美貌の女帝 (文春文庫) 美貌の女帝 (文春文庫)
永井 路子

炎環 (文春文庫 な 2-3) 氷輪 (下) (中公文庫) 氷輪 (上) (中公文庫) 女帝の歴史を裏返す 北条政子 (文春文庫)

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 ここ最近、あれだけ盛り上がった「女性宮家」問題。防衛省がスカタンしたお蔭?か、ここ最近メディアでは少し静かになったような気がします。改めて系譜を持ち出されると、日本の少子高齢化および晩婚化の縮図を見ているような感じがしました。

 本日、紹介する本は「日本初の処女帝」として君臨した元女帝の物語です。

 天皇の正妻は必ず「皇族」が条件であった古代。何故、正妻は「皇族」であったかというと、天皇が崩御された際、ピンチヒッターとして政治を司ることがあるので、天皇の血が流れていることが条件の一つだったようです。その後、この定義は「皇族か蘇我氏」、後に「皇族か藤原氏」、あと橘、平とくらいでしょうか。

 この小説の面白さは、従来の歴史の授業では「聖武天皇が小さいために、元明、元正と女帝が続いた」と習ったことを覆す内容で、歴史的に納得のいく内容であることです。永井路子氏は「蘇我氏の血を引く女性達が、蘇我氏の血を守るために取った作戦」と推理されて物語になります。藤原氏の血を引く聖武天皇に帝位を与えないためにも、持統天皇(鸕野讚良皇女、ウノノサララノヒメミコと読む。余談であるが「神田うの」の「うの」は「鸕野」が由来)が頑張り、やっと悲願だった愛息の故草壁の皇子の一人息子(つまり持統天皇の孫)15歳の軽皇子(後の文武天皇)にバトンタッチ出来たと思ったら、予定外にたった10年で崩御。故草壁の皇子(彼は持統天皇の皇太子)の妻の阿閉内親王(後の元明天皇、天皇の妻でもない女性が天皇になることが異例)が頑張り、元明天皇の長女の氷高皇女(後の元正天皇。未婚の女性が天皇になることは異例)が頑張り、長屋王の妻となった元明天皇の二女、吉備内親王の男児達を元明天皇の勅命で「皇孫」として、がっちりガード。

 結局は聖武天皇は即位し、長屋王一家は暗殺されます。聖武天皇も男子が幼くして亡くなっているので、長女の阿倍皇女(孝謙天皇、後に重祚して称徳天皇)に譲位します。そして阿倍皇女を以て蘇我氏の系統が途絶えるのです。そして、文武天皇に嫁ぎ聖武天皇の母となった藤原宮子は藤原氏初の正妻として歴史に名を残します。政治の世界も蘇我氏から藤原氏へと時代が変わったことになります。

 歴史学から見るとかなりユニークな内容ですが、私にとって一番納得できる一連の歴史なのです。

 もし、元明天皇がされた「勅命による「皇孫」」で誰か長屋王の男子が天皇になっていたら、女性皇族が元皇族の男性との子供を孫として迎える案に抵抗がなかったのではないかと言うのは少し乱暴でしたかしら。


海人と天皇〈上〉―日本とは何か (新潮文庫)
梅原 猛

海人と天皇〈上〉―日本とは何か (新潮文庫)
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長屋王が藤原宮子の「大夫人」の称号に対して反対した理由がこの本にある?かもしれません。上下2冊あります。古い本なので古本屋さんにあるかもしれません。