『 母が暮れた夏 』
母が暮れた夏
色のない花火を見ていた
いくつもの黄昏を昇ってゆく
やけに澄んだ真空の大輪
私はひとり
世界の中心に在ることを
忘れ
この世の果てを彷徨っていた
夜空に咲いた手向けの花束
モノクロの
こころで止まった記憶の写真
誰かに
見つけて欲しかったんだ
まだ
迷子だったあの頃のように
母の手が
そっと迎えに来てくれるのを
泣きながら待っていたんだよ
もう叶わないんだね
ポロポロと
星のような涙が
この青の地に堕ちた
それは
どこまでも深く滲みわたり
地球の反対側から
再び夜空へと還っていった
天高く
何もかもが
エンドロールをくり返していた
すべての
積まれた意図が崩れる
その瞬間
私という現象の嘘は暴かれ
唯一見つめる意識だけが
残されていた
どれほどの時が過ぎただろう
すでに
闇は消えていて癒えていた
思い込みだけが
ただ頑なにあったと
私の幻を伝えていた
両の手に
ひかりと闇とを会わせて
祈りが生まれた
それは
あらゆる色彩の束ね
ひとつの輝きへと収束し
花束をほどき
私をほどいて
ひかりのリースへと編み込まれた
今夜
誰にも知られずに
そっと空に捧げゆく
お母さん
ちっちゃな私を見つけてくれて
ありがとう
母が暮れた夏
色のないすべての色の
花を見つけた
ありがとう

『 free hug! 』ヽ(^。^)丿
今日も出会ってくれて、ありがとう!