホームレスの少年。
舞台は渋谷、今から少しだけ先の未来の設定。
そこは、今よりさらに格差が広がっていて、
極貧の生活では職も家もないホームレス達が
炊き出しに列に並ぶ光景が常態化した社会。
少年は施設から逃亡して街でホームレスとして
孤独に生きながら、「大人」へと変わっていく。
作者の桐野夏生の作品は「東京島」を一度読んでいるが、
どちらも共通しているのが極限状態の
人間の生への心理を描いていること。
設定に多少無理が感じられるほどの登場人物の
追い詰められかたで、
気が触れるギリギリな時の心理描写に読んでいて引き込まれる。
主人公のイオンは、息子と同じ歳頃だ。
今、親である我々に何か事故か何かあったら、
息子もホームレスとなって生きていくのだろうか?
家が無い職も無い。
だからといってホームレスになるっていったて簡単じゃない。
なんか、息子とイオンとを重ねて読んでしまいました。
親が無くとも子は育つというけれど……
無くなっちゃったら確認できないからなー