今、Tverで「君の手がささやいている」を配信しています。

菅野美穂さん武田真治さん主演のドラマで、1時間半~2時間くらいのドラマが5本。1997年から2001年まで特番シリーズで放送されていたんですね。

 

耳の聞こえないヒロイン菅野さんが、健聴者の武田さんと恋をして、困難を乗り越えて晴れて結婚し、そして出産し、家族で問題を解決しながら生きていく、ハートフルなドラマ。

リアルタイムでも観ていましたが、久しぶりに鑑賞しました。

 

いやぁ…、どこからツッコめば良い??っていうシーンがテンコ盛り。今では考えられないシーンがたくさんあって、ちょっとビックリしますよ。

 

 

例えば、ヒロインが新しい命を授かる第二章。

 

妻の妊娠を知った夫が、「お祝いしよう」と家でワインを冷やして待っている。実家に報告に行った際も、お姑さんが「乾杯しましょう!」と、いそいそとビールを準備し始める。

 

え!そこでお酒飲ませるの?この時代は、妊婦が飲酒することを別に何とも思っていなかったんですね。今なら絶対あり得ないシーンです。面白いです。

 

 

そして、ドラマの核となる聴覚障害者やコーダ(聞こえない親を持つ聞こえる子供)の描き方も、昨今の手話ドラマとは結構違っています。

 

ヒロインは、どこまでもネガティブで、くよくよして、いつも泣いている。起こりうる全てのことは、耳が聞こえないせい。

障害者はすごく弱い存在、っていう描かれ方をしているかな。

 

 

幼稚園に通う4歳の娘が高熱を出して、ヒロインがうろたえるシーンなんて、0歳から今まで何してたんだい!って感じですよ。お隣に助けを求めるにしても、「救急車を呼びたいので、代わりに電話をしてください」って紙に書いて見せるとか、やり方はいくらでもある。

 

ヒロインは、ただただパニックになるだけで、自分は耳が聞こえないせいで何もできない、と落ち込んで泣く。聴覚に障害があったって、あそこまで無力じゃないと思います。

 
ハートフルなドラマなので、どの回も、最終的にはハッピーな感じに着地するのですけどね。これ、旦那さんがすごく大変だろうなぁって思っちゃう。妻、成長しなさ過ぎ(笑)
 
 
そういえば、「星降る夜に」では、耳の聞こえない彼が、聞こえないことを思い悩むシーンって、ほぼほぼ無かったかも?

聞こえないことで、不便が生じるシーンはあっても、不幸だというシーンは無かったかも。時代は変わってきました。

 

 

また、手話表現もすごく古い!

 

最近の手話ドラマ、「silent」や「しずかちゃんとパパ」などの手話とは、かなり違います。バリバリの対応手話(ネイティブのろう者が使う手話とは違う手話)です。

最近は、NHKの手話ニュースや映画やドラマでも、日本手話(ネイティブの人が使う手話)が採用されているので、こんなバリバリの対応手話を久しぶりに見た感じ。

イメージしてもらうなら…、日常会話なのに、論文に書くような文語体で話している、みたいな感じですかね?

 

あと、手話のメリットの1つに、遠い場所でも会話ができる、というのがあります。

 

でも、身を引こうとするヒロインに、彼は道の向こう側から手話をしながら大声で!プロポーズ!!道行く人が、クスクス、ヒソヒソ。感動したヒロインは、車の行き交う道路を走って横切り、彼の胸に飛び込む。…ツッコミポイントがあり過ぎる。

 
他にも、今はこういう演出はしないよな、手話もこういう描き方はしないよな、というシーンがいろいろあります。
書ききれないので、割愛しますけどね。

 

 

一方で、字幕をつけずに、相手の相槌によって内容を把握させる演出は、ちょっと新鮮。

これはこれで、会話の流れは十分にわかるし、逆に、「何て言っているだろう?」って興味をそそられるかもしれないから、当時の人々に手話への興味をいざなう役目は、すごくあったんじゃないかな。

 

今だと、聴覚障害をテーマにしたドラマに字幕をつけない、という選択肢がそもそも無いだろうと思うので、こういう演出はもう生まれないのかも。

 

 

あ、なんかいろいろ書いてしまいましたけど、「君の手がささやいている」は素晴らしいドラマです。あの時代には、ああだったということなので、あの時代のドラマとして、素晴らしいドラマです。