
昔、西海岸で買ったアルバム。クラシックがキューバ音楽にアレンジされていてかなり実験的。でも本当にどれも素晴らしい。そして今は、ただただ音のなかに埋没していたい気分。曲目のなかには昔、音楽室にこもって弾いていたショパンの「別れの曲」も入っていた。昨日、幼なじみが突然倒れたという情報を受けとり気が動転していたけれど、音楽を聴きながらなんとか気持ちを落ち着かせている。「なんてことないわよ。大丈夫よ」と、こんなときこそピエロのように振る舞い、動転している気持ちを隠して装うことを、ずっと昔に習得したからーー。私も少しは大人になったのかも知れない。音楽を聴いているだけで心が救われるし、あの頃のことも蘇ってくる。お気に入りの場所だった音楽室のこと、クラシック音楽、キューバのリズム、懐かしい友達のこと、西海岸の明るい風景、音楽と同じくらい夢中だった運動のことー。私の頼りない記憶の断片は、時間の概念を越えて音楽を媒介とし、いとも簡単に結びつく。そしてふと思う。生と死は別の次元にあるものではなく、まったく同じ螺旋状にあるものー。だとしたら、今生きていることは当たり前のことじゃない。キューバの音楽にはそんなことを強烈に思い起こさせる、魔力のようなものがある。

