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日本政府が打ち出した、2030年代に「原発ゼロ」を目指すエネルギー・環境戦略の国外での評判が芳しくない。米有名紙の社説では、原発をなくすことで地球温暖化への歯止めがきかなくなると批判されており、ウィーンで開かれていた国際原子力機関(IAEA)の総会でも、十分な理解が得られなかったようだ。
■米ワシントン・ポスト紙が社説で批判
政府は2012年9月14日の「エネルギー・環境会議」(議長・古川元久国家戦略担当相)で、「2030年代に原発ゼロを可能とする」ことを骨子とした「革新的エネルギー・環境戦略」を決めた。国外ではこれに厳しい論評が目立った。
例えば9月17日には、米ワシントン・ポスト紙が社説で「日本の『原発ゼロ』の夢」と題した社説を掲載している。社説では、国内の大半の原発が止まったことで、「電力不足と石油と天然ガス価格の急騰」がもたらされたと指摘。それ以外にも、貿易黒字が赤字に転落した、二酸化炭素の排出が増える前兆が見える、とした。
その一方で、今回の方針は選挙対策のレトリックに過ぎず、実際には「原発ゼロ」にならない可能性にも言及しており、社説は
「もしそうであるならば、日本国民は『踊らされていた』と感じるだろう」]
と指摘している。
民主党の政策のちぐはぐさを指摘する声もある。英フィナンシャル・タイムズ紙は9月19日の記事で、同日の閣議決定で「原発ゼロ」の方針が盛り込まれなかったことについて触れており、
「原発賛成派も反対派も、財界の反対を受けて政府が方針を後退させたと受け止めている」
と論評している。その上で、やはりワシントン・ポストと同様、
「不人気な与党の民主党は、13年早々に有権者の審判を仰ぐとみられており、「原発ゼロ」宣言は、きちんとした政治公約というよりも、選挙を控えた策略なのではないかと見る向きある」と指摘している。
■脱原発後のプルトニウムの行方に懸念
9月21日までウィーンで行われていたIAEAの総会では、初めて全加盟国向けに脱原発路線への理解を求めた。だが、IAEAの天野之弥事務局長は脱原発後のプルトニウムの行方について懸念を示した。米国も同様の理由で脱原発には否定的で、核防護の観点からの説明が求められることになりそうだ。
9月22日の東京新聞は、「エネルギー・環境会議」の「原発ゼロ」の方針が、閣議決定ではやや後退した形になった背景について、「米国の強い要求」があったという記事を掲載した。同紙によると、米国側は、「日本の核技術の衰退は、米国の原子力産業にも悪影響を与える」「再処理施設を稼働し続けたまま原発ゼロになるなら、プルトニウムが日本国内に蓄積され、軍事転用が可能な状況を生んでしまう」などと指摘。再三、米側の「国益」に反すると強調したという。
なお、日本が原発の輸出を目指していたり、すでに輸出を決めたりしているリトアニア、ベトナム、フィンランドといった国々は、まだ日本の脱原発路線に対する態度を明らかにしていない。
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