アカデミー賞2分野(脚色賞・主演男優賞)においてノミネートされた映画"Living"(2022年/102分)を観た。
アカデミー賞にノミネートされたと聞いて,先んじて黒澤明監督の「生きる」(1952年/143分)を観た。
歌,印鑑,畳にストッキング...オリジナルにある日本的なモノはすべて置き換えられるが,元々イギリス映画なのではないかと思うほど。2作品を続けて観たので,つい比較することに気が行ってしまって...いずれもまた期間をおいて観たいと思う。
黒澤監督の方で好きなシーンは,工事現場で倒れた主人公に地域の主婦がひしゃくで水を飲ませるところ。コップじゃなくてひしゃく!慌てふためいた様子がいい。何かに憑りつかれたような主人公の表情だが,ここを回想する役所職員のセリフがこちら。英語字幕では,”As if he were watching his child or grandchild, the apple of the eye.” 「愛しい我が子か孫のような目で公園が出来上がる様子を見ていた」というのだ。The apple of the(one's) eyeは,「目の中に入れても痛くない(ほど愛しい)」という意味のことわざ。
Livingでは,市役所職員の”Never again to push things under the carpet.”,"Or upstairs."という会話がおもしろい。Pushing it under the carpet(pushはsweep,carpetはrugだったり)というのは,「臭い物にはふたをする」という意味。「問題をカーペットの下に隠すだけじゃなく二階にも放置してはいけない」と葬儀の席で皆が口々に誓い合った。それなのに,職場に戻るとまたいつもの通りに…。
野球のWBCで日本チームが優勝した時(3月21日),私も含め,多くの人が元気をもらい,自分もがんばろうと思った...はず。しかし,数日もすればその気持ちは何処へやら。わずかひと月前のことなのに,すっかり忘れてしまった。サッカーのワールドカップやオリンピックでも然り。モチベーショーンは自分の奥底から湧き出て来ないと,ホントのやる気は起きないのである。