come2myplaceのブログ

come2myplaceのブログ

【波乱万丈貧乏留学物語】を実体験をもとに書いています。
英語力ゼロ・200ドル持参金・片路切符。気ままに書いていますので立ち寄ってください。

Amebaでブログを始めよう!

 月日がたち、そして6月にロスアンゼルス・シティーカレッジの入学試験が行われ、

ダイジュは無事入学することができた。

 9月からアメリカの大学生として新たに出発する。

 掃除屋とマックイーン邸のバイトのお陰で1年間分の授業料を大学に納めることができた。

 ロスアンゼルス・シティーカレッジは2年間の短期大学だ。

 その後は4年制大学に行きたければ自分が希望する4年制大学の編入試験を受けなければならない。

 

 マイクはロスアンゼルス・シティーカレッジの2年生になっていた。

 学年は違うが同じ学校なので何でも相談でき、彼の存在が力強く感じられた。

 

 同じクラスにやはりダイジュと同じような境遇の日本人留学生がいた。

 名前はハラダ テツオ。通称【テツ】

彼は日本人街で皿洗いのバイトをしているらしい。

 実は留学生はイミグレーションでワーキングパーミッション(労働許可)を取得しなければ

一切アメリカでは働くことができない法律になっている。

 もし無許可で働いていることがばれると、強制送還で本国に送られてしまう。

 日本人街、中国人街などのレストランでは、イミグレーションの役人が突然抜き打ち検査に来るらしい。

 またイミグレーションからの礼金目的で同じ日本人の中で密告する人間もいるらしい。

 

 テツが夜、皿洗いのバイトをしていたら、突然5人のイミグレーションの役人がレストランの表ドアから入ってきたらしい。

 店内にいたウエーターとウエイトレスは捕まってしまったが、テツは厨房にいたので機転を利かし

裏口からエプロン姿で逃げて無事だったようだ。

 

 テツがダイジュのアパートに来た。

「ダイジュ、俺、これから先このままでは学校の授業料も生活費も稼ぐ自信がないんだ。

 だからベトナム戦争に志願しようと思ってるんだ。

 留学生には徴兵制度は適用されないが、志願兵なら受け入れてくれるらしい。

 そして兵役を終えた後は、アメリカの国籍が取れて大学の授業料も無料になる特典があるらしいんだ。

 それから将来アメリカでの生活はアメリカ政府がすべて保障してくれるらしい」

 

 「もう決めたんだろう?後悔しないために自分が決めたことをやればいいんだよ。

 ベトナム戦争へ志願すると言うことは、お前の命の保障は無いということだから自分の命をかける究極の決心だからな」

 「俺はもう日本に帰る気持ちはないし。今日本では全学連が暴れてるけど、日本の外から見るとなんて小さなことで暴れてるのかと思うよ。カリフォルニアでは、いたるところで石油を掘ってるし、日本と比べると国力が全然違うんだよな」

 テツと二人でバーボン呑みながら徹夜で将来のこと、アメリカのことなど話し合った。

 

 ヵ月後テツはベトナム戦争志願兵として訓練のためジョージアの方へ行ってしまった。

 ヶ月間の訓練後、ベトナムに派兵されるそうだ。

 〈生きて帰って来いよ。テツ〉

 

 ダイジュは掃除屋、学校と順調な日々を送っていた。

 大学の定期的行われる試験は最低ラインでなんとか合格していった。

 落第すれば即刻日本へ強制送還が待っている。

 自費で日本に帰れば強制送還という処置にはならないのだが。

 

 アニータとは相変わらずダイジュのアパートでお互いの愛を確かめ合っていた。

 しかしある日の夕方、いつものように食事を終え二人でベッドに入ると彼女が突然泣き出した。

「どうしたの?」

 何も言わないでただ泣き続けている。

 彼女を抱きながら「アニータ、何があったのか言ってごらん?」と優しく尋ねた。

 「ダイジュ、実は私本国のニカラグアに早急に帰らないとならないの。

本国で革命が起きて兄もみんな帰らないとならなくなったの」

 ダイジュは突然のことで、言葉が出なかった。

 アニータと結婚すれば彼女は帰らなくてもいいのだが、ダイジュはまだ結婚など考えられなかった。

 ダイジュにはどうすることもできない。

 今は、どう彼女に声をかけてやればいいのか頭の中が混乱し何も言葉が浮かばなかった。

 ただ激しくアニータを抱くしかなかった。

 愛し合った後、アニータは冷静さを取り戻した。

 

「アニータ、いつアメリカを立つの?」

「来週月曜日になると思うわ」

〈後日しかない〉

「毎日夕方来てくれるかな?」

「そのつもりよ。昼間は帰る準備に忙しいから」

「ありがとう。アニータが帰る直前まで俺はアニータと一緒にいたい」

 アニータはダイジュに激しく抱きついてきた。

 午前時頃アニータを家まで送って行った。

 その日は眠れなかった。テツもいない、最愛のアニータもいなくなる。

大粒の涙がこぼれてきた。

 

 マイクが掃除屋のバイトに行くためダイジュのアパートに来た。

 マイクにテツのことアニータのことを話した。

「ダイジュ、いくら考えてもどうしようもない事だよ。運命なんだよ。俺もいつジュリアンとの別れが来るかわからない。

俺はロスアンゼルス・シティーカレッジが来年6月に終了し、ハワイの大学に編入するのでその時はジュリアンと別れなければならない。その事はジュリアンに今から話している」

 ダイジュはマイクに話を聞いてもらうことで心が少し冷静になることができた。

 

 

to be continued see you again

 

http://shop.moshimo.com/meat_iroiro

http://shop.moshimo.com/tatami_iroiro

http://shop.moshimo.com/kagu_iroiro

 

 

 ハリウッドのバラエティーショップ、お土産屋などでは、

紙巻タバコ用のペーパーを売っている。100枚束1ドル50セントほどの値段だ。

 ペーパーには色々なデザインが印刷されていて、

ベトナム反戦を表しているのだろうリンドンジョンソン大統領の似顔絵が描かれている物、ヒッピーの象徴の花柄、FUCK ME!などなど色々なデザインがある。収集しても面白そうだ。

