ゆう@子育てパパ

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筆記具大手のゼブラが昨年8月に発売した蛍光ペン「ジャストフィット」の売れ行きが好調だ。ペン先に従来品よりも柔らかい素材を使ったことで、軽い力でペン先がしなり、参考書などの厚い本の曲面でもきれいな線が引ける点が評価されている。売り上げは当初計画を2割上回る水準で推移している。
「モノづくりの楽しさが伝わるような何か新しい価値の創造ができないか」
ジャストフィットの開発は、平成25年春に行われた商品アイデアを募る社内コンペに応募しようと、チームを組んだ研究開発部開発研究課の20~30代の女性研究員3人のこんな問いかけから始まった。
■社内コンペで準グランプリ
普段、商品を提案する立場にはない若手研究員にとって社内コンペはアイデアを売り込むチャンス。仕事帰りに会社近くのファミリーレストランなどで作戦会議を開き、何度も話し合いを重ねた。
「学生時代、蛍光ペンで同じ太さの線を引くのが下手だった」。ある日、3人のうちの1人、中村奈緒子さんが自らの体験を漏らすと、まとめ役の副島絵里子さんも「とくに単語帳などの厚い本の曲面は難しい」と、蛍光ペンに対する使用感の不満を指摘。これをきっかけに、不満の解決策を話し合ううちに毛筆タイプの「筆ペン」を参考とした「しなる蛍光ペン」のアイデアが生まれた。
しなる蛍光ペンは、社内コンペで集まった約550のアイデアの中で斬新さなどが評価されて準グランプリを受賞した。だが、この段階では商品化は決まっていなかった。商品化は研究開発部の課長の機転が決め手となった。
「熱が冷めないうちに早く形にしなければアイデアで終わってしまう」。こう考えた課長は、協力企業の加工会社とこっそり試作品づくりに着手。蛍光ペンのペン先には、固くて加工しやすい通常のポリエチレンやアクリルではなく、柔らかいナイロンを使った。ナイロンはアイラインの線を書く際に使う化粧品「アイライナー」などに使用される素材だ。先輩研究員として培った経験を生かした。
後日、会社で試作品を見た副島さんらは「イメージしていたのは、まさにこれ」と喜ぶと同時に「スピード感に驚いた」という。 この試作品が社内を動かした。上層部は「実現性が高い。熱意もある」と判断し、グランプリ作品を差し置いて商品化が決定。副島さんら3人がそのまま商品開発の担当となった。
■機転利かせた課長の「スピード感」
商品化に際し、苦労したのはペン先の形状だ。書き出しから書き終わりまで同じ太さの線を書けるようにするには、ペン先が紙にぴったり密着しないといけない。そのためにはペン先を細くする必要がある。課長が探り当ててくれた柔らかいナイロンは加工しにくい難点があった。
試行錯誤の末、3人はペン先の先端に近づくにつれて薄くなっていく独特のはけ状の形にたどりついた。従来の蛍光ペンのペン先は台形状で厚みがあるが、これとは全く異なる形状だ。実際に取り入れてみると、はけ状タイプのペン先は、紙との「接地面積」が従来品の2倍となり、曲面でも真っすぐ線を引けように改善された。
販売では、湾曲した試し書き用紙を用意し、使い心地を実感してもらうことに力を入れた。業界初のしなるペン先の良さは「使ってみないとわからない」からだ。
オフィスのIT化が進んでも、印刷した紙に目印を付けたいというニーズは根強い。価格を108円に抑えたこともあり、学生を中心に支持が広がった。「受験シーズン本番を迎え、今後も堅調な伸びが期待できそうだ」(営業業務企画部国内企画課の増田由佳さん)という。(佐藤克史)
■ジャストフィット 1本に2つのペン先を備えた太細両用の蛍光ペン。太用のペン先は3.5~4ミリメートルで、細用は1.2ミリメートル。細用のペン先はしなる構造にはなっていない。商品を幅広く浸透させることを狙い、インクの色はオレンジ、ピンク、黄、緑、青の5種類をそろえた。
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