彼の奥さんから電話がかってきて

彼の昔を伝えてくれようとする夢



彼の人生の最後を

ほんの一片でもいいから知りたいと

藁をもすがる願いを抱く私に

手を差し伸べてくれるはずがないヒト



唐突に見た あり得ない「夢」に

しばらく忘れていた彼への想いが

意識の奥底でいつも流れているのを感じた
この世界に、もうあの人はいない。

崩れ落ちていくような深い悲しみの淵から這い上がって来たように思えていても、その淵に取り残されたままの心が、いつまでも悲しみを引きずっている。

きっと忘れることなんか出来ない。
この街のあちこちに彼の面影がある。

ぽっかりと空いてしまった心の穴を、どうやって塞げば良いのか分からず、ただ呆然と悲しみに身を任せている。
その悲しみには、もう激しさはないけれど、いつまでも滔々と続いていく深く静かな悲しみの流れ。

会いたい心を隠しきって過ごしたこの15年余りの結論が、彼の死。

一緒に死んでもいいと思ったほど愛した人は、私の知り得ない場所で、一人、亡くなっていた。

何故亡くなったのか、どういう状況だったのか、どう過ごしていたのか…
ほんの僅かな情報さえも入って来ることはない。

取り残された私の、行き場の無い悲しみ。

誰かとこの悲しみを語り合うことができれば、少しでも癒されるかもしれないのに、誰とも分かち合うことの出来ない事実。

私にとって、彼は、生きていた頃も、死んでからさえも、タブーの存在なのか。

唯一の救いは、彼のお墓を知ることが出来たこと。
何度か足を運び、応えてくれるはずもない冷たい石の下に、問いかける。

「ひろしちゃん、来たよ」

せめて、一度、
一度で良いから、会いたかった。
彼と言葉を交わしたかった。

きっと、この悲しみは、死ぬまで引きずっていくんだろう。
彼と、彼の子どもの、二つの魂を背負いながら。
胸の奥がジーンとする
切ない感覚に陥ったとき
あの頃へ記憶がフラッシュバックする

心のひだが震えるとき
その全てが
あの頃の時間に繋がっていく

私の根底に流れる
熱い感情の源は
今でもあなたと繋がっている

15年前のあの頃の記憶は
もう私の中にだけしか残らない

誰も知らない
私だけのあなたとの時間


$こころ の ことのは