年末年始はドラマがある
住み慣れたあの家、あの部屋は横になった瞬間いつも夢も観ずにひたすらに深い眠りについてしまう魔力を持っている
寒い木造の家も、下からこめてくる母の料理の香りも私を包み込み守ってくれるように感じる
この空気もいつかはなくなってしまうのだろう
あの家売ったら結構いくでしょと冗談まじりにいった兄の言葉
去年の正月にそんなことをもらして、まだ幼い息子とこたつに入っていた
家に苦い思い出がある彼は、それでもなお遠方から訪ねてくるのはなぜだろうか
一通りの年末行事が終わり、大勢のひとが帰ったなかで父と一緒に酒を交わした
父の生まれ、兄弟とは、会社のこと、懐かしそうに地元の日本酒と地元の魚を食べながらウキウキと話していた
真っ赤になった父は、そのまま机に伏せて寝始める
もう寝たら?と言うと、もったいなくて。
と父はこちらもみずにぽつんと返した
私の知る限り父はいつも遠くにいた
週末に夜遅く帰っては日も上っていない朝早くにまた帰る
そんな生活を続けて立派に私たちを大きくしてくれた
だから大人になって落ち着くまで実はそんなに会話をせずに成長したと思う
彼の口から静かにこぼれた「もったいなくて。」その一言だけには愛情が込められていて、なんだかじんわりと温かい気持ちになった
よし、今年もがんばろう