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最後まで決まらなかった意見は「厳重処分」だった。大阪市立桜宮高バスケット部主将の男子生徒=当時(17)=が自殺した問題で22日、顧問だった元教諭(47)が傷害と暴行容疑で書類送検された。大阪府警が捜査に費やした時間は2カ月半。後悔と反省をにじませる元教諭、懲戒免職という社会的制裁、先生をかばう多くの生徒…。教育現場への影響も含め、ぎりぎりの判断を迫られた捜査幹部が最後に重視したのは、けがを負わせるほど繰り返し行われた体罰という「事実」だった。
「警察沙汰にはしないでほしい」。昨年12月23日に生徒が自殺した直後、遺族はこんな意向を示したという。だが、生徒への体罰の実態が徐々に明らかになり、1月8日に大阪市教委が一連の事実を公表してから事態は一変する。
当初は遺族の意向に沿って粛々と事実確認を続けていた府警は、捜査1課の捜査員を同校がある都島署に派遣、捜査に乗り出した。ただ、「この時点では立件を前提にしていなかった」(捜査幹部)。
しかし、元教諭への処罰感情を高めた遺族は1月23日に告訴状を提出。これを受け、府警は関係者からの事情聴取を本格化させ、部員からは練習試合での体罰のほか、過去の状況も詳細に聞き取った。体罰の存在を認めつつ、「先生だけが悪くない」と元教諭をかばう生徒も多かったという。
府警が捜査で力点を置いたのは、暴行の「事実」の確認と元教諭からの事情聴取だった。2月13日に元教諭の暴力を自殺の一因とする報告書を公表した市の外部監察チームが元教諭から聞き取りをしたのはわずか2回だけだった。
「元教諭には『言いたいことを全部言ってほしい』と伝え、かなりの時間をかけて事情を聴いた」
捜査幹部が話すように、元教諭の聴取は1日5~6時間、十数日かけて行い、計約100時間に上った。「体罰なのか暴行なのか」「生徒への悪意はなかったのか」。体罰をふるったときの状況だけでなく、指導理念なども詳しく聴くためだった。
「当時は指導だと思っていたが間違っていた」。元教諭は事情聴取にうなだれた様子でこう話したという。捜査幹部は長時間の聴取から、「体罰は指導の一つという考えが一貫してあった」と感じた。
結局、捜査で積み上げた事実は、「指導」と看過できるものではなかった。それでも、捜査幹部を最後まで悩ませたのは処分意見だった。起訴を求める「厳重処分」なのか、刑事責任を問う余地はあるとする「相当処分」なのか。
議論はぎりぎりまで続き、処分意見が正式に決まったのは書類送検の3日前の19日だった。捜査幹部はいう。「処分ありきの捜査ではなかったが、事実だけを冷静に見つめた結果だ。元教諭は『教育者』として優れた面を持っていた。いい加減で適当な先生ではなく、本当に熱血先生だった。ただ、熱血の方法が間違っていたのだろう」。
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