 このペーパーはまじめにタバコを巻くペーパーと思ってはならない。

 マリワナの葉っぱを巻くときに使用されているのだ。

 マリワナ用品が色々と堂々と店では売られている。

 これがジョークの国、アバウトな国アメリカなんだ。

 日本ではPTAのおばちゃんたちが目の色変えて怒り出すことだろう。

 

 1970年の幕開けまであと30秒だ。カウントダウンが大声で始まった。

 ダイジュの隣にはアニータが寄り添っている。そしてマイクの隣にはジュリアンがいる。

 新年が明けると同時に誰にでもキスをしても良い暗黙の了解となっている。

 ダイジュはアニータをガードした。そして激しくキスを繰り返した。

 マイクもジュリアンと激しいキスを交わしていた。

 ハリウッドの山のほうから花火が打ち上げられていた。

 

「マイク、そろそろ帰ろうか?俺、アニータとやりたくなったよ」

「ダイジュ、実は俺もだ。帰ろう」

 4人は駐車場まで歩き、マイクのアパートで彼とジュリアンを降ろしダイジュのアパートまで帰ってきた。

 

 二人でシャワーを浴び、激しく夜明けまで何度も愛を確かめ合った。

 

最高級ランク・お肉のお店

http://shop.moshimo.com/meat_iroiro

 

 to be continued

  翌日は掃除屋のバイトがあるので早めにアパートに帰ってきた。

  マイクに連絡をし彼をピックアップして仕事場まで行った。  

  今日はグレンデ―ル近辺に3件の仕事が入っている。  

  ほとんどの家の掃除時間は大体2時間かかることがわかった。 

 3件目の最後の家に行くと玄関から50歳くらいの男性が出てきた。    花屋のチェーンを経営しているようだ。

  一人住まいらしい。 

  話し方が女性的でたぶんゲイではないかと思う。 

  身長は190センチくらいありそうな大男のオカマだ。 

  髭は剃っているが青々とした剃り跡がいやらしい。  

  この体で女性的な話し方をされると気持ちが悪くて吐き気がする。      服装のスタイルは黒のタイツと白のタンクトップだ。  

  男性自信がボコッと膨らんでいて、タイツの上からもろに

  その形がわかる。 

  〈気持ち悪いったらありゃしない〉 

  2時間後10ドル受け取り早々とオカマの家を出てきた。 

  毎週1回来てほしいと言う。

  気持ち悪いがビジネスと割り切って承諾した。    

  掃除屋(ハウスクリーニングビジネス)は顧客が増えてきた。

  大成功だ。 

  このバイトは自分の勉強時間に合わせてできる素晴らしいビジネスを思いつた自分を自分で賞賛した。 

 

 アメリカで初めて迎える大晦日がやって来た。 

 今日から3日間は正月休みだ。  

 大晦日はマイクと彼の彼女、そしてダイジュとアニータの4人でハリウッドストリートで開催されるカウントダウンパーティーに行くことになっている。  

 有名なロックシンガーなどが参加するようだ。 

  テレビ中継もされるらしい。   

  マイクと彼の彼女がダイジュのアパートにやってきた。 

  アニータは昨夜ダイジュのアパートに泊まっていた。

  「ハイ、ダイジュ、俺の彼女を紹介するよ。名前はジュリアン・スチュワート。21歳で USC(南カリフォルニア大学)の3年生」

 「ハイ、ジュリアン。グッド ツゥ シー ユー」とダイジュが挨拶した。  今度はダイジュがアニータをジュリアンに紹介した。

  「彼女の名前はアニータ。年齢は20だったかな?僕と一緒に英語学校へ通っている」  

 まだ朝の9時なのでカウントダウンに行っても早すぎる。 

 4人で近所のデニーズへ朝食を食べに行くことになった。 

  デニーズはお客で混雑していたがなんとかテーブル席を確保することができた。

  

 アニータはパンケーキとコーヒー、ジュリアン、マイクとダイジュの3人はハムエッグとコーヒーをオーダーした。    

 4人は賑やかに話をしながら朝食を食べている。

  ジュリアンは彼女が通っている大学のこと、アニータは故郷の国のこと、ダイジュはアメリカに来る時機内食のステーキの焼きかげんがわからなかったことを話すと皆大笑いだった。

 朝食が終わりこれからロスアンゼルスの街をドライブすることになった。  

 

 

 グリフィフスパークの天文台、ラブレア大通りにあるアンティーク家具店、メルローズストリートのアンティークショップといろいろな場所を回ったが、まだ時間があるので  マリブビーチに行くことに話が決まった。    パシフィックコーストハイウエーを飛ばしマリブに着いた。 

 マリブには小説家、ハリウッド映画関係の監督、映画プロデューサーなどクリエーティヴな人間が多く住んでいる地域だ。

 ハリウッドスターたちの多くはビバリーヒルズに住んでいるようだ。           4人はマリブ海岸の岩場に座りとりとめのない話に花が咲いた。 

 水平線に真っ赤な大きな夕陽が海を照らしていた。 

 

 「ダイジュ、そろそろハリウッドに帰ろうか。今日は道路が混むし、早くパーキングロットを確保しないとなくなると思うし」

  「OK!レッツゴー バック ツー ハリウッド」

  またパシフィックコーストハイウエーを戻りサンタモニカ大通をハリウッド方面に走っていった。 

 途中サンセットあたりから渋滞になっていた。  

 ハリウッド近辺の裏通りをぐるぐる回り、やっと一台だけ駐車できるパーキングロットを見つけることができた。 

  カウントダウン会場まで歩くとかなり遠い。

 しかし仕方がない。  

 4人は30分ほど歩いてやっと会場に着いた。 

  ステージでは名も知れないロックグループがガンガンエレキを弾き声を張り上げ歌っている。

  ウエスタン、ロック、フォークとあらゆるジャンルのミュージシャンたちがステージに上がっていた。

  このカウントダウンイベントで、音楽プロデューサーなどに見い出されて有名になったミュージシャンが数多くいる。

 彼らは大げさな言い方だが命をかけてステージに立っているのだ。   ここはまさにハリウッド映画界の中心地だ。  

 

