亡くした人を思いながら
それでも人は生きていく
この本の登場人物たちは少し変わっている。そんな呑気と見える人々も、心の底を叩いてみると、どこか悲しい音がする。
太宰治のこんな言葉が頭をよぎった。
7年という月日の重み
それを背景に綴られる残された人たちの生活
時に寂しく、時に可笑しく、
時に優しく、時に切なく…
ふとした瞬間
その哀しみが癒える時が訪れる
深い悲しみを知っているからこそ
幸せであることを実感できるのである
…これはそんな物語
暗い夜道にポツンと明かりを灯すパン屋に入る。
そのときの二人は待つのに慣れきっていた。
病院の待合室や受付、大切な人の死を待つ時間…
それなのにパンの焼ける匂いは、
これ以上ないほどの幸せの匂いがした。
悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるって…
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窓からの陽が外を見やる横顔を美しく照らしていた。
それはまるでフェルメールの絵画のようだった。
静かで、でも揺るぎなくそこにいた。
オレ、くたくたになるまで生きるわ。
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(一緒に暮らしてる)オレたちってさ、生死を共にしてるんだよなあ。
>オレたちって誰?
同じ星に生まれたオレたちだよ。
>話でかすぎて見えないです。
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それでも、この世界で自分は生きてゆかねばならない。
怖いのは後ろめたさを引き受ける、ということではない。
本当に忘れてしまうことだ。
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本当はパンケーキがいいんだけど…
ふわふわの食感で、ホイップクリームののっかったの。
魔法使いはへこむと必ず、そんなものを食べたがった。
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私はここにきてよかったんだよね。
夕暮れの中、銀杏に聞いてみる。
後は、この金色に輝く庭だけを見て過ごすと思うとなんだかとても贅沢で、幸せな気持ちになった。
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パンを焼きながら珈琲を入れる。
その横でリンゴをむく。
庭の手入れを始め、食器を洗い始める。
草を引いている横で、洗濯物を干している。
熟年夫婦のように手慣れた二人の動きを見て、映画みたいだと思った。
なぜこの家に居続けているのか、ようやく分かった気がした。
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おつかいを頼まれてふてくされた顔をすると、母は決まってこう言って叱った。
動くことは生きること
生きることは動くこと…と。

P.S. 椎名まじめさんへ
本のご紹介に感謝致します。
私の中の名シーンはこの2つですね♩
ギフが湯船に浸かり、テツコが台所で銀杏を割るシーン
「容赦せぬ」「う~~ッ」
テツコが岩井に茶碗を買ってきてあげたシーン
「お義父さん…もういいよね。」
「週末の詩」の読者より