日系半導体メーカーの凋落が著しい。NECと日立製作所が設立し、その後に三菱電機が合流したエルピーダメモリは会社更生手続き中。同じ3社が母体のルネサスエレクトロニクスも経営不振にあえぐ。
半導体は“産業のコメ”と呼ばれ1980年代は日本経済を牽引(けんいん)した。あまりにも強すぎるため、「日米半導体摩擦」まで引き起こしたが、今やその面影はない。
低迷の原因はいくつも挙げられるが、「開発から生産まで手掛ける垂直統合モデルにこだわった」「リストラが遅れた」などと分析されることが多い。だが、経済産業省のある幹部は「顧客である日本企業のデジタル家電の不振が響いた」と嘆く。
80年代は、テレビをはじめとする家電製品は日本企業の独壇場だった。このため、家電と二人三脚で開発を進めた半導体も「黙っていても売れた」(関係者)という。
しかし、デジタル時代が本格的に到来すると、日本の家電が急速に競争力を失った。ブラウン管テレビで栄華を極めた日系メーカーだが、薄型テレビの普及で韓国サムスン電子などにシェアを奪われた。なかでも存在感が薄いのがスマートフォン(高機能携帯電話)を中心とする携帯電話。通信会社が買い取る商慣習があだとなり、日本企業は国際化で出遅れた。日系の世界シェアは合計でも数%にすぎない。
日本企業の不振を尻目に、サムスンは自社のスマホやテレビなどの成長に合わせて半導体の売り上げを伸ばした。米インテルも、ソフトウエア大手の米マイクロソフトと組みパソコン向け半導体のシェア拡大に成功した。エルピーダは、米マイクロン・テクノロジーの傘下で再出発する見通し。ルネサスも大胆なリストラで再建を目指す。だが、顧客のデジタル家電の不振が続くなかでは、“日の丸半導体”復活の道のりも険しい。(大柳聡庸)
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