ゆう@子育てパパ

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完全燃焼で無煙を実現した薪(まき)ストーブやボイラーなどを製造販売するモキ製作所(長野県千曲市)の茂木(もぎ)国豊社長(71)。「燃やせば煙が出るのは当たり前だが、煙のでない焼却炉、ボイラーはできないものか」という常識を覆す発想と研究が、世界で唯一の製品を生み出した。可燃物が酸素と化合して光と熱を発生させる「燃焼」から、煙を排除することに成功したのだ。幼い頃から興味を持ち、研究を重ねてきた結果だが、その飽くなき情熱は今も続く。(太田浩信)。
「明治41年から続く鍛冶屋の4代目。物心ついたときからいつも炎が間近にあった」。燃焼に興味を持ち研究を開始したのは、何と5歳の頃だったという。そして、10歳のときには「29歳を目標に特許を取って、自社製品を製造販売するメーカーをつくりたい」と心に決めた。
その目標よりも早く、23歳で家業を継ぎモキ製作所を立ち上げた。この時も「特許を取った自社製品を3年以内に製造販売する」と目標を掲げ、独自に編み出したキノコ栽培に使う農業用機器で特許を取得した。
「今までにないものを作りたいと強く思うことが大切。世の中にないものを作れば市場に喜ばれ、ヒットする。ヒット商品を生み出すことが一番楽しい。だから年がら年中、実験を行い、新しい技術のことばかり考えている」と語る。
その後、ごみの分別機などの環境機器に取り組む一方、大好きな燃焼の実験は第2次オイルショック直後の昭和55年、おがくずを燃やす省エネ・リサイクルのボイラーとして結実した。
燃焼の探求はさらに続いた。「煙は上へと向かう。この流れを邪魔してストーブ内に対流を起こせば、内部での燃焼が続き、より高温で効率のいい燃焼ができる」。煙が出ない薪ストーブの開発に没頭し、昭和63年には発売にこぎつけた。
この技術が日、米、独で特許を取得した「茂木プレート」。穴を空けた金属板をストーブ内部に設置し、高温での燃焼と対流を起こす。単にプレートを設置するだけではだめで、ストーブ内部の構造に最適なノウハウが完全燃焼を実現させるが、これは企業秘密だ。
製品は今や、大型の定番タイプからオーブン機能を持たせたクッキングストーブ、ドイツの自動車メーカーなどで活躍した国際的な工業デザイナーとのコラボで開発したスタイリッシュでコンパクトなタイプまで、さまざまなラインアップをそろえる。
いずれの機種も、800度の高温燃焼を実現し、薪を選ばずに完全に燃やしきるため、灰の排出は月に1回だけと手間がいらない。さらに煙突から出る排気も、1時間当たり0・77~2・1グラムのダスト流量を実現し、厳しい欧米の環境基準も軽々とクリアする。「うちは世界最後発の薪ストーブメーカーだから、他と同じことをやっていてはだめ」と、現在も最適な燃焼効率を実現するため、実験を繰り返す。
揺れる炎を見ながらくつろげる薪ストーブは今、ブームとなっているが、煙が近所とのトラブルを生むことも多い。しかし、無煙なら都会でも気兼ねなく使える。「おかげさまで引き合いも多い」と豪快に笑うが、常識にとらわれない発想と研究の積み重ねがあってこその結果だ。
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