日本では、「南京大虐殺などなかった」とか、「慰安婦問題はなかった」という意見が意外に多い。生き証人たる戦争体験者が少しでも存命しているうちは、その意見にも程度が限られるであろうが、戦争体験者が絶滅した後の時代では、恐らく、こういう意見がもっと幅をきかせてくるに違いない。
戦争を語るには、その時代の背景を読まねばならない。
各時代の社会通念や社会情勢を知るのは必須であろう。
ちなみに、私の兄は、学校教育が正しいと本気で考える人間であるが、その兄は、「戦争を起こしたのは東條英機だ。奴は悪人だ」と、アメリカGHQが広めた教えを盲信している。
もう少し広い視野を持つべきではないか、とでも意見しようものなら、逆上してくるので面倒だから彼には何も言わないでおく。
戦争など、たった一人の人間が起こせるはずがない。
彼(私の兄)が、東條英機を悪者にして何の疑問も持たないでいられるのは、ボスになった経験がないからであろう。(超零細企業の社長にして、その会社の経営も成立させられず、年老いた親から大金を借りたまま返さなかったり、たった一人の従業員を抱えることを自慢する程度の人物なので仕方ないのであるが)
組織は大きくなればなるほど、コントロールが難しくなる。
末端になればなるほど人物と呼べる人材は乏しくなり、そして彼らはよく暴走する。
例えば、大きな暴力団組織が睨み合っているとしよう。
しかし、ボス同士は様子を見あっている。まだ抗争を始めるべきでないと考えているからだ。
そんな中、ボスの気持ちを理解できないでいる末端の組員同士が盛り場などで出喰わし、揉め事を起こす。そしてどちらかの組員が殺される。
こういうことが口火となり、大組織間の抗争は始まったりするのであるが、ボス同士の心中としては、全くの不本意だったりする。しかし、立場上、やらざるをえなくなる。
上記のようなケースならまだ良い。
場合によっては、第三者の介入により、末端組員にスパイがまぎれ込み、強引に揉め事を作ることもある。抗争により両者が弱ったところを丸ごと飲み込む作戦である。
これはまさに、幕末以前の欧米による植民地化作戦そのものである。
第二次世界大戦においては、事実上、「ノモンハン事件」がそのきっかけを作ったと言ってよい。
辻政信という軍人(その他数人の士官含む)が、大本営の命令を無視してノモンハンで暴れたのである。
ノモンハン戦線では、辻は最高責任者ではなかったので左遷されただけで済み、後日栄転復帰する。そこでまた真珠湾攻撃作戦を推進させた。
戦後、辻はラオスあたりで失踪した。逃げたのか、殺されたのか、、、生死のほどは不明である。
いずれにしても、実に怪しい人物である。
戦後行われた東京裁判では、A級戦犯であった岸信介が無罪放免となった。
現在の安倍総理の祖父にあたる。
戦勝国が戦勝国側の価値観のみで行われた裁判において無罪となったことに、どんな意味があるのであろうか。
現在、日本には、米軍基地が点在しているが、それは事実上、日本がアメリカに現在をもって占領され続けていることを意味している。安保条約という呼び方、それは、「売春」を「援助交際」と呼ぶのと似ている。(つまり言い方で本質の意味合をぼかしているが、やっていることを同じということ)
戦勝国が占領する国においては、戦勝国側に都合の悪い人物は悪人とされ、都合の良い人物は英雄とされる。ちなみに、二次大戦における悪人は東條であり英雄は岸である。
台湾には、親日派が多い。
台湾を占領した日本軍は、懐柔策として台湾に学校を作ったりして善政を施した。
一方、朝鮮半島や中国に侵攻した日本軍(主に関東軍)は、台湾とは逆に、蹂躙政策をとった。
末端の構成員の人格によって抗争が引き起こされる暴力団と同様に、同じ日本軍にしても、各軍の体制によって、結果は全く違うものになってくる。
例えば、慰安婦問題はなかった、という人は多い。慰安婦は自らの意思により喜んで来たのだと述べる人もいる。もちろん、そういう慰安婦も大勢いたであろう。もともと売春で生計を立てていた者にしてみれば、植民地化された朝鮮本国にいるよりも、軍人相手の仕事の方が割がよかったりする可能性もあるからだ。
しかし、それでも慰安婦の数が足りなくなった当時の日本軍はどうしたのであろうか。
嫌々連れてこられた女性も多数存在するであろう。
物事は、局面だけで見てはわからないのである。
最後にひとつ、伝えたいことがある。
現在のアメリカには、「原爆投下はなかった」とする説が横行しはじめた。
こんな説を聞いて、日本人はどう思うのであろうか。
私は、「仁」をもって、歴史を振り返りたい。