 どこも人、人、人で埋まっている。 

 4人は歩きつかれたので、大きな植木鉢の端に腰を掛けた。 

   イルミネーションが派手な光を出し、赤、黄色、青などのスポットライトが道路を照らしている。 

 ダイジュはのどが渇いたのでみんなに希望の飲み物を訊き近くのリカーショップに行った。

 ダイジュとマイクはボトルのバドワイザービール、アニータとジュリアンにはコークを買ってきた。  

 しばらくするとダスティングスプリングフィールドがステージに上がった。 

  その次はスコットマッケンジーが【花のサンフランシスコ】を歌った。    スターの誰が来てステージに上がるか知らされていないし、関係者も知らないらしい。  

 突然バンドを引き連れてやってくる。 

  そしてすべて無料だ。 

 ところどころに大きなドラム缶が置かれていて、お金が入る大きさの穴が開いている。  

 ステージを見て感激し寄付したい人はそこにお金をいれればいい。   そのお金はどこかに寄付されるのだろう。 

 

 圧巻はダイジュが大好きなジャニスジャプリンだった。 

 夢のようだった。彼女はケンタッキーバーボンウイスキーのボトルを抱えてステージに上がってきた。

もうすでにかなり酔っ払った状態だった。 

「ヘイ、メン?ハウズゴーイン?アーユーオーライト?」と観客に話しかけている。

  「オーライト!」と観客は一斉に答えた。 

 たぶん彼女はドラッグもしていただろう。  

 すると突然、彼女の哀愁あるハスキーな声で【サマータイム】を歌いだした。

 〈ライトオン!メン〉 

 バーボンを呑みながら歌っている。

 もう観客は大騒ぎで陶酔の世界に入っていた。  

  ロックコンサートではよくあることだが、ダイジュの横の女性からマリワナが回ってきた。

 一服吸ってまた次の横の人に渡す。

 回し吸いだ。

 なくなると誰かが持っているので火をつけてまた回される。

 アニータもジュリアンも吸った。 

 

 ここカリフォルニアでは吸ってもお咎めはないが、売買してはならないと言うおかしな法律がある。

 〈吸ってもいいが売買してはならないと言うことは、栽培してもいいことなのかな?〉  

 ドンドン、マリワナが回ってくる。

 回ってくるたびに吸う。

 頭がボーとしてきた。  

 マリワナを吸うと無性になぜかセックスがしたくなる。 

 ジュリアンの目も、アニータの目もトロンとしている。

 二人とも女性特有のフェロモンをプンプンさせている。

 マリワナを吸いセックスをするとエンドレス状態になる。

 最高だ。  

 どこで手に入れるのかマイクがダイジュのアパートによく持ってくるので二人でウイスキーを呑みながら吸っている。 

 〈マリワナは習慣にならないのでタバコよりいいといわれているが、果たしてどうなのか?〉 

【クリスマスパーティー】

 

 

  アニータがクリスマス料理の手伝いをしにキッチンに行った。

 ダイジュはリビングのソファーに座りアニータの義兄と話をした。

 義兄の名前は【カルロス】と言う。

 彼は英語が達者でスムーズに話をすることができた。

 カルロスはニカラグア大使館に勤めているそうだ。

「ダイジュ、空手はできるか?」と突然聞かれた。

 ダイジュは小学校のとき空手道場へ通っていたことがあるので「イエス!」と答えてやった。

「空手を習いたいけど教えてくれないか?授業料は払うよ」

〈さて、困ったな。しかし授業料は魅力だな。よし何とかやってやろう〉

 角材に縄を巻いて突きの練習をしていたことを思い出した。

「カルロス、まず角材とロープを買いにホームセンターに行こう」

 アメリカには縄がないのでロープと角材を買って帰った。

 角材の上のほうにロープを巻いた。そして裏庭に角材を打ち込んだ。

OK、できたよ。カルロス。俺の通りにやるんだよ」

 

ダイジュは小学校時代に習った空手の型を思い出しながら、手を握り締め、

腰を落とし角材に巻かれているロープをめがけて突きを披露した。

手の甲が痛かったけど、何食わぬ顔で誤魔化した。

 ダイジュはもっともらしく、カルロスの片方の握りこぶしを腰に構えさせ、

足は肩幅より少し広めに開かせた。そして握りこぶしを右左、右左とロープをめがけて何度か打たせた。

「ダイジュ、手が痛いよ」

「カルロス、毎日繰り返していると手の甲が硬くなってそのうち慣れて痛くなくなるから。

これが空手の基本だから、手の甲が固くなくなるまで続けることだよ」

「よし。明日から毎朝、オフィスに行く前にやるよ」

「頑張りな。痛くなくなったら次を教える」

「わかった。グラシアス」

〈次は何を教えたらいいのかわからない。リトル東京へ行って空手の本を買ってこなくちゃ〉

 

 アニータの家族の親戚、友人たちが集まってきた。

 カルロスが集まってきた男たちを裏庭に立てられている角材の場所に案内し、

何やらスペイン語でダイジュから教えられたことを説明しているようだ。

男たちがダイジュから習ったことをカルロスが教えて板を叩いている。

 

 アニータが料理ができたからとみんなを呼びに来た。

 広いリビングに何台ものテーブルがセットされている。

 テーブルの上にはニカラグアの国の郷土料理だろうか色とりどりの珍しい料理が並べられていた。

立って食べるバフェットスタイルだ。

 

 「メリークリスマス」とカルロスが大きな声で叫ぶと、みんな「メリークリスマス」と大声で一斉に叫び、

 パン、パン、パンとクラッカー音とともに何本ものシャンペンのコルクが抜かれた。

 賑やかなラテン音楽がステレオレコードプレーヤーから聴こえてくる。

 ラテン系の人たちは陽気でよく食べ、よく呑むには驚いた。

 男も女も体格がいい。

 

 3人の男たちがどこから現れたのかギター、マラカス、バイオリンで生演奏を始めた。

 カルロスはボーカルの役だった。彼の歌は最高だ。

〈みんな、プロの芸人のようだ〉

 他の男も女もワイワイ叫びながら踊っている。ピーと上手に指笛を吹く者もいた。

 ダイジュもアニータの誘いにのって陽気に踊った。

 パーティーは延々と夜中まで続いた。

 

その夜はアニータの部屋に泊まりいつものように愛し合った。

 最近アニータはエクスタシーになると悩ましい大きな声を出すので、口をふさがなければならなかった。

 

 

http://shop.moshimo.com/news4u

【クリスマス・ミサに参加】

 

 

