暗夜行路(前編)
志賀直哉
1921年(大正10年)発表。
(1937年に後編を発表)
10冊目は志賀直哉の暗夜行路です。
93年前の作品ですが、穏やかな文体で大変読みやすかったです。
主人公はぶらぶらといろんな所に行くんですけど、
東京の昔の様子が興味深いです。
前半は当時の気勢が感じられました。
中盤からだんだんと主人公の心の中のなにか重いものが中心となり、
前半ほどの明るさはなくなっていってしまったように思えましたが…。
所々とても自分の気持ちに重なるものがありました。
特に主人公と兄の性格の対比が面白かったです。
最初、兄はもっと強い人かと思ってましたがそうでもなかった。
主人公は一見主体性がないようで迷いながらも、
時々強さを見せつけてくれました。
―とにかく、もっともっと本気で勉強しなければ駄目だ。
自分は非常に窮屈だ。仕事の上でも生活の上でも妙にぎこちない。
手も足も出ない。何しろ、もっともっと自由に伸びりと、
仕たい事をずんずんやって行けるようにならねば駄目だ。
しどろもどろの歩き方ではなく、大地を一歩一歩踏みつけて、
手を振って、いい気分で、進まねばならぬ。
急がずに、休まずに。
後半は旅行に出るのですが、のんびりしていて羨ましいです。
仕事が物書きだからできるんでしょうね…。
いえ、旅行してても仕事してるので大変なのでしょうが。
前編の最後は、え、ここで終わるんだって感じでした。
*この年代の他の作品メモ
羅生門(1915年)…芥川龍之介
昔教科書で読みました。
下人は雨止みを待っていた。という一文が忘れられません。