これまでにも何度か問い合わせがあり個別のメールにて回答してきましたが,「赤ちゃん連れのクラス」についてここでまとめて説明をしたいと思います。「赤ちゃん連れ大歓迎!」や「何の心配も要りませんよ」と案内し,終了後に「思ったより大変でしたね。ほとんどできませんでしたが仕方ないですね」と言うのは,あまりにも無責任で配慮不足です。「赤ちゃんは大好きです」や「赤ちゃんはかわいいから是非どうぞ」というのは,ポイントがずれています。そこで,長くなりますが,これまでのクラス実施の経験や受けた質問などを踏まえてきちんと書いておきたいと思います。
私のクラスで行っているのは,大人のペーパークラフト・コーナーに販売してある道具や材料を使うものであり,小学校の図画工作や折り紙,年賀状作成時の干支スタンプ等を使うものとは異なります。「わあ!作ってみたい!」と思う作品は,複雑で工程数も多く時間がかかっていたり細かい材料を使っていたりすることがほとんどです。
「一人で参加のクラス(プライベートやスクラップブッキング)ならば赤ちゃん連れでもいいですか」という質問がありますが…赤ちゃん連れが難しいと思われる理由は大きく分けて3つあります。
まず,安全上の理由。鋭利な道具(ハサミ・カッターナイフ・目打ち等)が多く,ハサミにしてもクラフト用の先がとがった物を使用します。パンチなど重い道具も多く,電化製品を使うこともあります。立って使用する道具もあり,ほとんどが両手での作業になります(糊付けでさえ!)。また,ビーズのような細かい材料もたくさん使います。
そして,時間。環境が変わることもあり,お子さんのお世話にどれくらいの時間がかかるかは予想できないでしょう。基本的に3時間のクラスを提供していますが,30分程度の内容しかできないこともあり得ますので,制作内容の計画も難しくなります。ずっと抱っこをしたままでの制作になれば,糊付けをするのですら難しいでしょう。少し延長しても予定作品が完成しないことも大いに考えられますが,「どうしても通常のクラスを受講してみたい」ということであれば,継続しておいでになって無理をせずに次回に持ち越すということも考えられます。
最後に,気持ちの面です。満足感・達成感が十分に得られるか,集中してできるかです。プライベートクラスの場合はこちらで紙のカットなど準備をしっかりしておき,私も指導・道具や材料の出し入れなどをしながら制作も手伝うのですが,それでも3時間フル回転でのクラスになります。お子さんをお世話されている間に私が制作してもよいのですが,それでは「人の作った作品を買う」ことになり,自分で作る喜びも楽しみも半減するのでは。集中しないと,せっかくの知識も身につきません。通常30分程度は無料で延長していますが,3時間半を超えれば疲労のために集中力がとぎれ,ミスが多くなります。
アメリカでのペーパークラフト愛好家は年配者(生徒さんの最高齢は確か84歳)が多く,それはもちろん時間的・経済的に余裕があるからですが,退職後にクラフト経験を積んできた人がクラスを受講し始めたとも言えます。講師の私よりも知識が豊富で道具もたくさん持っていると思われる生徒さんも多くいて,初級の初級というレベルの人はいません。
スクラップブッキングはお子さんがもう少し大きくなってからの趣味にするということもできると思いますが,時間的に余裕があるアメリカ滞在中にアメリカ生まれのクラフトを本場で学びたい・アメリカで道具を買って帰りたい・赤ちゃんの今の姿をスクラップブッキングにしたいという気持ちも十分理解できます。実際,アメリカには数百社のクラフトメーカーが存在し,いい商品が手軽に,しかもかなり安価で入手できますから。また,赤ちゃんと2人で家にこもりがちになるのを避けるために何か気分転換になることをやりたいという方や,赤ちゃんをご主人に預けて一人で趣味の時間を楽しみたいという方もいるでしょう。
通常のクラス(赤ちゃん連れで設定していない)において割引はありませんが,次の4点は配慮致します。
1.都合が合えば,平日の午後や土日でもクラスが実施できるということ(=赤ちゃんは自宅でご主人がみて下さる)。
2.ご主人に同伴して頂き,リビングルームや隣室(使っていない客用寝室)で赤ちゃんをみて頂くこともできるということ。
3.2の場合には,通常は取らない休憩時間(無料)を挟むということ。
4.2の場合には,ご希望であれば毛布や絵本など貸すということ。
そして,赤ちゃんがハイハイ(つかまり立ち)しているかにもよりますが,お子さんの責任を持って頂くということで,特別クラスとして提供する予定の「赤ちゃん連れクラス」では内容を工夫して行うことにしています。これは私のクラスに限ったことではなく,「赤ちゃん連れOK」で提供しているよそのクラスにも共通することだと思います。
・内容を減らし,簡単な作品にする(工程数の多い複雑な作品は作らない)。
・道具や材料の種類を制限する(鋭利な道具・細かい材料は使わない)。
・制作よりも知識面(配色の仕方・スタンプインクの違い・アイデアの出し方等)重視のクラスにする。
写真を持って来て作る「スクラップブッキングA」クラスはかなりの思考力・集中力も伴うので難しいのですが,手持ちの写真を後で自宅で貼って完成させるというクラスはできます。これについては,後日「スクラップブッキング・クラス」という記事で改めて書く予定です。
私がこれまで10年以上に渡って参加してきたアメリカのクラフト店のクラス(定員4~15名)においては,赤ちゃん連れOKと宣伝しているものはなく,赤ちゃん連れで参加されている方も見たことがありません。もし連れて来られる方がいたとしたら,それは自己責任でクラスとしては特別な配慮はないのが普通でしょう。子どもの参加については,12歳以上・大人と同じ料金という案内を見たことがあるのみです。
なお,「赤ちゃん連れ大歓迎」としている場合は通常の「教えるクラス」とは異なり,30分以内の内容をゆったり2時間かけて制作するような感じでしょう。先にも書いたように日本ではペーパークラフト愛好家の年齢が低いので,赤ちゃん連れの方をメインにしなければ高価な輸入品を使用する通常のクラス(商品販売や勧誘をしないもの)経営自体が成り立たないと思います。アメリカにおいて市町村などの自治体が(税金で)運営するようなクラスがあるかはわかりません。勧誘を目的とした宗教団体が提供するものもあるでしょうし,販売員を通してカタログの特定メーカーの商品を購入してもらうことを目的にするもの(これはクラスではなくパーティと呼ばれる)もあるようです。
私は,日本で公立の小学校教員をしていましたので,勧誘や商品販売ではなく,「教える」こと自体が目的です。スキルや知識を身につけ自分でできるようになる(知識・技能)・道具や材料も自分で判断していい物を選ぶ(判断力)・想像したり工夫したりして独自の作品を楽しんで作る(思考・創意工夫)・作る喜びを味わう(興味・関心)などをゴールにしています。
ひと口にスクラップブッキングのクラスといっても,講師の背景は様々です。目的が違うのですから,使う商品・作品のテイスト・教え方なども講師によって全く異なってきます。いずれにせよ,自分に合ったものを見つけることが大事です。
ここに書いていることはこちらができるぎりぎりの範囲のことですが,条件に合わない場合は別料金でのご案内になります。楽しんで続けるためには,お互い無理をしない方がいいでしょうね。
以上,どうぞご了承下さい。