『 無かった幻 』
聞かせてほしい
人間の愚かさ
醜さって
どういうもの
教えてほしい
それは
何処からやってきて
いま
どうしているの
疑ってほしい
人間が
勝手に後づけしたもの
都合よく
解釈したもの
きっと
はじめからは
無かったもの
流れない雲はなく
あがらない雨も
沈まない太陽もない
いま
この瞬間以外に
常なるものは
何もない
何のために
手にしてたのか
分からなくなってる
青いナイフ
ずっと自分に
向けられていた
声にならない叫び
誰かに向かうための
愚かさ醜さではなく
気づきの刃は
自身へ向かう光の陰
つけたくなかった
仮面をかぶって
ありのままのこころ
装って
幾重にも
塗り重ねられた笑顔
引き摺って
誰から何を
守ろうとしていたのだろう
頑なに信じてきた
思いを
ゆるめて
そっと温める
ほころんだ先から
ふたつの白翼で
ぎゅっと
抱きしめる
それが
ひとりじゃないから
きっと
大丈夫って思える
繋がる糸を
辿ってゆけば
そこにもやっぱり
似たような私がいて
本来の
何もなかったところまで
一緒に
連れていってくれる
もう
追わなくていい
背負わなくていい
はじめから
持ち物リストには
無かった幻
ありがとう
今日も出会ってくれて、ありがとう!