 食事が終わり、ダイジュは借りたスーツを着、アニータは黒のスーツに着替えた。

 リトル東京の近くのメキシカンタウン、オリベラストリートまで行った。

 そこには大きな立派な教会がある。

 教会ではパイプオルガンが奏でられていた。

 聖歌隊がパイプオルガンに合わせて合唱をしていた。

 厳かな雰囲気だった。

 壁の真ん中には十字架に張られた巨大なキリスト像がそびえ立っていた。

 アニータはそのキリスト像の前に行きキリストの足の甲にキスをした。

 ダイジュはベンチに座っていた。

 これがアメリカのクリスマスなんだ。

 日本ではドンちゃん騒ぎをしている光景が目に浮かぶ。

 

 教会の外に出ると心の中の何かがスーと取り払われたような清々しい気持ちになり、来年は何かいい事が起こりそうな予感がした。

 

 【LITTLE TOKYO

 

アニータにリトル東京(日本人街)を見せてやりたくて、ファーストストリートを車で走った。リトル東京の道路には日本から来ている商社の駐在員達であろうか、多くの酔っ払いが大声を張り上げ千鳥足でよろよろと歩いていた。

 厳かな雰囲気の教会の後なので、彼らがなんだかバカに見え、アニータに対して恥ずかしい思いがした。

 

 日本は仏教の国だからクリスマスを祝う習慣がない。その代わりニューイヤーは神社仏閣にお参りに行き静かに新年を迎えるのだと、言い訳がましく説明をした。

 彼女は理解できたかどうかわからない。

 

【クリスマスプレゼント交換】

 二人はアパートに帰り、もう一本ワインを空けてしまった。

 そして隠していたプレゼントをアニータに渡した。

 彼女は包み紙を開け中を見て驚きの表情をしダイジュに抱きついてきた。

 喜んでくれたようでダイジュは満足だった。

 アニータもハンドバッグからきれいな包み紙で包装されたプレゼントをダイジュに渡した。中を見てみるとパーカーの万年筆とボールペンのセットだった。

 うれしかった。

ダイジュは子供の頃、親が枕元にクリスマスプレゼントを置いてくれていたことを思い出した。

それ以来クリスマスプレゼントなど誰からももらったことがなかった。

 

二人でシャワーを浴びベッドに入って激しく愛し合った。

 25日のクリスマスの日にはアニータの家でクリスマスパーティーがあるらしく参加することにした。

 

 小鳥のさえずりで目が覚めた。清々しいクリスマスの朝だった。

 アニータはまだすやすやと眠っていた。

 学校はクリスマスバケーションに入っていたので来年の1月2日まで休みだった。

 掃除屋のバイトはクリスマスイブとクリスマスの日だけ休み、そのほかの日は12月30日までびっしり予定が入っていた。

 

 朝食はダイジュが用意した。昨夜の残りの若鶏の丸焼きをオーブンにいれ少し焼き、サラダとコーヒー、トーストをコーヒーテーブルに並べた。

 アニータが目を覚ましたので、二人でシャワーを浴び朝食を食べた。

 

LA ダウンタウンからサンタモニカまでドライブ】

 

クリスマスパーティーは夕方から始まるので、彼女と車でロスアンゼルスの街をドライブすることにした。

 

今の時期の日本は寒い冬だが、ロスアンゼルスではTシャツで充分だった。

「アニータ、どこか行きたい所はあるかい?」

「ダイジュに任せるわ」

OK!」

 フリーウエーには乗らないで、ウイルシャー大通りをまっすぐサンタモニカ方面に走ることにした。ダウンタウンを過ぎ、ラブレア大通り、そしてハリウッド近辺に来た。

 

HOLLYWOOD

「アニータ、車を駐車してハリウッドを少し歩こうか?

「いいわよ」

 有料パーキングに車を入れ、二人でハリウッドを歩いた。

 ハリウッドは映画の都と言われているが、実はカルヴァーシティーが映画の都だ。

 カルヴァーシティーにはたくさんの映画の撮影所があるのだ。

 歩道には数多くの映画スターの手形が敷かれている。ジョンウエイン、ゲーリークーパー、

ナタリーウッド、オードリーヘップバーンなどなど映画スターの手形を見ながら歩いた。

 ハリウッド中心地のチャイニーズシアター前の広場に来ると、大勢の人だかりがしていた。誰かハリウッドスターがいるのだろう。

 

お土産屋ではスターのブロマイドが売られていた。

 この辺はLAダウンタウンとは雰囲気がまったく違う。おしゃれな店も多い。

 ピザのピース売りを買い食べながら歩いた。

 あまり時間がないので駐車場まで戻りハリウッドを出発した。

 

【ビヴァリーヒルズ】

 

次はビバリーヒルズの高級住宅街を走ってみることにした。

 多くのハリウッドスターが住んでいる地域であることをアニータも知っていた。

 車のスピードを落としビバリーヒルズのハリウッドスターの家々を一通り見て、

一路サンタモニカに行くことにした。

 

 【SANTA MONICA

ダウンタウンからウイルシャー大通りを走ると突き当りがサンタモニカの海岸だ。

 サンタモニカの駐車場に車をいれて街を散策することにした。

 各店にはクリスマスデコレーションが美しく飾られている。

 二人で海岸沿いのベンチに座り海を眺めた。この海の向こうは日本がある。

 日本の友達たちはどうしているのだろうか。

 親父、お袋たちは元気だろうか。

 なぜかアメリカに来て初めてホームシックにかかったようだ。

 

 黙って海を見つめているとアニータが「どうしたの?」と心配そうにダイジュの顔を見た。

「日本のことを思い出していたんだ。ホームシックにかかったようだよ」

「私もニカラグアの事を時々思い出してホームシックにかかることがあるわ」

「さて、そろそろ帰ろうか?」

 

【一路LAダウンタウンに帰路】

 

 駐車場に行き車を走らせた。

 帰りはサンタモニカフリーウエー、そしてハーバーフリーウエーと乗り継ぎ

アニータの家まで帰ってきた。

 アニータの家の前庭にはクリスマスのイルミネーションがきれいに飾られていた。

 まだ外は明るいのでライトアップはされていなかった。

 家の中に入ると彼女の家族が笑顔で迎えてくれた。

〈家族はいいな !・・〉

 

 

