【スティーヴ・マックイーン邸へバイトの面接】

マイクから電話があり今週末日曜日にスティーブ・マックイーンの自宅に面接に行くことになった。
スティーブ・マックイーンの自宅はニューポートビーチにあるそうだ。
ロスアンゼルス・ダウンタウンからフリーウエーに乗って約1時間の距離だった。
日曜日の朝7時にマイクが迎えに来た。
マイクの車は古いフォードのピックアップトラックなので、ダイジュの車で行くことにした。
土曜日の夜はアニータが泊まったので、彼女を自宅まで送りニューポートビーチへ向かった。
簡単にスティーブ・マックイーンの家にたどり着くことができた。
大きな鉄の門がある。インターフォンがあるのでマイクが流暢なネイティブイングリッシュで挨拶した。
すると自動で門が開いた。門から玄関まで芝生の真ん中を車を運転して行かなければならないほどの大邸宅だ。
玄関前に車を停めて玄関のベルを押した。玄関ドアはヨーロッパ中世のお城にあるような分厚い木製のドアだった。
中から黒人女性のメードが出てきた。
英語で話さなければならないのすべてマイクに任せた。
家の中に入ると50畳ほどの広い吹き抜けのロビーのような空間だった。
柱はすべて大理石のようだ。床も大理石を敷き詰めていた。
リビングの隅には大きな白いグランドピアノが置かれている。
大きな十人ほどが座れる皮のソファーに座って待つように言われたので、マイクと並んで座って待っているとスティーブ・マックイーンの奥さんが現れた。
彼女はブルージーンズとタンクトップ姿だった。美しい女性だった。
奥さんもハリウッドスターだったらしい。
条件は毎週日曜日8時間働きで二人で一日50ドル。ガソリン代が10ドル。
一人25ドルのバイト代だ。
一ヶ月日曜日だけ働いて100ドルにもなる最高の条件だった。
アパート代30ドルを払ってもアニータとの食事代が残る。
彼女が車を保管している場所へ案内してくれた。
裏庭と言ったらいいのか広大なバックヤードの中にはプール、テニスコートがあり、その横に巨大な倉庫が2棟ある。
一番目の倉庫の扉を開けると、そこには50台以上のクラシックカーがズラーと並べられていた。圧巻だった。
もうひとつの倉庫には、やはりクラシックオートバイが50台ほど並んでいた。
すげ~!スティーブ・マックイーン級のハリウッドスターともなればスケールが違う。
これらの車を毎週来て磨くバイトだった。
掃除道具の説明、掃除の仕方などを一通り聞き、玄関ロビーに戻ってきた。
もっと凄いことは、食事、間食つきだ。
食べたい物、飲みたい物があればメードに言えばなんでも作って持ってきてくれるとの事だった。
黒人のメードの名前はマリアと言う。
奥さんが日本人は礼儀が正しく、仕事が丁寧なので安心して任せることができると言っていた。
日本人が移民でアメリカに来て苦労して今の信用を勝ち取ったことを思えば感謝しなければならない。
来週日曜日から働くことになった。
二人はスティーブ・マックイーン邸を出て小さなハンバーガーショップに立ち寄った。
ダイジュはチリドッグとコーク、マイクはチリバーガーとコークを注文した。
二人はかなり興奮していた。

「マイク、俺はなんだかお前のお陰で夢を見ているようだよ。まだ信じられないよ」
「ダイジュ、俺もだよ。こんなバイトが舞い込むなんて信じられないよ。大学の演劇科の俺の彼女からこの話が来たんだよ」
「マイクも彼女がいるんだね。紹介しろよ」
「彼女は白人のアメリカ人なんだ。出身はオハイオ州」
「いいなあ。アニータもアメリカ人なら俺の英語も早く上達するんだけどな」
「ダイジュの英語の上達のスピードはすごいよ。まだアメリカに来て半年だろう?」
「そうだけど、ラジオで聴くニュースがまだ理解できないんだな」
「あせることないよ。遊びから英語をキャッチアップすればいいんだよ」
「遊びからか?」
「そうだよ。今は車も手に入ったし。車があれば女の子をハントすることもできるし」
「近いうちにハリウッドのサンセットの方へ行って見たいんだ。【77SUNSET STRIP】と言うテレビ映画知ってるか?」
「知ってるよ。ハワイで見てたもん」
「そこに行ってみたいんだ。アメリカのテレビ映画が俺のアメリカに対する原点なんだ。【ララミー牧場】【ハワイ5オー】
【ボナンザ】【ベンケーシー】なんか知ってるか?」
「知ってるよ全部。ハワイで見ていたよ」
「マイクは将来どんな仕事をしたいんだ?」
「俺はLAシティーカレッジを出るとハワイ州立大学に編入するつもりなんだ。本当は法律を勉強して弁護士になりたいけど難しそうだしな」
「俺はとにかく英語を早く上達して、まずお前のLAシティーカレッジに入学する。そしてできればUCLAカリフォルニア大学のビジネスアドミニストレーション(経営学)を目指したいと思ってるけどどうかな?ここアメリカはノーマネー・ノートーク、金のない人間は話す権利もないと言う国だからな」
「いえてる。ビンゴ!」
「俺はもう日本には帰るつもりはないんだ」
「じゃあ、アメリカで骨を埋めるつもりか?」
「そのつもりだ」
「ダイジュ、そろそろ行くか?」
「OK!」
ダイジュの英語もかなり上達していた。
マイクとある程度英語で話しあえるようになっていた。
二人はダイジュのアパートに帰り、マイクは道路に停めていた自分のトラックで帰っていった。
さて、明日からまた午前2時半起床の日々が始まるぞ。
午前2時半起床、8時までバイト、学校といういつもの日々が続いた。
【スティーヴ・マックイーン邸バイト開始】
待望の日曜日になった。
午前6時にマイクがやってきた。
「ヘイ、ダイジュ、レッツゴー」
まだ早いので二人はデニーズで朝食を取った。スティーブ・マックイーン邸には9時に着けばいい。
「ダイジュ、絶対に車に傷をつけないように気をつけろよ。弁償できないからな」
「わかってるよ。一台一台丁寧に掃除をすること。そうしたらまた信用を得られるからな。
信用されたら又いい仕事が舞い込んでくるかもしれないからな」
「そうだな。そろそろ出発するか?」
「OK!」
二人はダイジュのコルベアーでフリーウエーに乗り、カリフォルニアの風を切って快適に100マイルので突っ走った。
フリーウエーの両側には高い椰子の木々が延々と続いている。
ところどころでオイルを抽出している例のカマキリ風の機械が相変わらず休みなく首を上下に振っている。
「マイク、ところで不思議に思ってることがあるんだけど」
「なんだい?」
「俺が日本からここへ来て一度も雨が降ってないけど、どうしてカリフォルニアは水不足にならないんだ?どの家もスプリンクラーでバンバン芝生に水を撒いているけどな」
「それはロッキー山脈の雪解け水がふんだんにコロラド川を通ってカリフォルニアに来ているんだよ」
「すごいな」
「ところで、マイクはサーフィンをするんだよな?」
「イェス。するよ」
「今度教えてくれよ」
「いつでもいいよ。ハンティントンビーチがいい波が来るんだ。俺は2個サーフボード持ってるから貸してやるよ。だけど日曜日のバイトが増えたから俺たちには時間がないだろう」
「それもそうだな」
車はニューポートビーチにさしかかった。
「ヘイ、ダイジュ、見てみろよ。ビーチにはビキニスタイルのお嬢さんでいっぱいだよ」
「このままビーチでお嬢さんたちをハントしたいな」

