面白すぎてはいけない | こむぎブログ~猫とコンピュータ~

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3匹のお姉ちゃん猫と3匹の弟分猫たちの日常と6匹の猫たちが登場する変な猫マンガ。
そして昔のパソコンあれこれ。

私が初めて飼った猫、こむちゃんは、冬になるとファンヒーターの前が、それ以外の季節は私が部屋にいるときは私の膝の上、いないときは日があたり床より高い写真(↓)の場所が好きでした。



こむぎブログ ~ 猫とコンピュータ ~-X68000

この写真に写っている黒いパソコンは、シャープのX68000 PROという機種です。こむちゃんがうちに来る少し前の1990年に購入したものです。

パソコン歴の長い方には説明の必要はないでしょうが、X68000が発表された当時の1987年頃のパソコンは、8色または16色のカラーグラフィックし か扱えないものがほとんどでした。富士通の8ビット機FM-77AV が4096色のカラーグラフィックが扱えて注目を集めた頃です。また、解像度は 640×400ドットの機種が主流でした。

そのような時代に65536色756×512ドットの高いグラフィック能力を持った16ビットパソコンとしてX68000は登場しました。また、当時主流 の16ビットパソコンには標準装備されていなかったシンセサイザ機能やPCM録音再生、ファミコンを遥かに上回るスプライト機能など、ゲーマー垂涎のパソ コンとも言われた機種です。純粋にコンピュータに興味のある方は、日本のパソコンで初めてモトローラ68000MPU が採用されたことに注目したでしょ う。

すべての機能が従来のパソコンを凌駕しており、当時のパソコン誌での「次に欲しいパソコン」アンケートでは、しばらくの間X68000が1位となっていました。

しかしX68000は、当時「国民機」とまで言われた日本電気のPC-9801シリーズ の牙城を崩すことはできませんでした。これはまったくの推測ですが、X68000の最盛期でもシェアが10%を超えることはなかったのではないでしょうか。

なぜX68000は主流となりえなかったのか、それは「面白すぎる」からではなかったのではないでしょうか。

竹熊健太郎氏・相原コージ氏共著の「サルでも描けるまんが教室 (通称「サルまん」)は、私のマンガ描きのバイブル…というのは嘘ですが、マンガ家入門書の 名著(奇書?)だと思います。その「サルまん」の中の4コママンガの描き方で「面白すぎてはいけない」と書かれていました。

[良い例]
1コマ目…夕食の魚をノラ猫に盗まれ、それを追いかけるヤングミセス
2コマ目…街中の人がヤングミセスを見てクスクス笑う
3コマ目…自分の足元を見るヤングミセス
4コマ目…「(゚Д゚ )アラヤダ!!わたしハダシ!!」

[悪い例]
1コマ目…夕食の魚をノラ猫に盗まれ、それをハダカで追いかけるヤングミセス
2コマ目…街中の人がヤングミセスを見てクスクス笑う。中年の男性が股間の一物を怒張させている。
3コマ目…自分の姿を見てヤングミセスは「(゚Д゚ )アラヤダ!!わたしハダカ!!」
4コマ目…唐突に登場したダンプカーにヤングミセスは跳ねられ「ギャ!!」

※さすがに紙面をスキャンしてアップするわけにはいかないので文章ですみません。

私は後者のほうが絶対面白いと思うのですが、竹熊氏は「面白すぎては人心を不安に陥れる」と一蹴。

なるほど…X68000は面白すぎるから「ほんとに大丈夫このPC?」「やはり無難にPC-98だよね」と思われたんでしょうね…。

X68000は1993年のX68030を最後に、本当にひっそりと市場から姿を消しました。
国民機と呼ばれたPC-9801シリーズも今はありません。

今は電源が壊れて動かなくなったX68000の脇に、今年の7月に亡くなったこむちゃんの遺影とお供えが置いてあります。