アンジェリーナ・ジョリー監督作品『Unbroken』がアイルランドでも公開されました。


話半分

無名ではないけど、有名ともいえない俳優を起用されている割りに、監督が“あの”アンジェリーナ・ジョリーだからか、大々的にテレビCMが流れてますし、地元紙の夕刊でもこの映画のレビューと主役のザンペリーニを演じたジャック・オコンネルのインタビューが載せられていました。

ただし、主役のジャック・オコンネルだけが写った写真はなく、アンジーとザンペリーニ氏本人が寄り添っている写真と映画のワンシーンらしき写真が数枚汗


話半分

これって、たぶん彼女の監督作品じゃなかったら、ここまで大きな扱いになったのかな?と思いました。

数ヶ月前にアンジーの婚約者(ほとんど旦那さんですが)のブラッド・ピット主演の『フューリー』 (第二次世界大戦でのヨーロッパ戦線が舞台です)が上映されましたが、テレビCMは普通に何回か流れたぐらいだったと思います。また同様にWWⅡ関連映画で『レイルウェイ 運命の旅路』も普通の扱いだったと記憶しています。主演はオスカー受賞俳優のコリン・ファースとニコール・キッドマンだったんですが。…

まぁ、WWⅡ関連では『終戦のエンペラー』はここコークでは未公開でしたしね。うーん たぶんアイルランドでは未公開だったんじゃぁないかと思います。主演は宇宙人ジョーンズでお馴染みのトミー・リー・ジョーンズと、『ロスト』で有名なマシュー・フォックスだったんですが、終戦直後の日本が舞台の映画なんて興行が見込めなかったからでしょうね。


さて、話を『Unbroken』に戻します。保守派の間では随分前から問題視されていた作品なので、知っている人も多いんですが、改めて。

この映画は実在の人物ルイス・ザンペリーニ氏の半生を描いたものです。中距離走者としてベルリン・オリンピックに出場し、メダルは取れなかったものの、力走する姿がヒトラーの目に留まり、彼と握手したという逸話があるそうです。そして、日米開戦により米空軍に入隊。彼が乗った爆撃機がエンジン故障のため墜落し、ザンペリーニと他2名で救命ボートで漂流するも日本軍海軍により発見、救出され、日本国内の捕虜収容所に送られ、そこで数々の虐待を受けたという流れのようです。

映画の原案になったのはローラ・ヒレンブランド著の【Unbreoken: A World WarⅡStory of Survival, Resilience and Redemption 】でして、ザンペリーニ氏本人へ色々インタビューした上で、またいろいろ資料を調べた上で書いているとは思うんですが、「これはちょっと・・・汗」と言う記述がありまして・・・。一番問題で、疑問視せざるを得ないのが次の記述。これ↓


「何千人もの捕虜たちが、殴られたり焼かれたり、銃剣で刺されたり、こん棒で殴られたりして殺され、銃殺され、人体実験で殺され、人食いの風習で生きたまま食われた。ごくわずかしか食事が与えられず、不潔な食品や水のために、さらに何千人もの捕虜たちが餓死し、容易に予防できるはずの病気のために亡くなった」


どこをどう調べたんだ?ブチッ!! と思ってしまいました。

日本兵による捕虜虐待はあったようですし、否定はしません。しかし、文化の違いからくる無知も手伝って、虐待に当たらないことも“虐待を受けた”と報告され、裁判で有罪を言い渡された旧日本軍兵士や将校もいます。

例えば、ゴボウを知らない捕虜が「木の根を食べさせられた。虐待を受けた!」と告発した。とか、肩こりや腰痛の捕虜に灸を据えた収容所関係者が捕虜虐待の罪にとわれ、有罪判決を受けた。とかの類です。たぶん上の“焼かれたり”は灸のことかもしれません。どう考えても火あぶりなんかしていないでしょう。(ちなみに原爆は連合国軍の捕虜たちも無差別に焼き殺しています。)

