ゆう@子育てパパ

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■視覚障害者向け図形認識機器開発
障害があっても学び続けられる社会を目指したい-。21日に行われた富山大学位記授与式には、全盲の鈴木淳也さん(47)=横浜市=と、守井清吾(しんご)さん(30)=高岡市中保=の2人も出席し、工学博士号を取得した。同大によると、全盲の工学博士は全国で1人しかいなかったという。2人はいずれも視覚障害者が図形を認識するための機器を開発。同じ研究室で実験を重ね、高め合ってきた2人は、今後も障害者の学びの環境づくりを担おうと決意した。
幼少期に視力を失った鈴木さんと守井さんは、それぞれ2009年、11年に富山大の障害者特別選抜入学制度を利用し大学院に入学した。21日は共に同大大学院生命融合科学教育部の博士号を授与された。
鈴木さんは東京都内のソニーで音響エンジニアとして働きながら、1カ月に1度ほど大学院に通い、理系教育の支援機器を開発してきた。視覚障害がハンディとなり、若いころに工学系の大学進学を諦めた経験が強い動機になっているという。
近年はIT機器が発達し、文字情報は音声や点字に変換できる環境が整いつつある。ただ、図形やグラフを認識したり、実験に使ったりすることはいまだに難しい。鈴木さんは「視覚障害者が理系の大学に進学するのはわずか。自分が壁を打ち破りたかった」。博士課程では、箱の中に小型スピーカー64個を並べ、時間をずらして鳴る音の組み合わせで、図形を認識できる機器を生み出した。
一方、守井さんは県立盲学校を卒業後、3浪した後に富山大教育学部(現・人間発達科学部)に入学した。全盲者が国公立大の一般入試で合格したのは二十数年ぶりだった。幼少時から教員になるのが夢で、09年には同大大学院の数学教育の修士課程に進学。だが、同年に博士課程に入った鈴木さんと出会い、障害者が学びやすい環境づくりを目指すことが使命と思うようになった。
「プログラミングしたり、自製のはんだごてで機器を作ったりする鈴木さんに接し、視覚障害者でも工学ができることに驚いた」と守井さん。教員資格を持つ自らの強みを生かし、ものづくりの立場から視覚障害への教育支援ができるのではないか-。そう思い、修士課程の後、工学の博士課程に進むことを決意。進学後は鈴木さんから何度もアドバイスを受けながら、指で描いた図形や文字を視覚障害者用のディスプレーに再現する仕組みを考案した。
21日の式典の後、近くのホテルで工学系の学生らの祝賀会が開かれた。2人は学位記を手に「長かったですね」と博士号取得を喜び合った。深夜まで実験室にこもったり、明け方まで酒をくみ交わしたりした日もあったという。
引き続きソニーで働くという鈴木さんは「守井さんのおかげで、若い頃にできなかった学生生活をおう歌できた」。守井さんは4月から富山大工学部の協力研究員として、考案した機器の実用化を進めるという。「障害によって夢を諦めなきゃいけない社会をなくしたい」と意気込んだ。
北日本新聞社