江戸七不思議①ー霊厳島・馬喰町ー | 徒然探訪録

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江戸の七不思議では、本所が最も有名ですが、この他にも霊厳島、馬喰町、八丁堀、築地、深川、千住、番町などにも七不思議と言われるものがあるようです。それぞれの土地柄が七不思議の特色となっているところも見受けられ、興味深いものがありました。

①霊厳島の七不思議
七不思議といっても七つにはとどまりません。時代ごとに変遷もあるようです。これは他地の七不思議にも言えることでした。

霊厳島の七不思議と言われているものは以下です。

■辻番あれど戸があかず
■真木屋といっても蕎麦屋
■坂の下にあっても坂の上
■花屋といっても材木屋
■茶釜の当地に酒問屋
■寺があっても墓がない
■児供の顔も孫杓子
■落雷なし
■南天木実つくことなし
■白銀町に糊屋という銭湯あり
■箱崎町の金毘羅の縁日が九日で十日でないこと
■圓覚寺の薬師は七月十一日が縁日であること

寺社に関するもの、家名と実際の職業が合わないことが多いのが、霊厳島の七不思議の特徴だと言えるでしょう。

霊厳島の由来ですが、寛永元年(1624)、下総国生実の浄土宗善昌寺の僧、霊厳がここを埋め立て、霊厳寺を建立したことによるそうです。明暦の大火で霊厳寺が深川に移転し、その後町屋が多くなりました。瀬戸物や酒の問屋が多かったそうですが、七不思議にも『茶釜の当地に酒問屋』とあり、地域性が現れています。

また『辻番あれど戸が開かず』というのがありますが、こちらは赤穂浪士の話と結び付けられて伝えられています。

この『開かずの辻番所』は松平越前守屋敷のもので、元禄15年(1702)12月15日に赤穂浪士が本所松坂町の吉良邸から高輪泉岳寺に向かう道筋にあったと言われていました。そのため幕府から浪士たちの通過した際の事情を問われて面倒に思い、「当屋敷に辻番所はない」と答えたためにその日から戸を開けなくなったと伝えられてきたようです。ですが、実際は赤穂浪士の道筋とは無関係で、松平越前守屋敷と言えば親藩中の親藩で、二万七千坪もの広大な屋敷地にも関わらず、辻番所が一つもないことを揶揄され、七不思議にされてしまったのでしょう。

辻番所とは寛永6年(1629)に幕府が江戸市中の武家地の要所要所に設置を命じたものですが、役割としては辻斬り・喧嘩の制止、不審尋問による事件の予防などがありました。

この当時、江戸市中では辻斬りが横行しており、これを防止するために辻番所が設置されたのです。

この当時の辻斬りは物獲り強盗が目的ではなく、刀の切れ味を試したり、度胸をつけるためなど武芸鍛錬が目的でした。将軍に就任する前の徳川家光もこのような辻斬りをやったとの話も残っています。

武芸鍛錬などとたいそうな名目をつけながら理不尽に何の罪もない人が殺される辻斬り…これを戦国の美風などと褒めるものもいたようですが、町民にとってはとんでもないことです。

町民を守るための辻番所。徳川の親藩であり、広大な屋敷地を持つ松平越前守屋敷がこれを設けなかったことは揶揄されたとしても仕方のないことかもしれません。

②馬喰町の七不思議

馬喰町の七不思議として言い伝えられているものは

■鼠に似た怪しい異国の獣
■卵を産む女房
■犬の珍しい行為
■天水桶の溺死
■仲裁後の手傷
■三日月井戸の暗号
■先祖の因縁が巡る御霊社詣

動物や水地に関するものが多いのが特徴です。

今は問屋街の馬喰町ですが、古くは馬市の立つ町でした。靖国通りと江戸通りの交差点の北側に、〈初音の馬場〉と呼ばれた馬場もあり、関ヶ原の戦の際には、ここで馬ぞろえ (出陣前の馬の検閲と演習) が行われたと言うことです。動物の出入りが多かったことから、物珍しい動物も他の地域より見られたのかもしれません。

町名の由来ですが、博労 (馬の善し悪しを鑑定し、売買・仲介をする人) の頭、高木源兵衛や富田半七などが住んでいたところから当初は博労町、のちに馬喰町と呼ばれるようになりました。
明暦の大火 (1657年) の後、浅草御門、今の浅草橋たもとに関東郡代の屋敷が置かれると、地方からの公事師 (訴訟代理人) のための旅籠屋が増えてきました。横山町に隣接していたことから、各地から訪れる仕入れ、売り込みの商人たちの出入りも盛んで、大小の旅籠が集中し、江戸一番の旅館街として活況を呈したといいます。
旅館のほか、江戸土産を求める人のために小間物、化粧品、煙草、袋物などの店も多くなり、やがて馬喰町問屋街として開けました。

「天水桶の溺死」「三日月井戸の暗号」「先祖の因縁が巡る御霊社詣」などは旅籠に泊った者の噂話のようにも思え、当時の馬喰町を垣間見ることが出来るようです。


参考文献:『郷土室だより』第81号 東京都中央区立京橋図書館
参考HP:横山町・馬喰町 新町通り会HP