恐怖のイベント | ワクワク人生研究所所長 小未来のブログ

ワクワク人生研究所所長 小未来のブログ

「最近ワクワクしたのいつだっけ…」
そんな人生に一石を投じるべく、
日々、研究活動と思考実験に勤しむ
ワクワク人生研究所所長・兼実験室室長、小未来のブログ

恐怖のイベント


20141019







「泣かないのね、

 おりこうさんだね。」


小学校に上がる前のこと。


僕は親に連れられて

近所の医院に来ていた。


何かの予防接種だったと思う。



それまで大の苦手だった

注射で、生まれて初めて

泣くのをこらえることが出来た。



嬉しかった。



それまで


誰かとけんかをすれば

十中八九負ける。


負ければ

必ず誰かに泣きすがる。


そんな典型的な

弱虫で泣き虫だった

当時の僕にとって


あの無慈悲で勁烈な

『恐怖の試練』に

打ち勝つことが出来、


見ず知らずの大人に褒められた

その事実は、


今までに味わったことのない

“自敬の念”のようなものを、


当時の僕に植え付けた。



けど、一方で…


僕は、不安だった。



「こうして生きているうちは

 きっとまたどこかで

 注射を受けなければならない。」



それを思うと

再び暗澹たる気分になった。



かくして


小学校に上がると

集団予防接種という

恐怖のイベントに

毎年のように怯え続けた。



泣くことこそなかったが、

毎回毎回、

針の痛みと恐怖感で

僕の目は涙目になった。


心臓はどうしようもなく

バクバクと音を立てた。


手足の感覚は

極度の不安と緊張で

殆どが失われるようだった。


そして、

注射の順番が近づく度に

天にも縋る気持ちになった。


僕は

白い衣に身を纏った

その白髪のお医者さんを

死んだような目でにらみ続けた。


目の前に

透き通るほどの細い針が

僕の目の前に姿を現した。


なんのためらいもなく

注射針は

僕の上腕を、目指した。



鋭い痛みが走った。



僕は再び

涙目になった。



ガーゼが渡された。


すぐさま

刺した部位にあてがった。



ガーゼには

赤い点のような

血のあとが付いていた。



僕は益々

憂鬱な気分になった。



記憶の再構築(前作)