【アメリカで最初のクリスマス】

そろそろアメリカに来て最初のクリスマスシーズンが来ようとしていた。

 カリフォルニアの天気では四季を感じることはできなかった。

 年中半袖のTシャツとジーンズで過ごすことができた。

 しかし街では革ジャンを着ている多くの黒人をみかけた。

〈暑くないのかな?〉

 ダウンタウンの各店にはクリスマスツリーが飾られ、クリスマスセールが始まっていた。

 アニータの為のクリスマスプレゼントを買おうと思いダウンタウンに出かけて行った。

 何を買っていいかわからない。

 あまり予算はないが何かいいものはないかと色々な店を覘いてみた。

 そうだラテン系の女性はアクセサリーを好んでよく身に着けていることを思い出した。

 

貴金属店に入り14金の小さなピアスを選んで買い、クリスマスプレゼント用に包装してもらった。

 プレゼントはクリスマスイブまで、アニータがアパートに来ても見つからないように隠しておいた。

 

 掃除屋のバイトもマックイーン邸のバイトも順調だった。

 LAシティーカレッジに行くにはかなりの授業料が必要だった。

 スカラシップを取れるほどダイジュの学力はいいわけがない。

 しかしマイクのお陰で日常英会話はほとんど不自由することがないほどに上達していた。

 3月にアメリカの地を踏んだときには英語力はゼロに近い状態だったことを思うと、今の自分がこんなに早く英語を話せるようになるとは思っても見なかった。

 ここアメリカでは、マネー、お金が大切なことを痛感させられたので、大学はビジネスアドミニストレーション(経営学)の方へ進もうと思っていた。

 

ダイジュは現在の英語学校では大学入学のためのクラスにステップアップしていた。

 相変わらず日本人集団たちは初級のクラスだった。

 

 

 

 現在アメリカはベトナム戦争真っ只中だ。

 時々ベトナム戦争で戦死した兵隊の葬式を見かけることがある。

 アメリカは好きだが早く戦争は終わってほしい。

 戦争で死ぬのは下の階級の兵隊だけだ。

 上の階級の軍人は本国から命令を出すだけで安全な場所にいる。

 上も下も人間の命には変わりがない。

 何のために殺しあわなければならないのか?

 1950年代のような平和な懐かしく良きアメリカに早く戻ってほしい。

 もうすぐクリスマスがやってくる。しかし今もベトナムでは殺し合いが続いている。

 

 

今日はアメリカで初めて迎えるクリスマスイブだ。

 ささやかだがダイジュは小さなクリスマスツリーを買ってきた。

 ダイジュはアニータと二人だけで静かなクリスマスを迎えたかった。

「アニータ、俺はお前と二人だけでクリスマスを迎えたい」

「いいわ。私もダイジュと二人だけのクリスマスを過ごすわ。でも今夜は教会へミサに行くわよ。ダイジュも一緒にね」

「わかった。案内してほしい。俺はクリスチャンでないけどいいかな?」

「大丈夫。私が色々教えてあげるから」

「ところで俺はスーツを持ってないけど、どんな服装で行けばいいのかな?

「今から私の家に行って義兄のスーツを借りて来ようか?大体同じくらいの体格だから」

「白のワイシャツもネクタイもないんだ」

「靴はあるの?」

「革靴は日本から持ってきているのであるよ」

 早速二人はダイジュの車で彼女の家まで行った。

 車で約30分くらいの距離だった。

 

 

 

 彼女の義兄に挨拶しワイシャツとスーツを借りた。

 試着してみると少し大きかったが大丈夫そうだった。

 アニータは今夜はダイジュと過ごすからと家族に伝えたらしい。

 彼女の家族の中では二人はもう公認の中のようだった。

 彼女の姉がオーブンで焼いた若鶏を持たせてくれた。

 

 アパートに帰り、コーヒーテーブルの上に若鶏の丸焼きとサラダを並べた。

 キャンドルを灯し、赤のボルドーワインで乾杯した。

 

 

それからしばらくしてマイクから電話があった。

「ダイジュ、LAタイムズの広告料がわかったぞ。安いよ。日曜日版の朝刊で3行20ドルだ」

「よし、マイク早速LAタイムズ社に行ってみよう」

 

 二人はダイジュの車で、ダウンタウンのロスアンゼルスシティーホール(市庁舎)の近くにあるLAタイムズ社に出かけて行った。

 オフィスの中に入りマイクが守衛に広告を出したいと言うと広告部に案内してくれた。

 広告の文面は【個人宅ハウスクリーニング承ります。当方日本人。

 下記電話番号へお気軽にご連絡ください】と言う簡単な内容だ。

【当方日本人】と言うフレーズが信用を得るには一番大切なフレーズであると思った。

 それだけ日本人は信用されているのだった。

 ダイジュの電話にはアンサーフォン(留守番電話)を設置していないので、マイクの電話番号を掲載した。

 掲載料は二人で半分ずつ出し合った。

 その週の日曜日版に掲載しマックイーン邸の仕事を終え、マイクの自宅へ一緒に帰っていった。

 マイクのアパートに入り、二人はまず電話機を見た。すると留守番電話が入っていることを知らせる青いライトがピカピカと点滅している。

 二人はニッコリと顔を見合わせた。

 留守番電話のテープを巻き戻し録音を聴いてみた。

 すごい13件の問い合わせが来ていた。

 二人は小躍りし抱き合って喜んだ。

 

 重要な掃除料金を設定しなければならない。あまり高額ではキャンセルされる。

 あまり少なすぎても意味がない。

 二人は色々議論し結論はビーフジャキー会社のバイト代を基本とすることにした。

 ビーフジャキーのバイト代は1時間1ドル25セントだったのでその4倍、すなわち出張費込み1時間5ドルと設定した。

 早速留守番電話に入っていた13件のオファー先に、間違ってはならないので英語がネイティブスピーカーであるマイクに電話をかけさせた。

 13件中10件のオーダーを取ることができた。

 他の3件は値段が高いと言ったそうだ。

 

  二人はビーフジャキーのバイト先に勉強が忙しく働くことができなくなったと言う理由で今週いっぱいで辞めると伝えた。

 ラテン系事務員は快く承諾してくれた。今までの給料は来週末金曜日に取りに来るようにと言われた。

 

 マイクとダイジュの働ける時間帯がお互いに違うので、時間がある方が掃除のバイトに行き、二人とも同じ時間帯が空いているなら二人で掃除をこなすことにした。

 慣れるまで何とか二人で時間を作り一緒に行くことにした。

 

