2021年8月7日


ホテルに着いてからはお弁当を食べて

すぐに寝た。

少し疲れていたこともあり、

8月6日の夜は直ぐに眠れた。


そして朝のアナウンスで目が覚める。


体温と血中濃度を図り、

看護師さんからの電話を待つ。


この電話は何時に来るかわからず、

私の場合は10時半頃にかかってくる感じだ。


8時にお弁当を取りに行く。


廊下を歩いていると、

ゴホゴホと咳き込む声や、

自身のお子さんだろうか、

赤ちゃんの鳴き声(多分電話越し)が

部屋から聞こえてきた。


みんな頑張っているんだな。


扉の向こうの人たちと会うことも

話すことも絶対にないのだが、

少しだけ1人じゃないことに安心した。



お弁当は美味しくて、

暖かいお味噌汁と一緒に食べた。


他にも生活用品など準備されていて

必要なものだけもらって

部屋にセッティングした。



基本的にクーラーがずっとついていて、

これが操作できずに寒かった。


主人から借りたパーカーをはおり、

お布団の中でボーとした。


やっぱり涙が止まらなかった。



私はふと、海外にいる親友を思い出した。


10年来の親友。


私のことを絶対否定しない。


私を好きと言ってくれる唯一無二の親友。



私は時差を気にしながら、

彼女に電話した。


以下Bとする。




「もしもし」


「もしもし〜、私ちゃん久しぶり」


Bの声は久しぶりで

お互い「そんな声だったっけ?笑」と

笑いあった。


「どうしたの?いきなり電話って」


「あのね、Bちゃんにしか話せなくて…」


私は自分がコロナにかかったこと、

かかった経緯、今の気持ちを

ひたすらBにぶつけた。


「コロナになったことはそこまで大変じゃなくて、有難いことに無症状だし。

でもさ、この後私どうやって私がコロナ感染したことを知ってる人と会えばいいんだろう。

コロナが治ったあとの方が怖い。

みんな私の事コロナ感染者って目で見るんでしょ。

みんな頑張ってんのにこいつコロナかかりやがってって。

どうせ遊んでたんでしょって。

それが怖い。」


「うん、うん」


Bはずっと話を聞いてくれた。


「こんな話されても困るよね、ごめんね」


私が全て話し終わるとBは、


「日本語久しぶりだから、

変な言い方になるかもしれないけど、


きっと誰もそんなに私ちゃんに興味無いよ


Bの日本語は、日本にいた時から変わっていなかった。


ただ、私の心にはストンと落ちた言葉だった。


「私ちゃんだって、職場の人とかがコロナなって帰ってきたって、そんな何にも思わないでしょ?

案外他人って自分に興味無いよ」


Bの言葉一見冷たく見えるが、口調は優しく、私を励ましてくれていることが真摯に伝わってきた。


「私も悩んでて、数年海外にいるけど、英語が上達しなくて、仕事でお客さんに嫌なこと言われたりするんだよね。

でも、そんな時は、その人は数分後に私の事なんて忘れて、また数日後にはうちのお店に来るんだって、その人にとっては私が英語上手く話せないことなんて、どうでもいいんだって、思うようにしてる」



私はBの成長に驚いた。


昔のBは本当にネガティブで、

落ち始めたら底無しに落ちて言っちゃう子だった。


そんな彼女がネガティブながらにも

必死にポジティブに考えていることに

感動さえ覚えた。



状況が少し似ている。


お互いマイノリティに苦しんでいる。


だからこそ、

Bの言葉に私は少し前向きになれた。



「Bちゃん本当にありがとう。

頑張るよ私。Bちゃんも頑張ってね」


「うんうん。

私もコロナ落ち着いたらそっち帰るし、

その時は会おうね」


私たちはしばらく雑談したあと、電話を切った。



私は自分が、周りの人間に恵まれ、

支えられていることを再度認識した。


コロナ感染で忘れてしまっていた、

私の周りの人達への感謝を思い出した。