数年前のことだが,食料品店で米を見ていた時のこと。店員さんに,「新米ですよ~」と声をかけられた。

続いて,「新米だから,水加減を変えなくちゃいけないんですよ」と助言を下さる。会話のキャッチボールのつもりで,そうなんですかの後に,「えっと...新米は水を控えめにするんでしたっけ?それとも多めに?」と尋ねてみた。

すると,まさかの「えっ,どっちだったかしら...」。(正しくは水を減らす)

...2人の間に沈黙が漂い,店員さんは静かにその場を離れて行かれた。

数ヵ月前,コロナ禍において病院の待ち合い室に入る前に,指にクリップを挟んで酸素濃度を測ってもらった時もそうだった。「98ですね」と言われたので,100に近いから良い数値なのだろうと思いつつ,「ところで,酸素不足の数値というのは?」と聞き返した。特に知りたいというのではなく,これもフレンドリーに会話をするためのスモールトークで,アメリカでは普通のこと。

すると,係員さんは言葉に詰まって「えっ。93だったかな」と言う。...かな?慌てて,受け付け担当者を呼んで確認している。この人は看護師ではなく,検温・酸素濃度・手拭きのみの担当者だったが,基準数値を知らずにどうやって入室できる患者を選別しているのか。

アメリカで講師として勤めていた学校でのことも思い出す。「アレルギー持ちの〇〇さんという生徒は,いつも薬を2つ(1つは予備)バッグに入れて登校している」と会議で聞いた。ホントかなと思い,翌日調べてみたら1個しか入っておらず,本人に聞いたら2個入れていたことは一度もないと言う。

一歩突っ込むと答えられない。知らないなら言わなきゃよかろうが...。自信に満ちた受け売りの発言は,ただ借りてきたもの。「大丈夫だろう」という危機意識の低さだ。きちんと調べず誤った情報を伝えるのは,プロではない。

客や患者に,「知ったかぶり」とか「適当なことを言うな」と批判されても仕方がなかろう。

しかし,これまで誰にも質問されなかったのだ。ホントかと疑問に思わない側の無関心さにも問題があると思う。命に関わることについては,疑問を投げかけ正していかなければ...。  

こういうことは,本当によく起こる。根拠のないことや薄っぺらなことでも,立場が上の者の発言は絶対だ。公の場で自信たっぷりに,しかも発言権のある人が言ったりすると,誰も異論は唱えない。年上だったり,仕事経験年数が長かったり,お金があったり海外生活が長かったり...。

ようやく明日でこの政権も終わる。4年前から,うちの夫(大学でアメリカ政治を教えていた)は「ダメだダメだ!トランプは危険過ぎる。アメリカは終わってしまう...」と落胆していた。

真実を語っているかどうかくらいは,見抜けるようにならないと。そして,自分が適当なことを言わぬように常に謙虚でありたいと思う。