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パリオペ日本公演「マノン」2回目、千秋楽の鑑賞記録。

【振付】ケネス・マクミラン
【音楽】ジュール・マスネ 
【オーケストレーション・編曲】マーティン・イェーツ
【原作】アヴェ・プレヴォ「騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語」
【指揮】ピエール・デュムソー
【演奏】東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
【キャスト】
マノン:ミリアム・ウルド=ブラーム
デ・グリュー:マチュー・ガニオ
レスコー:アンドレア・サリ
レスコーの愛人:エロイーズ・ブルドン
ムッシューG.M.:フロリモン・ロリュー
マダム:ロール=アデライド・ブコー
乞食の頭:フランチェスコ・ムーラ
看守:アルチュス・ラヴォー

全幕では初めて観るミリアム・ウルド=ブラームと、大好きなマチュー・ガニオの「マノン」♡
これまでパリでも共演する機会は多くなかったというレアな?ペアを観ることが実現したのは、ミリアムたっての希望だったからだそうで、マノンを踊るならマチューとでないと、と思っていたそう。

2人の共演を観るのはこれが最初で最後なのが残念なほど、アムールを感じる2人の間の甘い空気感がわたしは大好きだった。


ミリアムのマノンは登場した瞬間から、終始とても可愛かった♡

彼女の可愛らしさがマスネの音楽の切ない旋律を際立たせ、恋の始まりの2人の感情とは逆に、わたしの胸を苦しくさせた。


初日のドロテと比べると、ドロテのマノンは明るくややお転婆なところもあり、それを感じさせるメリハリのある踊りなのに対し、ミリアムは踊りも雰囲気も柔らかく控えめで、ナイーブな少女という印象を受けた。


ピュアで麗しきマチューのデグリューは、この世のものとは思えない別次元の美しさで、出逢いのパ・ド・ドゥでのソロの冒頭から涙が溢れて止まらなかった。。泣

頭からつま先までの全身、纏うオーラ、もはや存在そのものが、尊いほどに美しくて。

言葉で表現するのが難しいけれど、彼が踊るのを観るといつも、わたしの中で時が止まるような感覚になる。


出逢いも寝室も、とにかくこの2人のパ・ド・ドゥが眼福。どちらのパ・ド・ドゥも、音楽も大好き。

寝室のシーンの最後、GMの愛人となることを決めたマノンが去り際にベッドに顔を寄せたとき、それでもなお彼女の気持ちはデ・グリューにあることがわかり、そのミリアムの表現が素晴らしかった。


Photo from @mathieuganioofficial Instagram


レスコーがGMに撃たれた後、ドロテのマノンは取り乱してGMに向かっていったけれど、ミリアムのマノンは兄しか目に入ってなくて、現実を受け入れられない様子の演技に説得力があった。

キャスト違いで見ると、役の解釈や演じ方の違いを見比べられるのも面白い。


この日のレスコー役は、アンドレア・サリ。

ビジュアル的にもレスコーがよく似合っていて、でもどこか可愛さもあって、彼のレスコーもまた憎めなくて好みだった。(この日をきっかけにファンになった笑)

パブロのレスコーの方が少し強引さがあったかな。あるいはアンドレアのレスコー方が妹への優しさも少し感じられるというか。


Photo from @andrea_sarri Instagram


レスコーの愛人役は、エロイーズ・ブルドン。

はっきりした顔立ちの美人で表情がわかりゆすく、彼女意外とコメディエンヌっぽい役が似合うかもと思った。

GMは金曜日のビュスロルの方が変態度は高かった笑

乞食の頭役は、フランチェスコ・ムーラ。

4年前に観た「ジゼル」で彼の踊るペザントがとても良かった記憶があるけれど、今回もパワフルでキレのある踊りで、テクニックも素晴らしかった。


2幕のパーティーのシーンで、デ・グリューと目を合わさないと決めているかのようなマノン。

「彼のことは愛しているけど、私は生活を選んだの」という声が聞こえてくる気がした。

でもミリアムのマノンを見ていると、初めて彼女の気持ちを少し理解できる気がしてきて。

マノンという女性に、まさか自分がそんな風に感じることがあるなんて、、!

デ・グリューに対しても、こんな女やめときなよと初めて思わなかった笑


3幕の看守の部屋のシーンは、ドロテのマノンは表情を含め演技がわかりやすく、ミリアムのマノンは生気を失い抜け殻のようだった。

沼地のパ・ド・ドゥは、デ・グリューがマノンを放り投げ2回転させてキャッチしたり、マノンがピケアラベスクからオフバランスになり前に倒れ込むところでキャッチしたり、マノンが遠くから走り込んで肩でリフトしたり、、と大変な大技の連続だけれど、この日の2人は丁寧さというか少し慎重さが見え、ここでドロテ・ユーゴペアはリスクを取っていたのだとわかった。(どれだけ2人で踊り慣れているかがわかる)

そしてラストシーン、マノンが息を引き取った後のマチューのデ・グリューは、まるで哀れな老犬のようだった。

泣くわけでも天を仰ぐわけでもなく、なすすべもなく宙を見て、ただ悲哀に満ちていて、、、

それがわたしにはリアルに感じられて、とても良かった。

沼地のシーンはこちらも疲れていて笑 わりと客観的に見ていることが多いのだけど、このラストシーンのデ・グリューに共感し、悲しみが込み上げた。


というわけで、この日も最初から最後まで、美しく素晴らしい舞台だった。


マクミランはイギリス人で、バレエの「マノン」の本家はロイヤルだけれど、パリオペのダンサー達がこれほど自然に自分達のものとして演じられるのは「マノン」がフランスの小説でパリが舞台だからというのもあるのだろうか。

しかしもしいまマクミランがオペラ座の「マノン」を見たら何て言うだろう。もっとリアルに、もっと醜くと言うだろうか、それとも新しい解釈だと喜ぶだろうか、と考えてしまう。

だって、乞食達ですら男性陣が皆美しいんだもの笑


5月に「ジゼル」でアデューを迎えるミリアムの、エトワールとして最後の日本での舞台だった今回。

そしてマチューもまた、エトワールとしての日本での全幕はこれが最後だったみたい泣

マチューがインタビューで、「このマノンが僕達の最初のアデューになるのかなと感じている」と言っていて、既に寂しい。。(ちなみにマチューの最後の舞台は「オネーギン 」だそう。わたしも大好きな彼のオネーギン。きっと素晴らしく感動的なものになるでしょう!)

その意味でもとても特別な舞台となったこの「マノン」を、愛するマチューを、美しいパリオペのバレエを観ることができて、本当に幸せ。感謝♡♡♡