ミシガン州における学校は,ついに長い夏休みに入りました。といっても,既に3か月近くも休校&オンライン授業だったので,半年またはそれ以上登校しないことになります。6月の学年末まで休校になるという知事の決定(4/2) が発表されてからは,学校だけではなく何か継続的に家庭学習を進めている方も多いかもしれません。特に,日本に帰国するということを前提にしているお子さんを持つ保護者の方は,日本語(国語)教育を心配されていることと思います。

 

昨日の記事にも書きましたように,小学生の個人指導(作文)をオンラインで実施したいと考えています。

 

私は,長崎大学の教育学部で教員免許を取得し,地元長崎の公立小学校で12年間教えておりました。ミシガン州でも日本人学校で小学1年生,塾で小学1~6年生までの国語(読解・作文)を指導。個人指導としては,4歳児から高齢者まで日本語(日本語が母国語でない人も含む)を教えました。Skype(テレビ電話)では7年近くカリフォルニア在住の生徒さんを指導し,17歳で日本語検定のN2レベルに合格しています。さらに,アメリカ人(大人)に日本語での作文を2年間ほど指導し,簡単な翻訳や日本人が書いた文章の校正の経験もあります。

 

ある塾の採用時に国語指導をと依頼されて驚いたのが,「国語を指導できる日本人がいないから」という理由でした。「講師は全員日本人なのに何故?」,または「生徒は小学生でしょう」といった疑問があると思います。しかし,日常会話ができることと国語が指導できるということは,全く異なるということです。異国の地においては,尚更です。

 

「娘は英語もがんばっているのだから,日本語は帰国後で」,「せっかく日本語でしゃべって(書いて)いるので,訂正して機嫌を損ねたくない」,「息子の言いたいことはわかるので傷つけたくない」,「文法が間違っているような気はするが,正しく説明してやれない」…親としていろいろな理由はあるのはわかります。しかし,「周りの日本人も同じような日本語レベルだから大丈夫だ」と,自身を安心させていないでしょうか。

 

英語環境における子ども達の言語的思考は,日本で暮らす小学生とは大きく違います。アメリカで教えるようになり,日本での教え方と同じではいけないということに驚きました。家族間での会話文では語彙や表現が限られ,方言によるアクセントにも気づきません。さらに,家族間では話題の状況を共有していることが多いので,内容を推し量ってもらうことができます。「日中は私(母)としか話さないので,息子が女性言葉(~なのよ)ばかり使う」という相談も受けたことがあります。

 

最近は,SNS上での文章を書き言葉だと思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。「マンガをお買い上げしました」や「(私は)昼食を召し上がりました」のようにわざと自分の言動に敬語を使い,それが当たり前になっているのが恐ろしいと思います。擬人化した「私のスカーフ達」や「この子達(ぬいぐるみのこと)」という表現。「ため息な夜」・「魚な気分(魚を食べたい気分)」のような「な」の使い方。「歓喜・絶賛・絶叫・悲鳴・驚愕・感激」などやたらと大げさな言葉のタイトルのついた記事を読んでみたものの,一体そのどれだけがその期待に応える内容だったか…。フォロワー数を増やすためにおもしろくしようとしてわざとネットのスラング(誤用)を取り入れているのか,そうでないのか。大人はわかった上で使っていても,お子さんがそうだとは限りません。実際は,改まった文章が書けるのかどうか。「書くこと」の基本になる「読むこと」が,マンガやゲーム,SNSの文章に限られてはいないか…。

 

むしろ,外国で学んでいる人の方が正しい日本語を話していることもあります。アメリカ人の生徒さんが仕事で日本に行く前に,「日本人の日本語を訂正し過ぎないようにね」とアドバイスをしたことがあります。彼女は二重敬語にもかなり詳しかったんですよ!渡米して以来,私の周囲で最も日本語ができる人は,中国人の友人です。

 

家庭でも,国語は漢字の読み書き・本をすらすらと読む…他に何をするのか?と思っている方がほとんどだと思います。漢字も音読もできているのに,国語の成績が上がらない…本当に実力がついているのかわからない…。日本の小中学校では,国語は「読みReading」・「読解Reading Comprehension」・「書きWriting/Composition」・「文法Grammar」と分けられてはいません。成績表の観点別評価項目にそれぞれ印がつけられているものの,恐らくあまり意識されていないと思われます。

 

明言しますが,教員養成課程を経て実際に日本で指導したことがない場合,「自分(講師)が子どもの頃に習ったような教え方の記憶を頼り」に「思い付き」で教えてしまうという恐れがあります。

 

帰国子女の学校適応については,以前「帰国後の環境不適応」というタイトルで記事(2015年9月30日)に詳しく書いたので,是非読んで頂きたいと思います。厳しいようですが,帰国後に「学年相応の学力がついている」というのは当たり前のことであるということ。今は休校でどの子も学校には通っていないから大丈夫…という安心感の根拠はどこにもありません。比べるのは,アメリカに住んでいる近所の日本人のお子さんではないのです。

 

対面授業では,中学生以上は一時間につき$50,小学生は$45で教えてきました。オンライン(Skype)では,高校生以上で$50/hour(一時間以上のレッスンのみ)。今回のレッスンは,オンラインの小学生のみですので,1時間$45(5・6年)または50分$40(1~4年)で設定しています。基本的に週に1・2回で,レッスン前に作文をメール添付して頂くことになります。

 

今回の案内は「作文」の個人指導ですが,「読解」についても誤った指導法を多く見てきました。家庭では「文章読解」と「作文」は指導が難しいでしょう。この2つは,もともと慌ただしい土曜日学校では指導時間がほとんどなく,国語の授業内ではほとんど力がついていません。長い休みをプラスと考えると,家庭での時間がある今こそ,この2つにじっくり取り組める時だと思います。

 

文章が書けるということは,一生の財産。時間やお金をかけた旅行で積んだ経験のようなもので,人生の投資です。書くのが苦痛で後回しにしたばかりに,取り返しのつかないことになったという経験はあるはずです。「これからは,ネットで作文だってしてくれる時代になる(から不要)」という意見もあるでしょう。受験の小論文のためではありません。お礼・お祝い・謝罪・苦情・説得・抗議・問い合わせ・依頼・推薦・招待・断り・催促・相談・お見舞い・励まし・お悔やみ…人生は作文であふれています。自分自身の言葉で自身の心を表現し,それが相手に影響を与えて自らの生活を豊かにしていくということです。

 

「書ける」ということは「読める(理解する)」ことですから,だまされにくくもなるでしょう。行政機関を名乗った詐欺や悪徳商法,フェイクニュースなども見抜くことができると思います。

 

せっかく日本語で話していたお子さんが,言いたいことが表現できないが故に英語に切り替えてしまう。周囲は笑って温かく見守ってくれるでしょうが,本人はもどかしい思いをしているはずです。

 

いつまでも「話せられることができる」という誤った日本語を自信なさそうに使っていてはいけません!

 

小手先の技術ではなく,題材の選び方から言葉の使い方,文法,文章表現等を指導できます。やる気のあるお子さんに指導できたらと思います。

 

お問合せは,michiganpapercraft@gmail.comまで。