 最初のお客はハリウッドの高台のベルエアー高級住宅地域のお客だった。

 玄関のベルを押した。二人は緊張していた。

 中から気難しそうな初老の男性が出てきた。

 中に入るように言われ家の中に入った。

 家の中に入ると何かカビくさい臭いががする。

 本棚には膨大な量の本が並べられている。

 カビくさい臭いはたぶん本から出ている臭いだろう。

 昼間なのに薄暗い家だった。

 二人は挨拶すると初老は南カリフォルニア大学の教授で一人住まいとのことだった。

 一時間5ドルと言う値段の確認をとり、リビング、寝室、キッチン、トイレ、バスルーム、本棚とてきぱきと掃除をこなしていった。

 掃除道具は家にある掃除機、洗剤などを使うこととしていたので手ぶらで行けばいい。

 二人で約2時間かかった。

 掃除が終わったことを初老に告げると、彼は本棚が気になっていたのか本棚に指を当てこすって

埃がないことを確認するとおもむろにうなずいた。

 来週も来てほしいと言う。了解し10ドルを受け取り二人は外に出た。

 

 次のお客はサンセット大通りを少し入った家だ。

 この地域も豪邸が並んでいる。

 高級店が並ぶビバリードライブが近い。

 家の前でベルを押すと中から40歳くらいのホットパンツを穿いた美人のブロンドの髪の女性が出てきた。

 気さくに「ハイ、カミン」と手招きする。

 料金を確認してもらい二人は掃除に取り掛かった。

 大きなリビングルームにはベージュの毛足の長いシャギーのカーペットがウオールツウウオールに敷き詰められている。

 主の女性が、このリビングルームに掃除機をかけるときは、一方通行でかけてほしいと言う。

  端から端まで掃除機をかけると、最初に始めた端まで掃除機を持ち上げて持って行き、また掃除機をかける。

 この繰り返しだった。シャギーの毛足を揃えるためだ。

 掃除機が大きく重いのでかなりきつい作業だ。

 

 洗面所を掃除するためマイクと洗面所に行くと女性の下着が散らかっていた。

 二人は顔を見合わせニコッとして、女性がいないことを確かめるとマイクがピンクのパンティーを取り上げて臭いを嗅いだ。

 ダイジュもブルーのパンティーを取り上げて臭いを嗅いでみた。

「マイク、良いにおいだね。興奮してきたよ」

「俺も。早く帰って彼女を抱きたくなったよ」

「俺も帰ったらアニータを迎えに行って彼女を抱くよ」

 二人は19歳と20歳の精力絶倫の男の子たちであった。

 

 汚れているパンティー、ブラジャーなどを籠に入れて掃除に取り掛かった。

「マイク、この仕事は悪くないね」

「同感だ。思ってもみなかったよ。こんなうまみのある仕事とはね」

 

 ダイジュが次にトイレ掃除に行くと汚物入れの中に大量の使用済み生理用タンポンが入っていた。

 急いでマイクを呼びに行った。

 マイクに見せると「オー」と言ってニコニコしながら大げさに腕を広げて見せた。

 ダイジュはそれらのタンポンをなにくわぬ顔でゴミ袋に入れていった。

 今回は無駄なことが入ったので掃除を終えるまで2時間半かかってしまった。

 

 掃除終了を告げて2時間半かかったが、最初だから30分はサービスすると言うと

 女性は満足したので2時間半の12ドル50セントを払ってくれた。

「マイク、あの30分サービスする意味はパンティーの臭いを嗅いだお礼のつもりだったんだけどね」

「ダイジュ、お前良いビジネスを思いついたな。感謝してるよ」

「ここの女性が、ばあさんでなくてよかったね。マイク」

「ハ、ハ、ハ」と大口を開けてマイクが笑っていた。

 今日の稼ぎは4時間半で22ドル50セント。一人の取り分11ドル25セントだ。

 悪くないバイトだ。

 ビーフジャッキーのバイトなら5時間働いて6ドル25セントだ。倍近くになる。

 しかしビーフジャッキーのバイトの場合はビーフジャッキーの切れ端を家に持って帰ってもいいことになっていた。

 これがダイジュの栄養源だった。

 掃除屋の仕事はその代わり、今日のようなうまみがある。

 

 ダイジュはマイクを彼のアパートまで送り、急いでアニータの家に向かった。

 我慢できなかったのである。

 アニータの家に着き呼び鈴を押した。

 アニータが出てきてびっくりしていた。

「どうしたの?ダイジュ」

 アニータの部屋に入り今日の出来事を話すと、転げまわって笑い出した。

 ダイジュはアニータの家に泊まり、執拗に彼女を求めた。

 【スティーヴ・マックイーン邸へバイトの面接】

 

 

 

  マイクから電話があり今週末日曜日にスティーブ・マックイーンの自宅に面接に行くことになった。

 スティーブ・マックイーンの自宅はニューポートビーチにあるそうだ。

 ロスアンゼルス・ダウンタウンからフリーウエーに乗って約1時間の距離だった。

 

 日曜日の朝7時にマイクが迎えに来た。

 マイクの車は古いフォードのピックアップトラックなので、ダイジュの車で行くことにした。

 土曜日の夜はアニータが泊まったので、彼女を自宅まで送りニューポートビーチへ向かった。

 簡単にスティーブ・マックイーンの家にたどり着くことができた。

 大きな鉄の門がある。インターフォンがあるのでマイクが流暢なネイティブイングリッシュで挨拶した。

 すると自動で門が開いた。門から玄関まで芝生の真ん中を車を運転して行かなければならないほどの大邸宅だ。

 玄関前に車を停めて玄関のベルを押した。玄関ドアはヨーロッパ中世のお城にあるような分厚い木製のドアだった。

 中から黒人女性のメードが出てきた。

 

 

 英語で話さなければならないのすべてマイクに任せた。

 家の中に入ると50畳ほどの広い吹き抜けのロビーのような空間だった。

 柱はすべて大理石のようだ。床も大理石を敷き詰めていた。

 リビングの隅には大きな白いグランドピアノが置かれている。

 