スティーブ・マックイーン邸の門の前に着いた。
インターホンで着いたことを告げると頑丈な鉄の扉が開いた。
中に入り玄関前に車を停めた。
中からメイドのマリアが出てきて二人を迎えた。
マリアが車をバックヤードの車庫前に停めるように言うので車を移動した。
さ~て、これからスティーブ・マックイーン所有の超高級車のお手入れだ。
先週面接に来たとき掃除の手順を奥さんに教わっている。
1920年代のフォードから掃除を始めた。
ダイジュが車のボディーを磨き、マイクが車の中の掃除をすることに決めた。
まだ5台しか磨いていないが、ランチの時間になった。
メイドのマリアが、ハムとローストビーフがたっぷり挟まっている
サブマリーンサンドイッチ(長いフランスパンに色々な具をはさんでいる)とボールいっぱいに入っている野菜サラダ、
そしてミルクとオレンジジュースを運んできてくれた。
外の芝生にアウトドア用の椅子とテーブルがあるので外で食べることにした。
「マイク、俺はこんなに食べられないよ。残ったら持って帰っていいかマリアに聞いてくれよ」
マイクはインターホンでマリアに聞いていた。
食べ終えて一服しているとマリアがビニール袋と紙袋を持ってきてくれた。
残ったサンドイッチは帰りの車の中で食べることにした。
マイクも全部食べられなく残していた。
二人はまたせっせと車を磨き5時の終了時間が来た。
今日磨いた車はわずか13台だった。
簡単なようでかなりの重労働だ。
マイクがインターホンでマリアに終わったことを告げた。
マリアがやってきてシャワーを浴びたいなら倉庫にシャワールームがあるから浴びていいよと言う。
そしてバイト代65ドルを現金で渡してくれた。
「5ドル多いけど?」とマイクがマリアに言った。
マリアは「5ドルチップよ。奥様がそう言っていたわ」
ありがたい!最高だ!
二人は一緒にシャワールームに入り、シャワーを浴びスティーブ・マックイーン邸を出て家路へと向かった。

帰りはマイクが運転した。
「ヘイ、マイク、この調子なら永久的に仕事はあるね。全部磨き終えるには4日かかるので毎週日曜日来るとして1ヶ月で全部磨くことになる。全部磨き終える頃にはまた最初に磨いた車に埃がかぶるという訳だ。そうだろ?」
「ザッツライト!その通りダイジュ」
ダイジュの英語はマイクと知り合うことでかなり上達していた。
朝2時半起床、8時までバイト、学校、自宅で予習復習の毎日がダイジュには、かなりきつかった。
ある日、ダイジュはマイクに相談した。
「マイク、俺は朝のバイトをやめようと思ってるんだ。そろそろLAシティーカレッジの入試の準備もしなければならないのでね。どう思う?」
「そうだな。ダイジュにはLAシティーカレッジに入ってもらわないとね」
「何か時間が自由な仕事はないかな?毎週日曜日のスティーブ・マックイーン邸の仕事は続けたい」
マイクが「俺もちょっと朝の仕事はきついんだ」と言った。
「ヘイ、マイク、いいことがひらめいたよ。マックイーン邸で仕事をしている時考えたんだが、掃除屋すなわちハウスクリーニングビジネスをしないか?一緒に」
「どうやって始めるんだ?」
「LAタイムズに小さく新聞広告を出すんだよ」
「よしダイジュ広告を出してみよう。広告料を調べておくよ」
to be continued Thank you and see you again