先日、遅まきながら「すずめの戸締り」を観てきました。
新海誠監督ご本人が「最高傑作」と言うだけあって、中盤から涙か止まらなくなりました。
その涙の理由をお話しします。
まずは、簡単なあらすじから。
九州のある地域に、叔母の環(たまき)と一緒に住む鈴芽(すずめ)は高校2年生。
夏のある日、登校途中にバックパッカーの青年とすれ違います。
その青年に、この近くに廃墟ははないかと尋ねられ、山の奥にある温泉街の跡地を教えます。
扉を探しているという彼と別れたものの、すごく気になった鈴芽は、Uターンして廃墟へ。
彼と、どこかで合ったような気がする。
廃墟の中で、鈴芽は水たまりにぽつんと立つ扉を見つけるのです。
その扉を開けた彼女が見たものは、満点の星空と広大な草原。
しかし、扉をくぐってもその場所には行けず、元の廃墟に出るだけ。
混乱した彼女は、その場にあった石像を持ち上げます。
それは、とても冷たかったけれど、突然手の中で猫に。
そして、猫はどこかへ走っていってしまいました。
訳が分からず、学校へ戻った鈴芽。
友人たちと昼食を食べていると、地震を知らせるアラートが。
そして、温泉跡のある山から黒い煙が上がっているのを見つけます。
しかし、それが見えるのは鈴芽だけ。
嫌な予感とともに廃墟の扉へ戻ると、扉から禍々しいものが吹き出しているではありませんか。
そして、その扉を閉じようとしている人物が。
廃墟の場所を訪ねてきた青年です。
早く逃げろと訴える彼の言葉を無視し、鈴芽も扉を閉じるのに手を貸します。
扉は無事閉じられ、禍々しいものは消えました。
何が起きていたのか、尋ねても何も答えてくれない青年。
ケガをした彼を手当てするため、鈴芽は自宅に彼を招き入れるのでした。
それが、彼女の冒険のはじまり。
少女の身に起きた、波乱に満ちた5日間の幕開けです。
大ヒット作となった「君の名は」は、5年という歳月が流れて完結しますが、この作品は事件の発端から終結までわずか5日間に凝縮されています。
なので、次々と物語が動くジェットコースタームービー。
劇的な主人公たちの出会いと、惹かれ合っていく様子がとてもナチュラルで、好感持てます。
まあ、運命共同体的な感じですので、当然と言えば当然の流れなんですが…
扉から現れたのは「ミミズ」と呼ばれ、地上に現れた「後ろ戸」から外に出て大きな災害(大震災)を起こします。
草太は、それを食い止めるため、開いてしまった後ろ戸を閉じることを生業とする「閉師(とじし)」
そして、石像から猫に姿にをかえたものは、後ろ戸が開いてしまってもミミズが外へ出てこないようにするための「要石」だったのです。
要石としての役割を捨て、猫として気ままに動き回るダイジン(SNSでついたあだ名)を捕まえて要石に戻すため、鈴芽と草太は緒に旅をするのです。
とはいっても、草太の姿は椅子ですので、他人から見ると「子供用の椅子を抱えたJKの家出旅」なんですよね。
見るからに「訳あり」な女の子の1人旅ですが、良い人との出会いで、安心して眠れる宿と温かい食事にりつけます。
手を貸してくれるのが、ほぼ全員女性というところがミソ。
そして、大都市・東京の後ろ戸が開いてしまいます。
その時、草太の身にに新たな異変が。
草太の独白が痛々しい。
鈴芽と草太の一時的な別れは、すごく衝撃的で、このあたりから涙が。
とにかく、東京に現れたミミズの表現がとても怖くて、そして草太を置いて去らねばならなかった鈴芽の心情が…
ここからは、草太を取り戻すための鈴芽の旅。
手を貸してくれるのは、草太の友人の芹澤。
芹澤を演じるのは神木隆之介君なんですけれど、今までこんなキャラやったことないね。
新たな境地を開いた感じです。(「バクマン」のシュージンに近いのかな?)
草太の祖父とのやり取りで吐露した、彼女の死生観があまりにも痛烈なので、ここでも涙。
そして、鈴芽は生まれ故郷の東北へ。
このあたりで、鈴芽の生い立ちが分かります。
突然家を出てしまった鈴芽を心配して、東京まで追いかけてきた環さんと一緒に、芹澤さんの車で向かうのですが、その途中鈴芽と環さんは衝突することに。
事情を上手く説明できないからね、致し方のない事だけど。
かなりキツイ言い方してた。
ひょっとしたら、これもダイジンの仕業かもしれない。
でも、抱えたままでいるのも辛いだろうから、こんな形ではあるけれど、お互い吐き出せたのは良かった。
事実、そのあとで2人は仲直りして、お互いをもっと受け入れられていたと思う。
そして、昔住んでいた家の近くで扉を見つけた鈴芽は、草太を取り戻すために死者の国「常世(とこよ)」へ赴くのです。
全て終わった後で、オープニングで流れた映像の伏線回収している辺りは、さすがの深海流。
そして、この作品で強く感じたのは、新海監督が宮崎駿監督をリスペクトしていること。
まず、ミミズの表現がジブリ。
そして、主人公に手を貸す女性陣は「魔女の宅急便」のようだし、東京でミミズを封じるシーンは「ナウシカ」の逆バージョン。
その他にも、宮崎駿を感じさせるシーンがいくつも出ます。
「君の名は」では、1つの地域に起きる災厄を防いだけれど、今回は日本のあちこちで多くの人の命を、それと知られずに救います。
確実にスケールアップしているので、見ごたえが十分。
そして、現実世界を舞台にしている分、余計リアルに感じます。
草太が、荒ぶる地の神に訴えた言葉。
それが、「人が生きる本音」だと思いました。
人々の生活が途絶え、想いが消えうせ、忘れ去られてしまった場所に後ろ戸が開くというのも印象的。
本当にいろいろなメッセージが込められた作品で、これを見終わった後、身近な人と過ごす些細な日常がどんなにありがたいことか思い知らされました。
ぜひ、大切な人と一緒に観見てください。