東京・丸の内工場産 レタス・・・、こんな感じでスーパーとかに並ぶ日は近い。(#^.^#)









 光や温度などを人工的に制御して野菜などを生産する「植物工場」に、企業が熱い視線を注いでいる。日照や降水量に左右されない安定感から、異業種が参入しやすく、一方土壌汚染の影響を受けない特性が買われ、東日本大震災からの農業復興にも利用され始めている。成長事業としての地歩を固めつつある。



 オフィスビルが立ち並ぶ、東京・丸の内の「丸ビル」地下1階。店舗中央にあるガラス張りの空間で、蛍光灯に照らされたフリルレタスが収穫期を迎えていた。サンドイッチチェーンを展開する日本サブウェイが開いた植物工場併設型の店舗「野菜ラボ」。フリルレタスは店内で調理・販売されるサンドイッチの具材として使われる。



 同社は昨年、台風の影響で、レタスの確保に苦労した経験を持ち、「安定品質の商品を安定価格で調達する難しさを改めて痛感した」(マーケティング本部)。栽培されたレタスは、店舗消費量の5%程度だが、植物工場のレタスは芯が細く、廃棄部分が少ないため、将来的な採算は可能と見込む。



 農林水産省によると、2009年に全国で約50カ所だった植物工場は、12年3月には127カ所まで増加。これまで農作物栽培に縁のなかった業種も触手を伸ばし始めている。パナソニックは三井不動産などと共同で、レタスやハーブ類を栽培する家庭用植物工場の実験を始めるほか、豊田通商はグループ企業の農業生産法人でパプリカを育てる。近畿日本鉄道、阪神電気鉄道などの電鉄各社もグループの流通網などを生かしたレタス栽培に乗り出す。



 参入が相次ぐ背景には、地方工場の海外移転や規模縮小で、雇用面などで新たな事業が必要になった企業側の事情が重なる。現在は生産性が低くとも、物流や販売などの整備で成長余地のある農業は有望な次世代産業。自然相手だった従来の農業は、プロの経験が頼りだったが、植物工場ならばコンピューターなどで光や温湿度を制御できるため、異業種参入のハードルが下がった。



 政府も農商工連携のシンボルとして、09年度から参入の際の初期投資を本格支援。矢野経済研究所によると、植物工場で作られるレタス類の市場規模は、08年度の約28億円から15年度に112億円、20年度には288億円に拡大すると試算する。



 新たな展開も生まれた。植物工場で野菜の製造を手がけるグランパファーム(横浜市)は津波で農地がダメージを受けた岩手県陸前高田市に、工場ドームを8棟建設。8月からフリルレタスなどを出荷する。毎日収穫される約3600株は、イオンや生協、地元スーパーが引き受ける。



 従業員は被災者も含め、地元から22人を採用、地域雇用にも一役買う。植物工場ならば、海水につかった農地の再開にかかる手間と時間を軽減できる上、土壌を使わないことで風評被害も最小限に抑えられるため、地元も「被災農家の復興に向けた有力な選択肢になりうる」(陸前高田市)と期待する。



 一方、植物工場の浸透には、克服すべき課題は多い。たとえば新規参入企業が工場を建てる際、工場を建築物とするか農業生産設備とみなすかは自治体によって解釈が分かれ、建築物とみなされれば、農地には建てられない。



 三菱総合研究所の伊藤保主任研究員は「農業と工業のハイブリッド産業である植物工場は、その“二重国籍”ゆえ、行政上のエアポケットに陥りやすい」と指摘する。採算的にも、太陽光代わりの照明や空調設備にかかるコストがかさみ、価格面で露地野菜に及ばないのがネックだ。価格競争力を維持するため、栽培する作物も現状は、生育期間の短い葉物野菜や、国内で競合の少ないパプリカなどに限られる。



 それでも、外食産業などにとって、安定供給のメリットは大きい。コスト面も「カット工場の併設などで、物流コストを削減できる」(日本サブウェイ)ほか、参入した企業が、栽培ノウハウを会得して収益を高める余地も残されている。農業の成長産業化に向けた期待を集める植物工場。商工分野とどれだけ融合できるかが、今後の市場拡大の成否をにぎりそうだ。(佐久間修志)