あのジェイムズ家の娘アリスの日記22 | コラム・インテリジェンス

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透き通るような…心が…ほしい

 今現在、

 僕の心の中での重大度数順位は、

 寒さ、コロナ、ウクライナとなっていますが、

 現実には、

 ウクライナ、コロナ、寒さの順のようで、

 僕のようなジジィの心魂が、

 いかに低俗であるのかがうかがえます。

 

 世界は

 ウクライナ情勢の見誤りが原因で壊滅し、

 人類は、

 コロナの状況判断を誤ったがために、

 滅んでしまった、

 などとなる可能性はゼロではないけど、

 寒さはあと1か月もすれば

 治まりそうな気配ではあるようです。

 

1890年 サウスケンジントン

「10月25日

 キャサリンが言うには、ここはショッキングなホテルだ。階段を曲がるたびに、彼女のたてる音で、キスという息抜きを楽しんでいる給仕係と部屋女中が飛び上がるのだという。彼等の生活は私たちとなんとちがうことか。

 確かに私たちは彼等のように働いてはいないが、彼らが秘密のキスで得る『理想』に私たちが達することがあるだろうか。」

(「アリス・ジェイムズの日記」アリス・ジェイムズ)

 

 秘密のキスが息抜きなのか理想なのか、

 ここはいっそのこと

 

 快楽の絶頂曲線を描いた場合、秘密のキスはその小休止的息抜きではあるが、それ自体で快楽の絶頂にも匹敵するほどの快楽の“理想”の中の一つのパターンともいえるし、

 彼らが取得した『理想』は、その変形の一つであり、アリスとキャサリンのように雇用されていない、あるいは上司とか雇用側の人々の気に障るような“息抜き”を知らぬ階層の人々の幸不幸については、また別の問題を考慮しなくてはならない、

 

 くらいに解釈しても許されるのかとも思われます。

 

「10月26日

 その時私には、それが単に私の身体と意思の間の闘いであり、それも前者が最後には勝つという闘いなのだということがはっきりとわかった。」

(「アリス・ジェイムズの日記」アリス・ジェイムズ)

 

 「健全な精神は、健全な肉体に宿る」

 というユニウス・ユウェナリスの言葉を

 おバカ丸出しに誤解曲解しているおバカの代表選手みたいな人も未だにいるのでしょうけど、現実事実ではそんなことはあり得ません。

 

 「身体と心は一つの実存性の現象なのである。

  それは相互に影響し合わないが、一方で起こることは何事でも他方で起こることに反響する。」

(「6人の世俗哲学者たち」ルイス・ホワイト・ベック)

 

「世俗な哲学者たち7」

https://ameblo.jp/column-antithesis/entry-12614193740.html

 

 「病は気から」などと言われた病床にある患者はやりきれない気持ちになるだろうし、

 アリスのように複数の病が複合的に作用しあっている重篤な病人にとって、気持ちや意思などは肉体の病の前には何の役にも立たないということを嫌というほど味合わされているのでしょう。

 

「何らかの身体的弱さ、神経の過度の感じやすさのために、道徳的力がほんの一瞬、いわば停止し、その見張り機能の奮闘で疲れ切ったために、肉体の正常性を維持することを拒絶するのである。

 私が書斎で身動きもできずに本を読んでいて、突然、筋肉が激しい衝動の波に襲われ、窓から身を投げるとか、机で書き物をしている銀色の巻き毛をした穏やかな親父殿の頭を殴り飛ばすとか、無数にあるもののどれか一つをやってみたいという気になった時、自分と精神に障害のある人の唯一の違いとは、私には狂気の恐れ、苦しみがあるばかりでなく、医師、看護師の役割あるいは、拘束衣の役割まで押し付けられるということだと思えたものだ。」

(「アリス・ジェイムズの日記」アリス・ジェイムズ)