そして、絶対納得できないのが“人食いの風習で~”って、そんな風習ないし!ゴラァーっ\(^o^)/

しかも「生きたまま」って、シラウオの踊り食いとか活き造りじゃぁあるまいし!おいおい

飢餓状態で死んだ戦友を食べたという話はあるので、そういう意味では人喰いをしたと言えますが、これは“風習”とは言えません。そして飢餓状態での人肉食は世界中であった話です。

戦犯として処刑されて者には米兵捕虜を食べたというものがあり、著者は軍事裁判の資料なり、話を聞いて“人食いの風習”としたんでしょうが、この軍事裁判自体が報復裁判で、誰かが「やった」と言えば、反論もできず有罪にされた人も多かったらしいので裁判資料が総てとは言いがたいです。


さてさて、映画の宣伝には「Un Extremely True Story」とあり、また今や慈善の人で国連難民高等弁務官事務所の親善大使を務めるアンジーの信用度もあいまって、この映画を観た人は「実話を忠実に再現した映画」と思う人もでてくるでしょうし、少なからず反日感情を生んでしまうのではないかと考えられます。

私はまだ観ていませんが、主人公の顔を何度も殴打するシーンがあるとレビューで読みましたし、他にも酷い虐待シーンがあるんだとか。

アイリッシュ自体は第二次世界大戦にあまり興味がないようなんですが、新聞のレビューを読んだ限りでは“旧日本兵は残虐だった”という認識があるようです。お隣が英国ですし、捕虜収容所を経験した兵士たちの回想録も出版されていますから、アイリッシュがそう認識するのは自然でしょうね。(なお、レビューを書いた記者によると「悪名高い日本の捕虜収容所を描くなら、もっとスプラッターな感じをだすべきだ!」そうです。ムキッ

ただ、映画は映画なんですよね。「実話を基に」と言っても、すべてを忠実に再現という訳にはいかないですし、実際「実話を基に」した映画で、ほとんど脚色だったという映画もありますし、実際の結末は違ったという映画もあります。


映画を観ずにどうこう言ってはダメだと思いますし、原作本の批評を読んだだけで云々を言うのもどうかと思いつつも、原作本の記述に対しては反論、抗議はすべきだと思います。

上記の記述も然り、そして米兵の捕虜が終戦直後、原爆を投下されたの広島市中心部を汽車で通過した時のことを述懐するコメントが引用されており、


“Nothing! It was beautiful.” 「何もなかった!美しかった」


だそうです。少怒 自分たちの仲間も原爆で焼き殺され、相生橋の付近で被爆者たちの憎悪の的になったことは知らなかったとはいえ・・・。酷い。泣き2

アメリカではお決まりの事なんでしょうが、この本の中でも広島、長崎への原爆投下や都市への空襲は正当化させているそうです。


監督のアンジーを叩く前に、反日映画だといきまく前に、原作者のローラ・ヒレンブランド氏に反論、抗議、訂正を求めるべきじゃないかと思います。


そして、私もついつい「実話を基に作られた映画」を信じてしまう性質なんですが、“必ず脚色されている”ことを肝に銘じて、話半分で実話映画を楽しもうと思います。


えーっと、それでこの映画は・・・・、たぶん・・・観にいかないと思います。

だって、話半分で観ても楽しめそうにないから・・・。顔

                                                  (Mrs.G)

                     

                                   参照元:反日感情をあおる本が米国で大人気



追記:産経ニュース【外信コラム】アンジーの反日映画を見た 「日本軍の残虐さ」は? によると、捕虜が焼かれたり、人体実験で殺されたり、生きたまま食われたというシーンはないとのこと。

こちらでこの映画へのレイティングは12歳以上なので、猟奇的なシーンは含まれていませんね。

とはいえ暴力シーンは多いようですので、もし観にいかれる方はそのおつもりで。


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