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ほしい品物のバーコードにスマートフォンのカメラをかざすことから、「買い物」が始まる。インターネット上に無数にある通販サイトの商品価格を横断検索するソフト「価格比較アプリ」。主にパソコンで使う「価格コム」など比較サイトの高機能携帯電話版だ。
川崎市高津区の会社員、宗貞義朗さん(33)は週末、量販店でスマートフォンの価格比較アプリ「ショッピッ!」を使い、パン焼き器を品定めしていた。
「以前は店頭の値札しか情報がなかったが、アプリで店頭価格が安いことが確認できれば、安心して買える。ネットのほうが安ければ通販で買うこともある」
電子商取引の世界最大手、アマゾンや日本の楽天、ヤフーの公式アプリもバーコード読み取りに対応している。ショッピッ!の開発会社「コードスタート」の中井智紀さん(29)は「バーコードをピッと読み取る手軽さで、米国ではすでに4千万人が使っている。うちのアプリも74万人が利用しており、普及は進むだろう」と話す。
「オンライン・ツー・オフライン(O2O)」。8兆5千億円市場へ成長した電子商取引の場で、この言葉が語られている。
インターネット上で商品のクーポン券を配り、実店舗で使ってもらうといった「ネットから実生活へ」の動線を指す言葉だったが、最近は逆に「実生活からネットへ」の方向も活発化してきた。
ヤフーが始めたサービスは、テレビで放送中の番組名を検索すると番組で紹介された商品が表示され、さらにヤフーの通販サイトなどへ誘導する。商品情報を提供するのは「エム・データ」という会社。同社の田口博康さん(29)は「水戸市に100人規模のオフィスがあり、三大都市圏の地上波放送を全て人力でチェックして放送の10分後には提供している」と話す。
視聴者がテレビを見ている最中や直後に購入ページへ誘導することで、売り上げが10倍、20倍増えるという。逆に言えば電子商取引でも依然、テレビの影響力が大きいことが分かる。
広告代理店のDACが昨年、千人に行った調査で、テレビを見ながらスマートフォンを使っている人は35%。8兆円市場の1割はすでにスマートフォン経由といわれ、ネットと実生活はますます融合していく。
家電量販業界でO2Oを引き起こしている価格比較アプリについて、ケーズデンキの遠藤裕之社長(61)は「うちは値段だけでなく接客や商品知識、アフターサービスなどを大切にしている」と語る。一方、コジマの販促担当者は「家電はどこも商品が同じなので、これが普及すると商売の意味が根幹から崩れてくる。危険なアプリですね」と戸惑いを隠さなかった。
ヨドバシカメラは8月、バーコード読み取り機能のついた公式アプリを公開し、今月からは全21店の全商品に「バーコードご利用ください」と掲示した。バーコードを読み取るとヨドバシの通販サイトへ誘導され、詳しい商品情報や実店舗の在庫状況が見られる。
藤沢和則副社長(46)は「今、すごく多いのがネットで下調べしてから買い物に来るお客さん。逆に、店へ来てスマホでメーカーの商品情報を見ている方も多い。そんなとき、できればうちのサイトを見てほしいし、そこで買ってもらえればなおよい。ネットで見て店で買う、店で見てネットで買う。このO2Oのループをうまく回せるようにしたい」と話す。
藤沢さんが手にする黒いアイフォーンには、ショッピッ!をはじめ4種類の価格比較アプリが研究用にと入れられていた。
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