430光年の目眩(めまい) | コラム・インテリジェンス

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透き通るような…心が…ほしい

プラネタリウムでも
しばしば似たような体験をしたことがある。
 
夜空の星たち。
 
北極星までの距離は430光年。
光の速さで向かっても、
我々が北極星に辿り着くにはアタリマエに430年かかる。
 
しかも、光速で進み続けての話であるから、
1秒間で地球を7周半するスピードを維持しなくてはならない。
 
1秒間に地球を7周半とは、どのようなスピードなのだろう。
アタリマエに体験したことなどないのだから、
アタリマエに理解不能なのである。
 
が、1秒間に地球を7周半と聞いただけで、
目も眩むような速さ、目眩の速さということくらいは想像できる。
 
ヒトな、理解不能な出来事に直面すると、目眩を覚えるのかもしれない。
昨日のことも忘れるくせに。
 
夜空の星を想う時、
普段はその美しさと神話のエピソードに遊ぶことができる。
 
それでもその距離、その遠さを考えると、
なんともいえない孤独に襲われる。
 
1秒間に地球を7周半できる速度で1年間進んだ距離が1光年。
北極星は光速で430年の距離、430光年である。
 
しかも、我々が見ていると信じ込んでいる星たちは、
すでに消滅している可能性もある。
 
我々が北極星を見るとき、
我々は北極星が光の速さで430年前に放った光を見ている。
 
光の速さで430年前の輝きは、
今はもう失われているかもしれない。
いや、その存在さえ消滅してしまっている可能性もある。
 
遠い夜空の星たち。
 
北極星も、ベガも、王妃カシオペアも、王女アンドロメダも
すべてが消滅してしまっている可能性に思いが集束していく。
 
暗闇に包まれた宇宙。
その広大で果てしない空間に、我々はひとり
取り残されてしまっているのかもしれない。
 
我々の地球が、ひとりぼっちになってしまったら。。。
 
無限の闇に孤立する我々はひとり
暗黒の中へと沈んでいく。
 
落ちていく。沈んでいく。底に向かって真っ逆さま。
ひとり揺れながら沈んでいく孤独を想う時、
僕は目眩にも似た感覚を味わう。
 
430光年の孤独は、目眩に襲われる孤独。
地球が嗚咽を漏らしている。
 
だからこそ、我々は一緒に、共にいなくてはならないと思う。
 
今、この時間、この空間で、我々は孤独である。
お互いが肩寄せ合って、この孤独に、この目眩に
立ち向かっていかねばならない。
 
夜空を仰ぎ、目眩を感じるまで、
星たちに思いを寄せれば、
優しさが滲み出てくる。
 
430光年の目眩は、我々に優しさを残した。
 
目も眩むほどの広大は、無限の宇宙は、
我々に優しさを教えてくれているのかもしれない。