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透き通るような…心が…ほしい

選好の逆転

 「いくら出力が大きいと言ったって、他のエアコンと比べて見なければ意味がない。大事なのは並列評価だ。」

(「ファスト&スロー」ダニエル・カーネマン)
 

 脳神経心理学と経済学の癒合

 ノーベル賞受賞の

 ダニエル・カーネマン教授

 乾坤の理論であるとも思われます。

 

 まずは心理学としての好きと嫌い、選好。

 この観点から出力の大きなエアコンを選びます。

 しかしそのエアコンは経済的にはどうなのでしょう。

 

 一つには同じ出力同士の値段の比較、

 次に両者を自分の好みで選好する。

 さらにはエアコン購入のタイミング、

 エアコン自身のハード面での頑丈さ、

 エアコン利用時の利便性等々、

 選考基準は並列列記して評価されるべきでしょう。

 

 そこで起こるのが選好の逆転、

 初期段階で選好されていたエアコンが、

 他のエアコンと並列列記されると、

 なんとも魅力のない商品に

 格下げされてしまう現象が表出します。

 

 これが大雑把にいうところの

 カーネマンの「選好の逆転」定理となるようです。

 

 選好の逆転は時として、

 とても残酷な現実を表出してしまう場合もあります。

 

 たとえば、

 

「彼の今回のプロジェクトは非常に素晴らしい結果を産んだとあなたはいうけど、それは彼の昔のプロジェクトと比べているからであるだけなのだ。

 他の人と比べたら、てんで話にならないレベルの低さである。」

 などという状況もあり得るのです。

 

 物事を判断する時には、

 多角的に、

 広汎な視野でとらえること

 ≒フレームを拡げることと、

 その数字の底辺≒分母を

 大きくしたり小さくしたりして、

 その物事の実際を冷徹に射貫くことも

 大切であるようにも思われます。

 

 一つ一つのケースを

 単独で取り上げるのではなく、

 常に並列列記するべきで、

 その習慣が

 システム1の感情反応に左右されることを

 防いでくれるとも考えられるような気もしないでもないのです。

 

 哲学的思考は論理的であり、

 経済的にも合理性を有し実践的、

 総合的に最強の思考法であると

 確信できるようにも考えられます。

 

「イタリアとフランスは2006年ワールドカップ(ドイツ大会)で対戦。

 次の二つの文章は、その結果を記述したものである。

     イタリアは勝った。  

     フランスは負けた。

 この二つの文章は同じ意味だろうか。

 答えは、あなたが「意味」という言葉をどう解釈するかにかかっている。

 哲学者ならばこのことを、両方の文章の真理条件(その文章が真であるための必要十分条件)は同一であり、一方が真であるならば他方も真であると言う。

 これはミクロ経済学を身に付けた合理的な経済人と同じ解釈の仕方なのである。」

(「ファスト&スロー」ダニエル・カーネマン)