 大きな十人ほどが座れる皮のソファーに座って待つように言われたので、マイクと並んで座って待っているとスティーブ・マックイーンの奥さんが現れた。

 彼女はブルージーンズとタンクトップ姿だった。美しい女性だった。

 奥さんもハリウッドスターだったらしい。

 条件は毎週日曜日8時間働きで二人で一日50ドル。ガソリン代が10ドル。

 一人25ドルのバイト代だ。

 一ヶ月日曜日だけ働いて100ドルにもなる最高の条件だった。

 アパート代30ドルを払ってもアニータとの食事代が残る。

 

 彼女が車を保管している場所へ案内してくれた。

 裏庭と言ったらいいのか広大なバックヤードの中にはプール、テニスコートがあり、その横に巨大な倉庫が2棟ある。

 一番目の倉庫の扉を開けると、そこには50台以上のクラシックカーがズラーと並べられていた。圧巻だった。

 もうひとつの倉庫には、やはりクラシックオートバイが50台ほど並んでいた。

すげ~!スティーブ・マックイーン級のハリウッドスターともなればスケールが違う。

 これらの車を毎週来て磨くバイトだった。

 掃除道具の説明、掃除の仕方などを一通り聞き、玄関ロビーに戻ってきた。

 もっと凄いことは、食事、間食つきだ。

 食べたい物、飲みたい物があればメードに言えばなんでも作って持ってきてくれるとの事だった。

 黒人のメードの名前はマリアと言う。

 奥さんが日本人は礼儀が正しく、仕事が丁寧なので安心して任せることができると言っていた。

 日本人が移民でアメリカに来て苦労して今の信用を勝ち取ったことを思えば感謝しなければならない。

 来週日曜日から働くことになった。

二人はスティーブ・マックイーン邸を出て小さなハンバーガーショップに立ち寄った。

 ダイジュはチリドッグとコーク、マイクはチリバーガーとコークを注文した。

 二人はかなり興奮していた。

 

「マイク、俺はなんだかお前のお陰で夢を見ているようだよ。まだ信じられないよ」

「ダイジュ、俺もだよ。こんなバイトが舞い込むなんて信じられないよ。大学の演劇科の俺の彼女からこの話が来たんだよ」

「マイクも彼女がいるんだね。紹介しろよ」

「彼女は白人のアメリカ人なんだ。出身はオハイオ州」

「いいなあ。アニータもアメリカ人なら俺の英語も早く上達するんだけどな」

「ダイジュの英語の上達のスピードはすごいよ。まだアメリカに来て半年だろう?」

「そうだけど、ラジオで聴くニュースがまだ理解できないんだな」

「あせることないよ。遊びから英語をキャッチアップすればいいんだよ」

「遊びからか?」

「そうだよ。今は車も手に入ったし。車があれば女の子をハントすることもできるし」

「近いうちにハリウッドのサンセットの方へ行って見たいんだ。【77SUNSET STRIP】と言うテレビ映画知ってるか?」

「知ってるよ。ハワイで見てたもん」

「そこに行ってみたいんだ。アメリカのテレビ映画が俺のアメリカに対する原点なんだ。【ララミー牧場】【ハワイ5オー】

【ボナンザ】【ベンケーシー】なんか知ってるか?」

「知ってるよ全部。ハワイで見ていたよ」

「マイクは将来どんな仕事をしたいんだ?」

「俺はLAシティーカレッジを出るとハワイ州立大学に編入するつもりなんだ。本当は法律を勉強して弁護士になりたいけど難しそうだしな」

「俺はとにかく英語を早く上達して、まずお前のLAシティーカレッジに入学する。そしてできればUCLAカリフォルニア大学のビジネスアドミニストレーション(経営学)を目指したいと思ってるけどどうかな?ここアメリカはノーマネー・ノートーク、金のない人間は話す権利もないと言う国だからな」

「いえてる。ビンゴ!」

「俺はもう日本には帰るつもりはないんだ」

「じゃあ、アメリカで骨を埋めるつもりか?」

「そのつもりだ」

「ダイジュ、そろそろ行くか?」

OK!」

 

 

 

 ダイジュの英語もかなり上達していた。

 マイクとある程度英語で話しあえるようになっていた。

 

 二人はダイジュのアパートに帰り、マイクは道路に停めていた自分のトラックで帰っていった。

さて、明日からまた午前2時半起床の日々が始まるぞ。

  午前2時半起床、8時までバイト、学校といういつもの日々が続いた。

 

【スティーヴ・マックイーン邸バイト開始】

 

 待望の日曜日になった。

 午前6時にマイクがやってきた。

「ヘイ、ダイジュ、レッツゴー」

 まだ早いので二人はデニーズで朝食を取った。スティーブ・マックイーン邸には9時に着けばいい。

 「ダイジュ、絶対に車に傷をつけないように気をつけろよ。弁償できないからな」

 「わかってるよ。一台一台丁寧に掃除をすること。そうしたらまた信用を得られるからな。

 信用されたら又いい仕事が舞い込んでくるかもしれないからな」

「そうだな。そろそろ出発するか?」

OK!」

 二人はダイジュのコルベアーでフリーウエーに乗り、カリフォルニアの風を切って快適に100マイルので突っ走った。

 フリーウエーの両側には高い椰子の木々が延々と続いている。

 ところどころでオイルを抽出している例のカマキリ風の機械が相変わらず休みなく首を上下に振っている。

「マイク、ところで不思議に思ってることがあるんだけど」

「なんだい?」

「俺が日本からここへ来て一度も雨が降ってないけど、どうしてカリフォルニアは水不足にならないんだ?どの家もスプリンクラーでバンバン芝生に水を撒いているけどな」

「それはロッキー山脈の雪解け水がふんだんにコロラド川を通ってカリフォルニアに来ているんだよ」

「すごいな」

「ところで、マイクはサーフィンをするんだよな?」

「イェス。するよ」

「今度教えてくれよ」

「いつでもいいよ。ハンティントンビーチがいい波が来るんだ。俺は2個サーフボード持ってるから貸してやるよ。だけど日曜日のバイトが増えたから俺たちには時間がないだろう」

「それもそうだな」

 車はニューポートビーチにさしかかった。

「ヘイ、ダイジュ、見てみろよ。ビーチにはビキニスタイルのお嬢さんでいっぱいだよ」

「このままビーチでお嬢さんたちをハントしたいな」

 

