名物誕生 となればイイですね。(#^.^#)
















 6月上旬、西日本有数の総合大学である徳島文理大学に招かれ、香川キャンパスで開催する公開講座でワインの話をする機会を得ました。きっかけは、やはり「ワイン」。実は、さぬき市に位置する同大学のすぐ近くには、四国でただ一つのワイナリーである「さぬきワイナリー」があります。大学ではこちらに委託してオリジナルラベルのワインを造っており、某所でお会いした同大学の村崎理事長から紅白ワインを頂戴したことが始まりでした。赤ワインには日本では珍しいイタリアの土着品種「ランブルスコ」が使われていて、予想を超えておいしく驚きました。



 日本ではブドウ品種名を冠した白ワインでは「甲州」、赤では「マスカットベリーA」を使ったワインが多く、これらは高温多湿な日本の気候でも病気にかかりにくく比較的安定して収穫できる品種です。一方で、われわれが輸入ワインで目にする「シャルドネ」や「カベルネ・ソーヴィニヨン」などはヨーロッパ系のブドウ品種。醸造用ブドウとしては一級品ですが、日本の気候風土ではごく限られた地域でしかいいものができない難しい品種です。「ランブルスコ」もヨーロッパ系のブドウ品種の一つです。



 さて当日は、学生と教職員、地域市民の方々350人に向け第一部講演、第2部にさぬきワインサポーターズ倶楽部の中村代表と同大学の桐野学長、わたしの3者による討論会を行ないました。終了後には、さぬきワイナリーと同大学が開発中のノンアルコールワインを試飲するという盛沢山の内容でした。ワイナリーへは翌日に訪問し、ワイナリーの社長を兼務するさぬき市の大山市長にも会うことができました。



 さぬきワイナリーが位置する大串半島からは瀬戸内海が一望でき、大小の船舶が眼下を行き交う大パノラマのもとワインを味わうことができます。大串半島にはワイナリーを取り巻くように温泉、宿泊、野外コンサートホール、物販飲食ができる観光施設があり、大山市長からは地域の活性化を図る今後の展望についても話を聞くことができました。



 工場長の竹中氏からは、現在さぬきワイナリーが力を入れる2つのワインについて聞きました。1つ目は、わたしも試飲した「ランブルスコ」を100%使った赤ワイン。これは設立を機に複数種のヨーロッパ系ブドウを試験栽培した際に根付き、良く実ったことで選んだそうです(逆に他のブドウはうまく育たなかったとのこと)。



 ただし課題はあります。現在、ランブルスコを栽培する農家はわずか3軒。生産量は720mlのフルボトルで3000本程度しかなく、栽培者の高齢化と後継者問題を抱えています。これは日本中のワイナリーが直面する問題でもあります。技術の習得が必要で労働条件も厳しいブドウ栽培に従事する若者がなかなかいないのが現状です。



 そして2つ目が、香川大学が開発した「香大農R-1」という交配品種を使ったワイン。香川県を含む西南地域では、ブドウの着色期が真夏と重なることで、猛暑がブドウ果皮の着色不良を招いてしまいます。そこで、高温でも着色が良好なブドウ品種の開発を試み、沖縄に自生する野生ブドウとマスカット・オブ・アレキサンドリアを交配して選抜。



 新しいブドウ品種の作出に成功しました。特徴は色調が濃いこと、身体に良いポリフェノール類が「カベルネ・ソーヴィニヨン」などのワインよりも2倍程度多く含まれます。また、色調は濃いものの、日本人に受け入れられにくい「渋み」が少なくなっています。



 試飲した率直な感想では、後味に残る酸味がきつく、バランスに欠くところがあるものの、全体的なハーモニーを取ることができれば他にないワインになる可能性を感じます。渋みが少ない分、日本食にも合わせやすいかもしれません。現在のブランド名をもっと分かりやすく呼びやすいものにして、ラベルにカタカナ表記を加え、ポリフェノール成分を多く含むなど特徴を明確に打ち出すとよいかもしれません。



 現在は、フルボトル7000本ほどの生産量に限られ、全国に流通するまでの数量はありませんが、今年からワイナリーの体制を一新し、精力的に改革に取り組むと聞きました。さぬきワイナリーの今後の躍進を期待しています。【松浦尚子】



(ITmedia エグゼクティブ)