旅立っちまったー
いつかは来ると思ってたし
何ならよく18年も生きたなとさえ思う
食器、雑貨、怒号が飛び交い
テレビの最大音量が体験できる我が実家に
大人の事情で突然来た
シーズーとヨークシャーのミックス
犬が来ると変わるのか?
というか犬はこの家に耐えられるのか?
と小学生ながら思ったことは覚えてる
何はともあれ犬派であった私は
家に犬という生き物が来るのが嬉しくて
そりゃあめちゃくちゃ散歩した
小型犬の散歩時間って
別にそんなとらなくていいのに
家に居るのも嫌だったから
言い訳にちょうど良くて何処までも散歩した
結果、犬は他の兄弟たちより大きく育った
(7kgでビーグルくらいのサイズ)
顔立ちも体型もシーズーからも
ヨークシャーからも少し離れていて
「なんの犬種?」って散々聞かれた
犬が来てからの我が家は
さすがに食器が飛び交うことはなくなった
が怒号はどうしても変わらなかった
あったとしても犬を理由に
収まるのは早かった
愛玩動物っていうのは空気清浄機の役割もあった
当の本犬は空気を読むのは上手だが
人間の不機嫌を和らげる為だけに
媚びるような男ではなかった
間に入って吠えたり甘えたりは一切しない
綺麗に気配を消して一緒に縮こまって
家の嵐が過ぎるのをよく待った
免許とってからは姉お下がりの
キューブへ乗せて海に行った
大きい公園にも行った
私の車に乗れば知らないとこに行けると
理解した犬は助手席開けただけで
飛び乗るようになった
本当に外が好きな犬だった
自転車のカゴにも楽しそうに乗った
雨の日も散歩に行きたがるが
濡れるのと寒いのは嫌で
通常の1/4で家に帰るときもあった
忠誠心というより、
「居たいから居る」みたいな態度の犬
リード無くてもちゃんと隣にいる
リードを他の人に託しても私を追いかける
立ち止まってその場に座ると少し鳴いて文句を言う
従順という感じではなかった
なんだかどこか対等で兄妹だった
遊びで吠えることがあっても
本当に怒って噛み付いたりは一度も無かった
ご飯中に邪魔しても
齧ってるオヤツ奪っても
下手なブラッシングしても
好きじゃないシャンプーしても
迷子犬を保護してきたときも
何したって怒らなかった
本当に一度だけ唸られたことがあったのは
眠ってる時に爪切ったときだけ
本当に温和で沸点がない犬だった
思い返せばアイツの犬生の
半分しか一緒に居れなかった
倉松川の土手を全力で走る
元気な時しか知らない
大学入ってすぐ家を出てってしまって
たまに帰って少し遊ぶ
でももうその時には随分とオッサンで
ボケてはないけど
私に会えたことを喜んで
顔の高さまで飛び跳ねることは無くなった
ストレートな愛情表現も
加齢には負ける
ただ少し早歩きで尻尾を振って
寄ってくるだけでも嬉しかった
もう緑に澄んだ光る眼も
白く濁って映さない眼も
どっちも見ることは二度とない
旅立つ前日まで変わらない
白だかクリームだかわからない毛並み
夕焼けに当たると金色に見える
柔らかい毛質が大好きだった
(毛玉も出来やすかったが)
歩きすぎてかたい黒い肉球も
最後には心做しか柔らかかった
耳は聴こえてたのだろうか
聴こえていたならもっと名前を呼べば良かった
匂いはわかってたのだろうか
私が抱き締めたことは
最後伝わっていたのだろうか
最期何を思ってたんだろうか
お前が旅立ったと聞いた朝
ずっと思い出してしまう
顔を舐めて起こしてくれたな
茹でたササミ好きだったよな
寒い冬はくっつくようにしてそばにいたな
暑い夏は離れても同じ部屋にはいたよな
柴犬と本当に仲が悪くて
プードルとダックスとパグが好きだったよな
服を着る時自分から頭突っ込んでくれたな
「お留守番」って言うと拗ねて見送りしなかったな
「お散歩」って言うとご飯より
遥かにテンション高かったな
風が強くてもめげずに散歩してたな
動物病院わりと普通な顔してたよな
タイミング良いだけなのはわかっている
だけど1週間持ち堪えて
会ったその12時間後にあっさりと
逝ってしまったことを考えると
私に会うために頑張ったのでは?と
思わずにはいられない