 スティーブ・マックイーン邸の門の前に着いた。

 インターホンで着いたことを告げると頑丈な鉄の扉が開いた。

 中に入り玄関前に車を停めた。

 中からメイドのマリアが出てきて二人を迎えた。

 マリアが車をバックヤードの車庫前に停めるように言うので車を移動した。

さ~て、これからスティーブ・マックイーン所有の超高級車のお手入れだ。

 

 先週面接に来たとき掃除の手順を奥さんに教わっている。

 1920年代のフォードから掃除を始めた。

ダイジュが車のボディーを磨き、マイクが車の中の掃除をすることに決めた。

 まだ5台しか磨いていないが、ランチの時間になった。

 メイドのマリアが、ハムとローストビーフがたっぷり挟まっている

サブマリーンサンドイッチ(長いフランスパンに色々な具をはさんでいる)とボールいっぱいに入っている野菜サラダ、

そしてミルクとオレンジジュースを運んできてくれた。

 外の芝生にアウトドア用の椅子とテーブルがあるので外で食べることにした。

「マイク、俺はこんなに食べられないよ。残ったら持って帰っていいかマリアに聞いてくれよ」

 マイクはインターホンでマリアに聞いていた。

 食べ終えて一服しているとマリアがビニール袋と紙袋を持ってきてくれた。

 残ったサンドイッチは帰りの車の中で食べることにした。

 マイクも全部食べられなく残していた。

 

 二人はまたせっせと車を磨き5時の終了時間が来た。

 今日磨いた車はわずか13台だった。

 簡単なようでかなりの重労働だ。

 マイクがインターホンでマリアに終わったことを告げた。

 マリアがやってきてシャワーを浴びたいなら倉庫にシャワールームがあるから浴びていいよと言う。

 そしてバイト代65ドルを現金で渡してくれた。

「5ドル多いけど?」とマイクがマリアに言った。

 マリアは「5ドルチップよ。奥様がそう言っていたわ」

ありがたい!最高だ!

 二人は一緒にシャワールームに入り、シャワーを浴びスティーブ・マックイーン邸を出て家路へと向かった。

 

 帰りはマイクが運転した。

「ヘイ、マイク、この調子なら永久的に仕事はあるね。全部磨き終えるには4日かかるので毎週日曜日来るとして1ヶ月で全部磨くことになる。全部磨き終える頃にはまた最初に磨いた車に埃がかぶるという訳だ。そうだろ?」

「ザッツライト!その通りダイジュ」

 

 ダイジュの英語はマイクと知り合うことでかなり上達していた。

 朝2時半起床、8時までバイト、学校、自宅で予習復習の毎日がダイジュには、かなりきつかった。

 

 ある日、ダイジュはマイクに相談した。

「マイク、俺は朝のバイトをやめようと思ってるんだ。そろそろLAシティーカレッジの入試の準備もしなければならないのでね。どう思う?」

「そうだな。ダイジュにはLAシティーカレッジに入ってもらわないとね」

「何か時間が自由な仕事はないかな?毎週日曜日のスティーブ・マックイーン邸の仕事は続けたい」

 マイクが「俺もちょっと朝の仕事はきついんだ」と言った。

「ヘイ、マイク、いいことがひらめいたよ。マックイーン邸で仕事をしている時考えたんだが、掃除屋すなわちハウスクリーニングビジネスをしないか?一緒に」

「どうやって始めるんだ?」

LAタイムズに小さく新聞広告を出すんだよ」

「よしダイジュ広告を出してみよう。広告料を調べておくよ」

 

to be continued Thank you and see you again

 

 

 

夕方アニータが学校の帰りにダイジュのアパートに立ち寄った。

 彼女はダイジュの車を見て非常に喜んでくれた。

「アニータ、今夜は車でアニータの家まで送るよ」

「本当?うれしい。どこか行きたいわ」

「今夜はダメだけど、近いうちにロスアンゼルスの街をドライブしよう」

「ムイビエン!ダイジュ(最高ねダイジュ)」

 二人は当然のようにダイジュのアパートで愛し合った。

 最近アニータはエクスタシーを覚えたようで大きな声をだす。

 隣近所に聴こえそうで、ヒヤヒヤする。

 彼女の口を手でふさぐ事もある。

 アニータを彼女の家まで車で送っていった。

 

 

 

 毎日同じパーターンの生活、早朝バイト、学校と言う日々を送っていた。

 ある日、マイクがダイジュのアパートに来て、面白そうなバイトがあると言う。

 その仕事とはハリウッドスターのスティーブ・マックイーンの自宅で彼のコレクションの車の管理をする仕事らしい。

 管理と言っても車を磨くことのようだ。

 土日のどちらかの日にスティーブ・マックイーンの自宅に行き、彼の愛車を磨くバイトだ。

「マイク、やろう!面白そうだよ」

「では、今週の土曜日か日曜日に面接に行くように手配するよ」

OK! マイク、できれば日曜日がいいな。土曜日はアニータと過ごしたいから」

「わかった。連絡するよ。ところでダイジュ、電話を引けよ。いちいちここへ話に来るのは面倒だから」

「じゃあ、明日ATTに行って電話を申し込むよ」

 

 あくる日、学校が終わりATT電話会社に行き電話を申し込んだ。その日に電話機を渡されて電話を使えるようになった。電話機は鮮やかなブルーのかわいい電話機だった。

 アメリカは簡単だ。

 日本で電話を引くには何やら10万円ほどで債権を買わなければならなくて、また電話が引けるまで1ヶ月ほどかかるらしい。

 アメリカはすべて無料で設置でき、その日から使用できる。

国力の差だな。

 

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へ
にほんブログ村

 

1969年、中学時代からの夢を求めて、アメリカへ。

英語力全くゼロ!!

しかし私費留学なら I-20 ビザは取得できる。

ダイジュは岡山から神戸の米国大使館に一年間ビザを取得するために通い続けた。

そして遂にビザ取得。

学業などどうでもよかった。

テレビのアメリカドラマ、【ベンケーシー・ローハイド・アイラブルーシー・ハワイファイブオー・ララミー牧場・サンセット77など】

を見てアメリカで暮らしてみたかった。

もちろん海外、飛行機、すべて初めての体験だ。

さまざまな体験をもとに、気ままにブログで今後書いていきます。

長編になりますが、今後お時間がございましたら、お立ち寄りください。

よろしくお願いします。

 

Now Thank you and See you later.