現在休止中だが,ペーパークラフトの本場アメリカでクラフトを始めて,13年が経つ。生徒の立場でいろいろなクラスを受講し,講師の立場でも初心者から上級者まで様々なレベル,国籍・年齢の方々に教えてきた。
私はダイカットマシンを3台(Sizzix・Spellbinders・Accucut)持っており,クラフト店でも他の5種類のダイカットマシンを使ったことがある。いろいろなクラフト商品のメーカー(100社以上)の製品を見たり使ったりしてきたので,多少は物の良し悪しを見分けることができると思っている。
クラフト道具のマルチ商法販売員(デモンストレーター)は,超がつくほどの高額商品を人に勧めなくてはならない。そのため,自ら(要らない)商品を買って客に見せて宣伝しなくてはならず,高額商品を売ることでノルマを達成する。商品自体にはそこまでの価値はなく,ピラミッド構造のトップに立つ者だけが利益を得る特殊な商法だ。中古品($32を$5で購入)はいくつか持っているが,販売価値はあっという間に下がり,次の新商品が出る頃(旧商品を使って作品交換をしてはいけないという困ったルールもある)には本来の商品価値程度になる。
私は,誰からもコントロールされることなく,自分で本当にいいと思う道具だけを使ってきた。長年の経験から,私が買わないクラフト道具について書いてみたいと思う。
「あれば便利かも?」:なくてもいいモノは買わないのは台所用品でも然り。イチゴのヘタをきれいに取るナイフに,レタスの水きりをするスピナー…イチゴ大福を作る店かレストランの経営者なら必要だ。誰かお金を出して買ってくれて,使う度に高い棚から取り出して,洗って乾かして,棚の奥の方に片付けてくれるなら使ってもいい。「あれば便利かも」はきりがないが,収納スペースには限界がある。
「お金があったら買える?」:理性(責任)のある買い物が重要だと先日書いたが,お金があるからというだけで買う理由にはならない。余裕があれば,私はダイを買う!何でもすぐに買うのは,賢いとは言えない。
アメリカでは,毎日割引券がたくさん出ていて,大型チェーン店ではクラフト用具の40%引きは当たり前。私が購入する物は25~75%引きの商品で,中古品にいたっては,9割引きより安くなるものも多い。
輸入品を買えば,アメリカ定価の150〜200%の価格になり,さらに国内送料に消費税も10%。日本にいながら優れた日本製がすぐそこで入手できるのに(コピック等のアルコールマーカー),わざわざ輸入品を買う意味がわからない。
「保管場所があったら買いたい?」:私はクラフト部屋を持っていて,物置用の地下室も広いが(130㎡=約40坪),物は増やしたくない。物があれば管理をしなくてはならず,忘れずに使わねばならない…。取り出す手間があれば代用品でやった方が早い。
「時間短縮になる?」:クラフトパンチでカットするのは確かに早いかもしれないが,数秒程度に追われているクラフト生活は送っていない。重くて,保管場所を取って(しかも大きさがバラバラ),切れ方にくせがあって,高価なパンチはダイがない昔に流行ったものだ。時間短縮するための便利な道具は多いが,収納場所や価格,取り出し・片付けの手間などを考えると,しょっちゅう使うものでもない限り要らないだろう。
①スタンプポジショナー:スタンプをずれないように押す道具(MISTIなど)のことで,私は自分で作った(2016年10月30日記事)。検索してみたら,アメリカで$69.99(JoAnn店)。日本円で7,700円(税抜き)か…あまりにも非常識な価格。
②マグネット・プラットフォーム:ダイカットマシンに置いて,ダイがずれないようにする道具で,これまた$34.99(Hobby Lobby)という高額商品。マスキングテープで留めなくていいというそれだけの利点しかないようで…邪魔なので無料でももらわない。
③大きなパンチ:これまでにも何度も書いてきた。本帰国する方にいくつか頂いたこともあるが,帰国や引っ越し予定のある人は絶対に買わない方がいい。使ってから売ればいいと思っているかもしれないが,パンチは人気がないので売れないだろう。
④セットの紙(25枚入り等のパック):これも前に書いたが,ほとんど使わない。パックの紙は安価でたくさん入っているが,たいてい薄くて紙質も,色の出方も悪い。紙の芯が白かったリ,毛羽が出たりするものもある。デザインは良くても作品の質が下がるので,私は無地紙であっても1枚ずつ購入する。
⑤スタンプ:ダイとセットになったスタンプは,よほどでない限り買わない。スタンプが大好きでメインで使う・カード作りだけしたいというのなら別だが,私はダイを中心にした絵柄でフレーズだけスタンプを使うことが多い。日本で,一人の人に年間何枚のカードを送るかと考えれば,誕生日とクリスマス(キリスト教ではないだろうが)と,あと一回お礼状か何かくらいなのでは?難しい単語の入った英文は,意味が通じないし…よって,フレーズのスタンプもそんなにたくさん要らないのでは。
⑥ダイ:スタンプとセットでしか使えないダイは買わない。私が持っているのは,昔購入したものか中古品だ。また,やたらと凝ったレース模様のようなダイは,古臭くおばさんっぽく,洗練されていない物が多い。一方,スタンプ要らずのダイはフェルトのカットにも使えるので,手芸や学校グッズ等にも生かせる。
⑦花柄のスタンプやダイ:老若男女問わず使え,普遍的な模様なので,厳選して少し持っておけば十分。柄が主張しない分,無地紙の色やカードの形状などで全く違ったカードになり得て,腕の見せどころだ。
⑧ダイカット用ブラシ:6割引券があったので購入してみたが…要らなかった。まず,そこまで大量の細かい紙片を取り除くダイカットをするわけでもないし,これは亀の子タワシなんかで自作できるのではと思う。
⑨ダイカットした小さい紙片をつけるピッカー:同様に,6割引きで購入したが…後悔。結局,自作した道具を使っている。
⑩大量のスタンプインク:染料系のインクは混色できる。微妙な色の違いのためだけに,新たにインクパッドを買う必要はない。
おまけ:本当に「おまけ」のことで,「〇円以上買ったらもらえる」という商品は,大抵要らないものだ。自分が要らない道具は,他の人も要らないと思っている。
大人のクラフト道具は高価だ。ダイや柄紙などは上質の物を使わないと,作品自体が安っぽくダサくなってしまう。しかし,「作る工程を便利にする道具」は,作り手だけの時間や手間の問題。作品自体には影響はなく,工夫したり自作したりできる。子どもの工作品売り場や100円ショップ(1ドルショップ),DIY店等で代用品は見つかる。
どこにお金をかけるか,賢くクラフトを楽しみたいと思う。