まず最初に断っておかねばならないのは,タイトルのこと。短いタイトル欄なので「日米」と書きましたが,アメリカは州や学校区によって学校制度が全く異なりますから,ここで言っているのはミシガンのWalled Lake学校区のことです。

 

主人は,以前仕事で日本の学校の視察に出かけた時のことを今でもよく人に話しています。「エアコンが校長室にしかないんだよ!」と。「なんて不平等なんだ」,「Childern firstだろう」と視察団の中でも話題になったそうですが,校長先生にしてみれば「エアコンの効いた部屋で外国人教育者に最高のもてなしをした」ので,まさかマイナスに取られていたなんて予想外だったでしょうね…。

 

私が子どもの頃はもちろんそうでしたから,何の疑問も持ちませんでした。教員になってからは職員室に,そしてパソコンが導入されてからはパソコン室にもエアコンは設置されました。近年は,教室にも設置されているところがあるようですね。労働環境も大事ですし,もちろん国にも自治体にも予算がないのはもっともですが...。

 

総領事館で開かれたパーティに,主人と共に招待された時のこと。テーブルの上には,日本食がずらり。キッチンから日本食レストランのシェフによる熱々の料理が次々に運ばれ,招待客も多かったので立食パーティ形式でした。椅子は壁の前に並べてあって,もちろん人数分はありません。土曜学校の日本人の校長先生と話していると,近くの椅子が一脚空きました。すると,校長先生は私に椅子を勧めて下さり夫にも促され,私もアメリカ式にそれに従いました。レディファーストの意識がない日本では,皆まずは校長先生に椅子を勧めるでしょう。

 

主人の退職式典について行った時も驚きました。軽食が供された後,教育委員会の委員による会議が開かれ,続く式典は約一時間。各校の校長が退職者を一人ずつ紹介していき,モニターにはその人の写真数枚が映し出され,列席者は自由に写真や動画に収める。紹介された退職者は,起立している教育委員一人ずつと握手を交わし,花や記念品を受け取ります。式典中,退職者やその家族は座って軽食を頂いているというのに,教育長を始め委員の皆さんは,前で横一列に並んで約一時間立っていらっしゃったのです…!日本だったら,教育長は一番座り心地のいい椅子に真っ先に座るというイメージしかありません。委員のメンバーの方も退職者やその家族と積極的に言葉を交わし,笑顔で「おめでとう!」,そして「これからどう過ごすの?」と尋ね,「困ったことがあったら何でも相談して下さいね」と案じて下さる。形式的なものではなく,ねぎらいと感謝に満ちた,心のこもった式典でした。日本での退職式典はどうだったかと思い起こしてみれば,3月31日に教育委員会に出向き,名前の指定された事務机につく。スーツを着て退職の証書を無言で受け取り一礼しておしまい。教育長の話くらいはあったでしょうが,全く記憶に残っていません。笑顔なんてとんでもなく,皆終始神妙な顔です。式典の前後であっても教育委員,ましてや教育長と会話をすることもなければ当然お茶一杯も出ません。儀式ですから型に沿ってやるのが一番大事なんでしょうが,やっぱりそこにはハートがこもっていて欲しい。うちの県は離島が多く数年間は赴任義務があり,定年まで勤め上げるのは並大抵のことではありません。風船の飾りつけや記念品はいいのですが,「今までここで働いてきてよかったな」と退職者が実感できるようなそんな式典であるべきだと思います。

 

うちの隣人は元Walled Lakeの小学校の校長先生で,地方紙や学校関係の冊子でも彼女の記事を見かけます。「新聞,見たわよ~」と言えば,「大したことないのに恥ずかしいったら!私が最も嫌いなものは,権力とお金なのよ!」と。この方はCommerceで最も有名な方なので,いずれ記事に書きたいと思います。

 

上に立つものがいばるとか権力を振りかざすというのがなく,周囲を気遣い理解し,ねぎらう。これでこそ,真のリーダーでしょう。そして,なにごとにもハートが感じられるかどうかが大事だと思います。