私は以前、運送会社に勤めていたことがあります。

 時代はバブルでしたので、今とは多少状況が違うとは思いますが、似たような事故がありました。事故を聞いて真っ先に下請けの悲哀を感じました。

 運送会社での事故は当時「幹線」と呼ばれていた大型のトラックでの出来事でした。当時の運送法では規制緩和されていませんでいたので、宅配が出来る範囲の免許と、幹線道路を使っての免許の2種類があり、同じ会社が2つとも取ることは出来なかったように思います(私も上司から聞いたぐらいで詳しいことは分りません)。支店が集めた荷物を幹線の大型のトラックに方面別に積んで運びます。殆んどの場合は高速道路を使いますが、お客様の契約によっては地道(一般道)を使うこともありました。

 その大型トラックの輸送が「幹線」と呼ばれる免許の会社です。その幹線の免許の取得は難しく、時はバブルで需要は引っ張りだこ。ドライバーの賃金も上がりっぱなしでも需要はありました。

 そんな中で事故は起こりました。トラックが高速道路で横転、炎上。当然ドライバーは死亡。

 私の勤める会社とは多少の協力関係があったとは思いますが(下請けとかグループ会社でもなかった)、総務課長が葬儀に出席されていました。事故の様子とかの情報も教えて頂きました。遺体は殆んど燃えてしまって、腰の骨が握り拳ぐらいの大きさだけだったそうです。幹線の運送会社の下請けでの方で、葬儀は元請けの方が取りまとめていたようです。下請けですので、当然、無理をしないと仕事になりませんので、超過勤務が原因だったようだと聞いています。

 今回の高速バスの事故でも、結局、下請けの悲哀が、どんな時代であっても解消されていないことに気付かされました。バブルであれば何とか仕事を捌くために、不景気であれば人件費が高くつくから無理をしないと儲からないからと、結局のところ無理は下の方へと流されていくのです。

 事故を起こしたバス会社を擁護するつもりは毛頭ありません。

 下請けは仕事を無理して捌いて信用を得ているのです。「いつかは景気が良くなるから、それまでの辛抱だ」と頑張っているのです。安くても、赤字を出しても、仕事で元請けとの関係を維持するために何とか繋いでいるのです。

 今、皆が「WIN WIN」の関係でやっていける方法を考えるべきだと思うのです。規制緩和ももう一度考え直すべきだと思います。今回の事故はバス会社が悪いのではなく、皆の思いが作り出した結末だと思うのです。

 社会のあり方を真剣に考える、事故だったのではないかと思います。