これは,この夏にトランシルヴァニア(現ルーマニア/旧ハンガリー)に住む夫の従弟から送られてきたイーラーショシュ。

今は亡き,主人の従弟のお母さんの手によるものです。

 

イーラーショシュというのは,その地方の伝統刺繍の名称。記事(2015年7月30日)にも書きましたが,当時持って帰りなさいと言われて一旦は断ったのがこのテーブルクロスです。昨年の初夏のメールで刺繍の話になったところ,私の刺繍愛を察して「あげるよ」と。その大事な母の形見を,全く血のつながっていない私に送ってくれました…。

 

いつ頃制作されたものかは聞いていないけれど,30~50年ほど前か。サイズは縦36×横33インチ(約90×82.5㎝)。年に2回ほどイースターやクリスマスに集まる家族のディナーのテーブルの上に広げられていたのだといいます。長年にわたって実際に使われていたので食べこぼしの染みがあり縮んだりしているけれど,そういうのがまたいいのです!

 

洗濯すれば布地に糸の染みもできそうだし,きれいに保存しておきたいので,壁掛けに仕立てました。少し布のゆがみがあったものの,何とか裏地(生成りのシャワーカーテン)とポールをつけて完成。

 

暖色系の赤は冬の長いミシガンにふさわしいだけではなく,食欲が増す(危険?)色なのでキッチンにぴったり。窓を開けても絶対に日が当たらないテーブル横にかけました。隣には主人がイラクで買ってきた油絵が飾ってあり,反対にはクリスマス(ハロウィン)等の季節の飾り,主人が描いた絵,中国人の友だちがくれた扇,そして日本の置物を収めたキャビネット…と全く統一感のない家ですが,好きなものを集めるとこうなりますね。

 

伝統中の伝統の赤のチューリップ柄が,極太の赤い糸でみっしりと刺繍されています。驚くのは,裏側も表とほぼ変わらない仕上がりであるということ。フランス刺繍なんかは裏は糸があちこちに渡っていてものすごくごちゃごちゃしているけれど,この刺繍は裏も本当にきれいです。

 

ルーマニアの郵便事情は信用できないということで,ドイツのバイエルン地方に住んでいる孤児ボランティア仲間の友人がドイツから郵送してくれました。


たくさんの人の想いが詰まったこの刺繍は,うちの宝物になりました。