ゆう@子育てパパ

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東京電力福島第1原発事故から間もなく千日を迎えようとしている。今なお、14万人以上の福島県民が避難生活を余儀なくされ、原発から約60キロ離れた県都・福島市でも市民約6千人が市外に自主避難している。汚染水問題に揺れる中、第1原発では核燃料の取り出しが始まり、廃炉に向けた作業がようやく緒に就いた形だが、肝心の除染や住民の帰還など、課題は山積している。
先の見えない状況が続く中、先日、青森市内で避難生活を送っている人たちと懇談する機会があった。住民は異口同音に国、政府に対する対応の遅れや遅々として進まない除染への強い不満、さらにはマスコミに対する不信感も吐露した。
「みんな東京五輪開催で沸いているが、被災住民はそれどころじゃない。除染をして一刻も早く故郷に帰してほしい」「『おもてなし』と耳に心地よい言葉で五輪を誘致したって、私たちにはおもてなしをする余裕なんてない。それは東京だけの話」「安倍首相は『状況はコントロールされている。東京は福島から離れている』と言ったのには耳を疑った。逆を言えば福島は危険だということを世界に伝えたことになるのではないか」「今後は7年後をにらんで東京は五輪関連の建設ラッシュになると思うが、被災地に手が回らないのではないかと心配」。不信、不満の矛先は報道にも向けられた。「マスコミは表面上のことしか伝えない。もっと掘り下げて『現実』『今』の声を伝えてほしい」
当然のことながら報道に携わる者は発表だけでなく、現場の声を吸い上げて現実を報道しなければならない。駆け出しのころ、先輩記者から「足で稼げ」とよく言われたものだ。少なくともそうしてきたつもりだが、ややもすると安易に発表に頼るという、手抜きになってはいなかったか、反省すべき点は多々あった。こうした切実な声を聞くと、わずか1年とはいえ福島県に勤務し、原発事故に翻弄されてきた住民の現実を見てきた自分にとって、被災地から離れた立場から何を伝えるべきなのか、被災者に対して何ができるのかということを突き付けられている気がした。
青森県も原発関連施設が数多く存在し、県は六ケ所村の核燃料サイクル施設を運営する日本原燃と東通村の東通原発を運転する東北電力に核燃料税を課している。民主党政権時の昨年度の更新では、原子力政策が流動的だったため、課税期間を2年としていたが、安倍政権が核燃料サイクルの継続を明言したため、以前の5年に戻す条例案を開会中の定例県議会に提案した。県によると、5年間で県に入る税収は900億円以上だという。県はこれを原資に、さまざまな地域振興策などを進めている。
県税収入の少ない“貧乏県”にとっては貴重な財源だが、青森県内で避難生活を送っている人たちにはこの核燃税に覚えるという。「青森県の人たちに聞くと『事故は起きないから』と言う。私たちもそう思ってきたが、現実は起きた。金をもらっているから仕方ない、ではいけないと思う。もっと行政も県民も原発問題を真剣に考えるべきだと思う」という。
確かにそうかもしれない。ただ、直ちに国内の全原発を廃炉にした場合、天文学的な費用がかかるのは言うまでもないし、廃炉研究にも相当の時間と専門家を養成しなければならないのは自明の理。「即原発ゼロ」と口で言うのは簡単だが、今ある原発をどうするのか、代替エネルギーをいつまでに、どの程度まで引き上げるのかといった肝心な議論をおざなりにして声高に叫ぶだけではそれこそ無責任のそしりは免れない。現実問題として原発が存在する限り今、大事なのはいかに安全性を向上させていくかということに尽きるのではないかと思う。
避難者の1人は言った。「国も原発推進なら推進で避難している私たちの生活を今後どうするのかを示してほしいし、ゼロならゼロでエネルギー政策をどうするのか打ち出すべき。今の状態は蛇の生殺し。早く方向性を示してほしい」
こうした生の声に答を出すためにも責任あるエネルギー政策を真剣に考える時期が来ている。(福田徳行)
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